お坊さん歴20年以上の未熟僧と申します。
- 仏壇を処分するときに『魂抜き』をしないとどうなるの?
- 『魂抜き』をしてもらうにはどうすればいいの?
- 仏壇はどうやって処分したらいいんだろう?
- 仏壇の処分にかかる費用はどのくらい?
仏壇を処分するときは、間違った方法で処分をしたくはありませんよね。
しかも、誰かに『魂抜き』が必要だと聞いて「もしも魂抜きをしないとどうなるの?」と気になっていませんか?
先に結論を言うと、どんな方法で仏壇を処分するか、そして『魂抜き』をするかどうかはあなたの自由です。
しかし、お坊さんの僕としては、仏壇を処分するならちゃんと『魂抜き』をすることが望ましいと考えています。
この記事では、
- 『魂抜き』の意味と必要性
- 『魂抜き』をしてもらう方法と準備する物
- 仏壇の処分方法と費用
について書いています。
最後まで読んでいただき、あなたが納得できるように仏壇を処分してください。
『魂抜き』とは何か
『魂抜き』の説明をするためには、まず『魂入れ』の説明からしなくてはいけません。
仏壇というのは、購入してそのまますぐに使うものではなく、まず、お坊さんに依頼して『魂入れ』という供養をしてもらいます。
魂入れをするのは、仏壇の中に置く『仏像』や『仏様の絵が描かれた掛軸』などの【ご本尊様】であり、仏壇そのものに魂入れをするわけではありません。
ご本尊様に『魂入れ』をすることで、仏像や掛軸に《仏様としてのチカラ》が宿り、それで仏壇と家全体を守ってくださるようになります。
ですから、
- 仏壇だけを購入しても、ご本尊様がなければ意味がない。
- ご本尊様を購入していても、それに魂入れをしなければ意味がない。
ということなんですよね。
仏壇については他にも伝えたいことがたくさんありますが、ここで全部は書けないので、詳しくは『仏壇の意味と役割とは?仏壇の準備からお参り方法まで丁寧に解説』の記事を読んでみてください。
それでは、『魂抜き』について説明します。
基本的に、仏壇を処分するときは『魂抜き』という供養をします。
『魂抜き』とは、仏壇の中のご本尊様を《仏様としてのチカラが無い状態》に戻すための供養のことです。
魂抜きの供養をすることで、それまで仏壇と家を守ってくれていたご本尊様に対して感謝と御礼の気持ちを伝えます。
ちなみに、『魂抜き』というのは仏壇のご本尊様だけではなく、位牌や墓石を処分するときにも行いますので、要するに【仏様が宿るもの】を処分するときには『魂抜き』をすると覚えておいてください。
仏壇を処分するときに『魂抜き』をしないとどうなるの?
仏壇の処分をするときに「仏壇の魂抜きをしないとどうなるんだろう?」と疑問に思う人は多いです。
まず、仏壇の魂抜きをするかどうかはあなたの自由です。
仏壇については【宗教】のことなので、それをどう扱うかは個人の自由ですから、魂抜きが不要だと思うなら無理にしなくてもかまいません。
また、仏壇の魂抜きをしないことは法的にも問題はないのでご安心ください。
仏壇を処分するなら、ちゃんと『魂抜き』をした方がいいです。
べつに、魂抜きをしなかったからといって《亡くなった家族が成仏できない》とか《バチが当たる》というわけではありません。
しかし、仏壇を処分するときに『魂抜き』をしないというのは、お世話になったご本尊様に何の挨拶もせず一方的に絶縁することなんですよね。
それは、ご本尊様に対して非常に失礼なことであり、ご先祖様たちの顔に泥を塗る行為でもあります。
仏壇を購入したときには『魂入れ』をしているはずなので、仏壇を処分するときにも『魂抜き』をするべきです。
ちゃんと『魂抜き』を行い、ご本尊様にご挨拶をし、ずっと仏壇と家を守ってくれたことへの感謝と御礼の気持ちを伝えましょう。
ちなみに、仏壇の中に【ご本尊様】がない場合は『魂抜き』をする必要はないですよ。
仏壇の中に【ご本尊様】がない時点で、その仏壇はずっと《ただの木の箱》の状態なので、それに対して『魂抜き』をする必要がないんです。
今まで仏壇の中に【ご本尊様】がなかったのなら、次に仏壇を購入するときにはぜひ【ご本尊様】も一緒に購入してくださいね。
『魂抜き』をしてもらうにはどうすればいいの?
