お坊さん歴20年以上の未熟僧(みじゅくそう)と申します。
- 遺影って、仏壇の中に飾ってもいいの?
- 遺影はどうやって飾ればいいんだろう?
- そもそも、遺影は何のためのもの?
家族が亡くなると、その後は『遺影』を飾ります。
遺影があると、いつも故人がそこにいてくれるような気持ちになりますよね。
しかし、「遺影をどこにどうやって飾ればいいのか分からない。」という人は多いです。
僕も信者さんからよく質問されますが、じつは、遺影には【飾る場所】や【飾り方】に決まりがないのです。
ただ、お坊さんの僕としては、遺影を飾るなら『仏壇の近く』あるいは『家族が集まる場所』がいいと思いますよ。
この記事は、
- 遺影を飾る場所とその理由
- 遺影の飾り方
- 遺影とはどういうものか
について書いています。
遺影に対する考え方も含めて遺影の取扱い方法が分かりますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
遺影を飾るのは『仏壇の中』でも『他の場所』でも、どちらでもいい

ご存じのように、遺影とは【亡くなった人の写真】のことです。
そのせいでしょうか、「遺影は【仏壇の中】に飾ってもいいんですか?」という質問をよく受けます。
結論から言いますと、遺影を飾る場所に決まりはないので、仏壇の中に飾っても飾らなくてもどちらでもかまいません。
どちらでもかまわないのですが、『仏壇の中には飾らない』という人の方が多いです。
なぜなら、仏壇というのは『お寺の本堂の縮小版』だからです。
多くのお寺では、基本的には本堂の中に遺影を飾っていません。
もちろん、その宗派にとって重要なお坊さんの【絵】や歴代住職の写真は飾ってありますが、それ以外の個人的な写真はありません。
そもそも、本堂というのは多くの人が仏道修行するための《道場》ですから、そこへ個人的な写真を置くようなことはしないのです。
だから、 本堂に遺影を飾らないのと同じように『お寺の本堂の縮小版』 である仏壇にも遺影は飾らないという理屈になるのです。
とはいえ、「できれば仏壇の中に遺影を飾りたい。」という人だっていることでしょう。
遺影を飾る場所に決まりはないので仏壇の中に飾っても大丈夫ですが、その場合は遺影を【仏壇の一番下の段】に飾るようにしましょう。
なぜなら、どんなに大切な人が映っていても、遺影というのは、あくまで【ただの写真】であって仏具ではないからです。
ですから、仏具ではないものを【ご本尊様がいる最上段】や【お供え物を置くための中段】に飾るのは好ましくないのです。
ですから、仏壇の中に遺影を飾るなら、なるべく一番下の段にしてください。
【関連記事】⇒仏壇の意味と役割とは?仏壇の準備からお参り方法まで丁寧に解説
遺影の飾り方

遺影は基本的に仏壇の中には飾りません。
では、「仏壇の中に遺影を飾らないなら、どこにどうやって飾ればいいの?」という疑問が出ることでしょう。
遺影を飾る場所に決まりはありませんが、ある程度の『基準』はあるので参考にしてみてください。
遺影は仏壇のそばに飾る
遺影はできるだけ仏壇のそばに飾るといいですよ。
遺影はあくまで【ただの写真】なので基本的には仏壇の中に飾りませんが、そうはいっても【亡くなった人の写真】ですから、なるべく『仏様』に関する場所に飾りたいですよね。
そうすると、やはり《仏壇のそば》が最適です。
仏壇のそばに飾るというのは、例えば、
- 仏壇のすぐそばの棚に飾る
- 仏壇の手前にテーブルなどを置いて、そこに飾る
- 仏壇の近くの長押(なげし)の上に飾る
といったカンジです。
ちなみに、遺影は【仏間】に飾ることが多いです。
仏間というのは、その名のとおり《仏壇を置く部屋》のことです。
仏間がある家なら、仏壇は必ず仏間に置きますので、その結果、遺影も仏間に飾ることになります。
家族が集まる場所に飾る
読者さんの中には、「ウチには仏間もないし、仏壇の近くにも遺影を飾る場所なんかないよ。」と人もいるでしょう。
そのような人は、家族が集まる場所に遺影を飾るといいです。
遺影というのは、いつまでも故人のことを忘れず、生前の恩に感謝して、ずっと故人を近くに感じるために飾りますので、遺影はできるだけみんなの目に入るような場所に飾るのがいいんです。
それで、多くの家では毎日手を合わせる仏壇の近くに遺影を飾っているんですよね。
でも、もしも仏壇の近くがダメなら他の場所に飾るしかありません。
他の場所で、さらにいつもみんなの目に入る場所となれば、リビングなどの日頃から【家族が集まる場所】へ飾るのがおすすめです。
家の雰囲気に合わせて遺影を飾る
今までの遺影といえば、額縁の色が【黒】や【茶色】といったように、言っちゃ悪いですが『古臭い』ものばかりです。
しかし、最近では家の雰囲気に合わせて遺影を飾るという傾向にあります。
近年の住宅は洋室がメインとなっているので、せっかくの洋室に古臭い遺影なんて飾りたくないですよね?
