- 何のために仏壇にご飯を供えるんだろう?
- 今更だけど、ご飯の供え方に決まりはあるのかな?
- ご飯は、いつ供えて、どのタイミングで下げればいいんだろう?
- 仏壇に毎日ご飯を供えるのは少し面倒くさいなぁ・・・。
じつは、仏様はご飯を食べているわけではないんです。
仏壇に毎日手を合わせている人は多いです。
仏壇に手を合わせるときには、お線香などと一緒に『ご飯』も供えますよね?
だとすれば、仏壇に毎日『ご飯』を供えるのって大変じゃないですか?
仏様用の器にご飯をよそって供え、しばらくしたらご飯を下げて、それから器を洗わなきゃいけませんので、それを毎日やっていたら大きな負担になります。
じつは、仏様はご飯を食べるわけではないので、無理して毎日お供えする必要はないのです。
毎日お供えすべきは、ご飯よりも『お線香』の方なので、ご飯に関しては【お供えできるとき】に供えれば十分です。
この記事では、お坊さん歴20年以上の僕が、
- 仏壇に供える『ご飯』の意味
- 仏壇に供える『ご飯』の供え方
について書いています。
この記事を読むと、普段やっていることの意味がわかって、そして今までより気楽にご飯をお供えできるようになりますので、ぜひチェックしてみてください。
仏様に供えるご飯の名前は何ていうの?

仏様に供える『ご飯』には仏式の呼び方があります。
仏様に供える『ご飯』のことを、
- 飲食(おんじき)
- 仏飯(ぶっぱん)
- 仏供(ぶっく)
などと呼んでいます。
宗派や地域によってこのように呼び方の違いがあるんです。
まぁ、べつに『仏様のご飯』と言った方が分かりやすいんですけどね。
だから、普段の生活で「ねぇ、もう仏飯を下げといてくれない?」なんてわざわざ正式名称を言わなくてもいいですよ。
とりあえず、ちゃんとした呼び方が一応はあるということを知ってもらえればOKです。
仏壇にご飯をお供えする意味

あなたが毎日のように仏壇へ供えている『ご飯』。
その『ご飯』にはどんな意味があるかをご存じでしょうか?
もしかするとあなたが想像しているのとは少し違うかもしれませんよ。
仏様は『ご飯』を食べていない
あなたはきっと、ご飯を《仏様に食べてもらうため》に供えていますよね?
でも、じつは、仏様はご飯を食べていないのです。
残念ながら、いくらご飯を供えても仏様はそれを召し上がっておられません。
じゃあ、仏様は何を食べているのでしょう?
仏様が食べているのは、お線香に火をつけたときに出る『香り』なんです。
仏教ではこれを【香食(こうじき)】といいます。
ですから、仏壇へ供えるモノとして優先すべきは、ご飯よりもダンゼン【お線香】なんですよね。
【関連記事】:お香(こう)を供える意味とは?焼香の作法や線香の供え方も紹介します
仏壇にご飯を供える意味
仏様は、『ご飯』ではなくお線香から出る『香り』を食べています。
仏壇に『ご飯』を供えるのは、ご本尊様やご先祖様に【感謝の気持ち】を伝えるためなんです。
お米は私たち日本人の『主食』であり、なくてはならない貴重な食べ物です。
だから、「いつもお守りいただいて本当にありがとうございます。おかげさまで今日もこうやってお米を食べることができます。」と、貴重な食べ物を供えることによって【仏様への感謝の気持ち】を表現しているわけです。
また、お花などと同様に、炊きたてのご飯のよい匂いをお届けするという意味もあります。
つまり、仏様にご飯を食べてもらうというよりも、私たちが豊かに暮らせている様子をお見せするというカンジですね。
仏壇へのご飯の供え方