次に、『魂抜き』をしてもらう方法について説明します。
『魂抜き』をしてもらう方法には、
- 菩提寺に依頼する
- 仏具店に依頼する
という2つがあります。
菩提寺に依頼する
もしも、あなたの家のお墓が『お寺の墓地』にある場合、そのお寺は【菩提寺(ぼだいじ)】といって、あなたの家のあらゆる仏事を担当するお寺となります。
ですから、仏壇の『魂抜き』は必ず菩提寺に依頼をしてください。
たとえどんなに小さな仏事でも必ず菩提寺に依頼をしてください、他のお寺に依頼をしてしまうのは厳禁です。
そんなことをしたら、場合によってはお寺から「あなたの家のお墓を撤去してください。」と言われかねません。
じつは、【お寺にお墓を持つ】ということは、お寺との深い付き合いを約束している状態なので、仏事のときには必ず依頼をしなくてはならず、これが面倒なところでもあります。
その代わりに、菩提寺としては檀家から依頼された仏事はどんなことでも引き受ける責任があるんです。
『魂抜き』は、できるだけ仏壇を処分する日よりも前に行うようにしてください。
なぜなら、『業者が仏壇を引き取りに来るタイミング』と『魂抜き』がバッティングすると何かとバタつくからです。
僕は何度か経験していますが、とにかく慌ただしく、みんなの「早く終わらせてくれないかな?」的なプレッシャーを感じるので魂抜きに集中できません。
魂抜きは、ずっと仏壇と家を守ってくれていたご本尊様に感謝をし、御礼の気持ちを伝えるための供養ですから、慌ただしい日にせず、前もって落ち着いた中で行いましょう。
また、お坊さんへ魂抜きを依頼するときには、遅くても1ヵ月前までには連絡をした方がいいですよ。
土日祝日は法事をする人が多く、お坊さんの予定もいっぱい詰まっていますので、希望する日に依頼ができない可能性があります。
ただし、魂抜きをしてもらう日は、
- お盆
- 春秋のお彼岸
- 年末年始
といった【お坊さんが忙しい時期】を避けてください。
そのような時期は、どんなに早く連絡をしたところで、お坊さんは多忙すぎるため予約がとれません。
ですから、お坊さんの手配も業者さんへの手配も、時間に十分な余裕をもって、適切な日程で予約をしておきましょう。
【関連記事】:お寺の檀家とは何か。檀家になるとデメリットだらけでメリットは少ない!
仏具店に依頼する
あなたの家のお墓が『お寺以外の場所』にある場合は、無理してどこかのお坊さんへ依頼する必要はありません。
例えば、お墓が『霊園』にあるなど、菩提寺がない場合は仏具店に依頼するだけで大丈夫です。
仏具店というのは、基本的にあらゆる仏具の処分を引き受けてくれます。
そして、仏具店は『魂抜き』をしてくれる【お寺】と提携しているので、ちゃんと供養をした後で仏壇が処分されるため安心です。
ですから、菩提寺がなければ仏具店に任せてしまいましょう。
魂抜きの事前準備
魂抜きをするときには準備しておくものがありますので、忘れずチェックしておきましょう。
お供物(五供)を用意する
魂抜きでは仏壇に以下の5つを供えます。
- 生花
- 灯明(=ロウソク)
- お線香
- お供物
- お水
この5つは『五供(ごく)』とよばれ、仏教では基本となる5つの供物です。
ちなみに、この『五供』は仏壇だけではなく【お墓参り】のときにも供えるもので、別記事の『お墓参りの時にお供えする『5つの供物=五供(ごく)』の意味。』で詳しく解説していますので読んでみてください。
生花
魂抜きで用意するものの1つめは『生花』です。
お花を供えることには、
- 仏様がいる世界に似せて仏壇を色鮮やかに飾る
- 生花が仏様の着物になる
- 私たちの修行の1つである『忍辱』を象徴する
といった意味があります。
生花を供えることは、ご先祖様や亡きご家族のためだけではなく、じつは私たち自身の『修行』にもなっています。
だから、お花を供えるというのは非常に大事です。
とはいえ、仏壇のお花を毎日取り換えるのは大変なので、普段は【造花】でもいいと思いますよ。
しかし、仏壇を処分するときくらいはちゃんと生花を供えましょう。
灯明(=ロウソク)
魂抜きで用意するものの2つめは『灯明(=ろうそく)』です。
灯明をつけることには、
- お釈迦(しゃか)様の教えの象徴
- 仏様のぬくもり
- 私たちの煩悩を焼き払ってくれる
といった意味があり、ただ【明かり】をとっているわけではありません。
灯明について詳しく知りたい方は『多くの人が知らない【仏壇のロウソク(灯明)に火をつける意味】』の記事を読んでみてください。
もしかすると、普段は『電気ロウソク』を使っている人もいるかもしれませんね。
電気ロウソクなら火災の心配もなく、煙が苦手な人にとっても便利です。
しかし、日頃はそれでもいいですが、『魂抜き』のときはちゃんと本物のロウソクを使って、誠意をもってご本尊様に御礼の気持ちを伝えましょう。
【関連記事】:【仏様に失礼?】仏壇に供えるお線香は電気線香でもいいの?