ですから、いろんな色やデザインの【フォトフレーム】に故人の写真を入れて飾っている家が多く、オシャレな家族写真と並んで自然に遺影が飾られているというカンジです。
遺影はあくまで【ただの写真】ですから、家の雰囲気に合わせて飾ればいいのです。
遺影を古臭い額縁なんかに入れないで、ちゃんと家の雰囲気に合ったフォトフレームに入れてあげてください。
飾る遺影の大きさは【L版サイズ】がおすすめ
遺影といえば、『四つ切サイズ』と呼ばれる【254mm×305mm】の大きさが一般的です。
でも、この一般的なサイズって・・・ちょっと大きすぎませんか?
お坊さんの僕としてはL版サイズくらいの小さな遺影を飾ることをおすすめします。
『L版サイズ』というのは【89mm×127mm】の大きさをいいます。
このサイズであれば仏壇の中にも収まりますし、他の場所に飾ってもジャマになりません。
それに、法事のときなどに持ち運んだり、掃除のときに移動させるにもラクなんです。
遺影は大きいものである必要はなく、家族みんなが見ることができれば十分です。
複数人分の遺影がある場合は、向かって【右】を上座にして飾る
あなたの家には複数人分の遺影がありますか?
遺影を飾るときには一応の【飾る順番】があります。
複数人分の遺影を飾る場合は、向かって【右】を上座にして飾るようにしましょう。
仏事では、
- 私たちから見て『右』が上座
- 私たちから見て『左』が下座
と考えます。
上座や下座があるということは、大変失礼ながら仏様に優先順位をつけているのです。
仏様の優先順位のつけ方は、生前の地位や性別に関係なく先に亡くなった人から上位になると覚えてください。
夫婦の場合であれば、もしも妻が先に亡くなったら、妻が上位です。
親子の場合、悲しいことに子どもが先に亡くなれば、たとえそれが赤ちゃんでも、子どもの方が上位です。
このように、複数の遺影がある場合は、先に亡くなった人から順番に、向かって右から左へと飾っていくと覚えておきましょう。
とはいえ、これは遺影を飾るときの単なる基準というだけなので、家族のみんなで納得のいくように飾ってかまいません。
遺影を飾る【向き】は気にしなくていい
遺影を飾るときに【向き】を気にする人はとても多いです。
仏事は決まりごとが多いので、【向き】にも決まりがあるのではないかと心配になりますよね?