線香
魂抜きで用意するものの3つめは『線香』です。
線香などの【お香】を供えることには、
- お香から出る『香り』が仏様の食べ物になる
- その場全体を清めてくれる
- 私たちの修行の1つである『精進』を象徴する
といった意味があります。
この中でも1番重要なのは、お香から出る『香り』が仏様の食べ物になるというところで、お香を供えるのは『仏様に食事をしてもらう』ことを意味します。
仏壇を処分するにあたり、そこで最後の食事を召し上がってもらうわけですから、『魂抜き』のときはできるだけ高級な線香を供えてください。
【関連記事】:お線香のあげ方やマナーを場面別に詳しく紹介。お焼香の作法も合わせて紹介
供物
魂抜きで用意するものの4つめは『供物』です。
『供物』といえば、惣菜やお菓子類などの【食べ物】が多いですが、これらは仏様にとっては【副菜】や【おやつ】みたいなものです。
主となるのはあくまで『線香から出る香り』ですから、それ以外の食べ物はすべて副です。
豪華で栄養バランスの良い食事には副菜が欠かせないように、仏様の最後の食事にもできるだけたくさんの『お供物』を供えてあげてください。
お水
『魂抜き』のときに用意するモノの5つめは『お水』です。
お水を供えるのには、
- 仏様の喉を潤していただく
- すべての【生き物】に対して『命の源』を施す
という意味があります。
お水は、できるだけ『キレイな水』を供えるように心がけてください。
普段はかまいませんが、『魂抜き』のときくらいは水道水をヤメて、なるべく【店舗で売っている水】か、または【ウォーターサーバーの水】を供えるのがいいです。
【関連記事】:仏壇に【水】を供える意味をお坊さんが詳しく解説します。
お布施を用意する
『魂抜き』のときに準備するのは五供だけではありません。
お坊さんの僕が言うのもアレですが、ちゃんと『お布施』を用意しておいてください。
『魂抜き』はお坊さんにやってもらうので、必ず【お布施】を納めなくちゃいけません。
『魂抜き』のお布施の相場は、
1万円〜5万円
といったところです。
宗派や地域によってお布施の金額は全然違いますので、そこはご了承ください。
しかし、これ以上の金額を要求された場合、ハッキリ言ってそのお寺は【ボッタクリ価格】なので、今後のお付き合いを見直すことをおすすめします。
ただし、お寺によっては『魂抜き』と合わせて『仏壇の処分』も引き受けてくれるところがありますので、それなら話は別です。
お布施と一緒に仏壇の処分費用まで考えると、
3万円~10万円
くらいはかかります。
ちなみに、お布施を包む『のし袋』は仏用のものを購入して、表書きには【閉眼供養料】または【御布施】のどちらかを書けば大丈夫です。
また、のし袋へ入れる現金は、のし袋の正面側から見て、お札の顔が見える面を、顔が上にくるように入れるといいでしょう。
お葬式での『御香典』ではないので、わざわざ紙幣を裏面にして顔を下に向ける必要はありません。
仏壇の中身はすべて出して確認しておく
ここで、用意というか注意点を1つお伝えします。
仏壇にはいくつかの『引出し』がありますが、仏壇を処分するにあたって、必ず仏壇の中身をすべて出して確認しておくようにしてください。
仏壇の『引出し』には、お線香やロウソクなどが入っていることが多いでしょう。
しかし、それ以外にも、
- 墓地の使用許可証
- お寺や霊園から渡された大事な書類
- 仏壇やお墓の購入時の明細書や領収書
- 「何でコレがここに!?」みたいな意外な書類
などが入っていたりします。
墓地の使用許可証なんかは、お墓を使うための『権利書』みたいなもんですから無くしちゃいけません。
大事な書類まで処分してしまわないように、事前にしっかりと確認をしておいてください。
当日の服装
自宅で魂抜きをする当日の服装は、べつに【普段着】でも問題はありません。
しかし、魂抜きは仏事なので、一応は『少し暗めの色』の服装である方が無難です。
また、お寺まで行って魂抜きをする場合は、ちゃんと喪服を着用した方がいいでしょう。
そして、魂抜きの最中には線香を供えることもありますので、ちゃんと数珠を用意しておいてください。
数珠はいろんな仏事で使用しますので、もしも数珠を持っていなければ今のうちに購入しておきましょう。
【参考記事】:数珠を買うにはどこへ行けばいいのか。数珠の購入場所を詳しく紹介
仏壇の処分方法と費用
『魂抜き』が終わったら、あとは仏壇を処分して大丈夫です。
ここからは仏壇の処分方法と費用についてお伝えします。
仏具店に処分を依頼する