しかし、遺影の【向き】は気にしなくていいです。
遺影は単なる写真ですから、東西南北のどの向きに飾ってもかまいません。
遺影は家族みんなが見やすい向きにして飾りましょう。
遺影を飾るときのタブー
多くの人にとって【仏様に関すること】は分かりにくいものですから、読者さんの中には『遺影を飾るときのタブー』を知りたい人もおられることでしょう。
しかしながら、じつは遺影を飾るときのタブーというのはないのです。
タブーというほどではないですが、注意点が1つあります。
それは、遺影を仏壇の上には置かないということです。
仏壇の天板は平面なので、ついそこへ遺影を置きたくなりますが、天板のすぐ下にはご本尊様がいらっしゃることをお忘れなく。
何度も言いますが、遺影はあくまで【ただの写真】です。
ただの写真をご本尊様の頭上に置くのは不適切と言えますので、なるべく仏壇の上には遺影を置かないようにしてください。
というか、遺影だけでなく、仏壇の天板には何も置かないことが望ましいです。
遺影はいつまで飾るべきか
遺影を飾ったら、最後に気になるのが【遺影をいつまで飾ればいいのか】ということです。
遺影を飾る期間については何も決まりがありませんので、完全に『自由』です。
例えば「◯◯回忌を迎えるまで飾る」みたいに年回忌で区切る人もいますし、一方で特に区切りをつけない人もいます。
ちなみに、僕は『写真が色あせてくるまで』を基準にしています。
遺影は年数が経過するとだんだんと色あせてきますので、色が少し白みがかってきたら、他の写真に交換するか、あるいは遺影を飾ることをヤメるタイミングだと判断します。
色あせた写真の処分方法については、一般ゴミとして処分してかまいませんが、心理的にそれも心苦しいことでしょう。
そのような場合は、写真を封筒などに入れてからお寺で『お焚き上げ』をしてもらってください。
ただし、そのときには必ず1,000円~3,000円程度の【お焚き上げ料】を納めるようにしてください。
遺影は他の顔写真に替えてもいい

多くの人は、お葬式のときに使った遺影をその後もずっと飾り続けています。
しかし、べつに遺影は他の顔写真に替えてもいいのです。
お葬式のときはとにかく慌ただしくて、少ない時間でたくさんのことを一気に決めなきゃいけないので、遺影をじっくりと選ぶ時間がないことも多いんですよね。
それで、仕方がないのでとりあえず無難な写真を遺影にしてしまうケースがあるのです。
すると、後になって「この写真、やっぱり何だかしっくりこないなぁ・・・。」なんてことになります。
遺影というのは『生前の故人をよく表す写真』がベストなので、後からより良い写真が見つかったら、どうぞ遠慮なく交換してください。
遺影は『絶対に必要なもの』ではない

これまでは、遺影を飾る場所や方法について書いてきました。
しかし、今さらですが、遺影は『絶対に必要なもの』ではないんですよね。
くどいようですが、遺影なんて【ただの写真】なんですから、それを飾るかどうかは家族が決めることです。
しかも、遺影には仏教的な意味が無いので、故人の供養にも関連性は一切ないのです。
なので、もしも遺影を飾りたくないと思うのなら、無理に飾らなくてもいいんですよ。
それに、最近では写真をわざわざ現像することも少ないですよね?
あなたのスマホに保存されているたくさんの写真、それをすべて現像なんてしませんよね?
いろんな思い出や人の写真を『画像データ』として残して、思い出したタイミングでたまに見るだけ。
ですから、遺影を飾りたくないなら、パソコンやスマホなどに故人の写真を『画像データ』として保存しておくだけでもよいと思います。
それで、ふと故人のことを思い出したときに画像データを見てあげてください。
【関連記事】:遺影はいらない。遺影を飾りたくないなら処分してもOK
まとめ:遺影を飾るなら【仏壇の近く】か【家族が集まると場所】がいい
遺影というのは、位牌などの仏具とは違って、あくまで【ただの写真】にすぎません。
ですから、遺影の取扱い方に関しては、《仏壇の上に飾らない》ということだけ注意すれば、あとはどのように飾ってもよいのです。
ただ、遺影は仏具ではありませんから、仏壇の中でなく【仏壇の近く】か【家族が集まる場所】に飾るといいでしょう。
遺影といえば【黒色のフレームの額に入れる】みたいなイメージがあるかもしれませんが、そんなことはしなくてもいいので、家の雰囲気に合わせて明るくカジュアルに飾ってください。
また、遺影というのは写真を取り替えてもまったく問題ありませんから、他にもっと良い写真が見つかったらそれを飾ってあげてください。
遺影はただの写真なので、基本的にはどのように取り扱おうとあなたの自由です。
だから、まずは、愛する家族の遺影があなたにとってどういうモノなのかを考えてみてください。
それから遺影をどこへ飾るのか、あるいは飾らない、ということを決めましょう。