仏壇の処分は『仏具店』に依頼すればやってもらえます。
仏具店はいろんな仏具の処分をしてくれるので、あなたの家の仏壇も最後まで責任を持ってちゃんと処分してくれます。
しかも、お客様から預かった仏壇は、信頼のある専門業者へ引き渡されて、しっかりと最後の処分まで行われますので安心ですよ。
ただし、しっかりと最後まで処分されるということは、処分費用もそれなりにかかります。
仏壇の大きさや素材によって費用が大きく変わってきますが、だいたい、
1万5千円~8万円(税込)
くらいです。
しかし、長い間お世話になった仏壇ですから、少し費用が高めになってしまっても、ちゃんと丁寧に処分をしてもらいましょう。
自分で処分する
仏壇の処分は自分でやってもかまいません。
自分で処分するというのは、
- 自分である程度まで解体して粗大ゴミに出す
- 市町村のゴミ処理場へ自分で持って行く
ということです。
仏壇は自分で解体しても問題はありませんが、外で解体する場合は、ご近所さんに見られないように、そして静かにやってください。
そして、粗大ゴミに出すときも、各自治体で決められたルールに従うことはもちろん、パッと見で仏壇だと分からないようにするのがマナーです。
あとは、市区町村のゴミ処理場へ自分で持って行くという方法もありますので、自分で処分するのならコチラの方がおすすめです。
ただ、残念ながら無料というわけにはいかず、あなたの住む市町村にあるごみ処理場へ持って行ったとしても、
5百円~2千円
くらいはかかります。
とはいえ、大きめの仏壇の場合はけっこうな重量があり、車の中にちゃんと乗るかどうかも分からないため、意外と苦戦するかもしれません。
一方で、コンパクトサイズの仏壇であれば持ち運びがラクですから問題はありません。
自分で処分するのはそれなりに面倒ではありますが、「自分の家の仏壇だし、最後まで自分自身で処分したい。」という考えなら、それは素晴らしいことなので、ぜひご自身で処分をしてください。
不用品回収業者に処分を依頼する
仏壇を自分で処分したくても、家の近くに仏具店はないし、自分で処分するのも面倒ですよね。
そのような人は、不用品回収業者に処分を依頼するという方法もあります。
不用品回収業者であれば、いろんな物を回収&処分をしているので、仏壇も取り扱っています。
しかも、不用品回収業者の方が仏具店より処分費用が安くなることもあるので、仏壇の処分費用をできるだけ抑えたい人は、不用品回収業者を検討してみてください。
不用品回収業者に処分を依頼する場合、費用の相場は、
1万円~4万円
といったところです。
ほとんどの不用品回収業者は、電話やオンラインで簡単に依頼ができますから、まずは1度相談してみてはいかかでしょうか?
※関東圏にお住まいの方は利用してみてください。
⇒『ゴミ回収バスターズ』公式サイトを見る浄土真宗は『魂抜き』をしない
ここまで仏壇の魂抜きについて解説してきましたが、浄土真宗の場合は『魂抜き』をしないのでご注意ください。
浄土真宗では【人が亡くなると、すぐに阿弥陀様が極楽浄土へ導いて守ってくださる】という考え方により、仏壇に魂が宿ることはないとされています。
そのため、仏壇の魂抜きはしませんが、代わりに『遷座(せんざ)法要』を行います。
遷座法要というのは、阿弥陀様に対して《ご移動いただく際のご挨拶》と《日頃の感謝を伝える》という意味があり、仏壇の移動時だけでなく、仏壇を処分するときにも行われる法要です。
宗派によって仏壇の処分に対する考え方は違いますが、お坊さんに依頼して供養をするという点では同じです。
まとめ:仏壇は『魂抜き』をしてもらってから処分しよう
仏壇を処分する方法、そして『魂抜き』をするかどうかはあなたの自由です。
しかし、できるだけ『魂抜き』をしてから仏壇を処分してください。
『魂抜き』にかかるお布施の相場は、
1万円~5万円
くらいです。
『魂抜き』が終われば、あとは仏壇の処分をしてもOKです。
もしも、お寺とのお付き合いが無い場合は、仏具店に依頼をすれば仏壇の魂抜きや処分などをすべて手配してやってくれます。
その際の費用は、仏壇の大きさでかなり違いますが、
1万5千円~8万円(税込)
くらいです。
また、仏壇の処分は自分でもできますが、意外と大変なので仏具店か不用品回収業者へ依頼することをおすすめします。
仏壇(ご本尊様)はあなたの家をずっと守ってくれていたのですから、最後はちゃんと感謝と御礼の気持ちを込めて丁寧に処分をしましょう。
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