仏様へ供える『ご飯』については、【供え方】というものが一応はあります。
本当は【供え方】なんてあまり気にしなくてもいいのですが、僕がいる寺の信者さんから【供え方】について質問されることもあるので、この機会にあなたにもお伝えします。
とりあえず先に言っておきますが、仏壇に供える『ご飯』については基本的にあなたの自由です。
ご飯は毎日供えた方がいい?
まずは、よく受ける質問の1つめは、
です。
これに対する返答は、『毎日じゃなくてもいい、できるときに供えれば十分。』です。
私たちは毎日ご飯を食べているので、多くの人がその感覚で「仏様にも毎日ちゃんと供えなきゃいけない。」って思うんですよね。
でも、先ほども言ったように、仏様はべつに『ご飯』そのものを食べているわけではないので、仏様に食事をしてもらうのであれば、供えるのは『ご飯』ではなく【お線香】です。
ご飯を供えるのは、あくまで【感謝の気持ち】を伝える手段の1つですから【感謝の気持ち】を伝えるには合掌など他の方法でもいいわけです。
もちろん、それも毎日である必要はなくて、感謝の気持ちを伝えたいときに心を込めて伝えればいいのです。
ということで、毎日のようにご飯を供える必要はありませんので、もっと気楽に『ご飯』を供えて大丈夫ですよ。
ご飯をお供えするタイミングは?
次に、よく受ける質問の2つめは、
です。
これに対する返答は、『いつでもいい。』です。
仏様に【感謝の気持ち】を伝えるためにタイミングを考える必要なんてありませんから、いつでも【感謝の気持ち】を伝えればいいんですよ。
つまり、あなたが「あっ、仏様に『ご飯』をお供えしよう。」と思ったときがベストタイミングなのです。
「毎日お供えしなきゃ。」なんていう義務感でやんなくてもいいんので、もっと気楽に『ご飯』を供えましょう。
ご飯は、生前に故人が使っていた茶碗に盛ればいいの?
次に、よく受ける質問の3つめは、
です。
これに対する返答は、『器は何でもいいが、専用の仏飯器を使う方がラク』となります。
故人に供えるご飯であれば、せっかくだから【故人が生前に使用していた茶碗】で供えてあげたいですよね?
ご飯を供える器はべつに何でもかまいませんから、あなたの自由に器を選んでください。
たまに「故人はもう仏の世界に行かれたのだから、生前に使用していた茶碗で供えるのはよくない。」と言う人もいますが、そのような意見は無視してOKです。
感謝の気持ちを伝えるために『ご飯を供える』ことに意味があるので、それを盛る『器』なんてべつに何だっていいんですよ。
だから、故人に喜んでもらいたくて【生前に故人が使っていた茶碗】で供えるのであれば、ぜひその気持ちを大事にしてください。
ただ、一応は【仏様にご飯を供えるための専用の器(仏飯器)】というのもあります。
仏飯器のサイズは小さいので、少しご飯を盛るだけでいいんです。
また、故人が使っていた茶碗だと、ご飯を仏壇に供えるためにはそれなりのスペースが必要ですが、仏飯器ならあまりスペースを必要とせずにご飯を供えられます。
また、ご飯を少量しか盛らないので、後で器を洗うときもラクなんです。
ですから、ご飯を供える器は何でもかまいませんので、故人の使っていた茶碗でも、取り扱いがラクな仏飯器でも、どちらでもあなたが自由に選んでください。
ご飯の盛り方
次に、よく受ける質問の4つめは、
です。
これに対する返答は、『器にちゃんと乗っかる量を、丸っぽい形に盛ればいい。』です。
ご飯の盛り方は、だいたい、
- 円柱形
- 半球形
- 宝珠(ほうじゅ)形
の3パターンです。
『円柱形』とは、【丸い柱】を横に切った形ですので、断面の形は丸くなっています。
『半球形』とは、ボールを半分に切った形です。
『宝珠形』とは、半球形の先を少し尖らせたような形です。
これらの形の共通点は『丸っぽい形』ということ。
『丸っぽい形』にするのは、ご飯を、蓮(はす)の【つぼみ】や【実】に似せているからです。
蓮は、仏様の教えや仏様そのものを象徴する花なのです。
ご飯は何となく丸っぽく盛っていればOKなので、少しくらい形が崩れていても仏様は何も文句は言いませんから大丈夫ですよ。
ということで、あまり形なんて気にせず気楽に『ご飯』を供えてください。
お箸を立てた方がいいの?
次に、よく受ける質問の5つめは、
です。
これに対する返答は、『仏壇に供える【ご飯】にお箸を立てなくていい』となります。
人が亡くなると、茶碗にご飯を山盛りにして、その上からお箸を立てて供えます。
これを『枕飯(まくらめし)』といいます。
これの延長線上で、仏壇に供える『ご飯』にもお箸を立てるべきかと疑問に思う人もいます。
でも、仏飯器にはそんなにたくさんのご飯を盛ることができないので、お箸を立てられません。
そして、そもそも仏様は『ご飯』を食べていませんから、お箸は不要です。
供えたご飯を下げるタイミングは?
続いて、よく受ける質問の6つめは、
です。
これに対する返答は、『いつでもいい。』です。あなたの都合に合わせて下げればOKです。
とはいえ、何らかの目安がほしいところですよね。
1つの目安としては、仏様のご飯を朝に供えるという家が多いので、家族が朝食を食べ終わるタイミングで一緒に下げる、というのがいいでしょう。
あるいは、ご飯の湯気が出なくなったら下げる、みたいなカンジでもいいですね。
または、仕事で出てしまうなら、帰宅してから下げるのでもOKです。
仏様の世界では【食事を午前中にする】というルールがあるそうなので、午後になってから下げるのでもいいでしょう。
ちなみに、僕の場合はお昼の12時を過ぎたら下げるようにしています。
というわけで、ご飯を下げるタイミングに決まりがあるわけじゃないので、あなたの都合の良いときに下げればいいですよ。
下げたご飯はどうするの?
最後に、よく受ける質問の7つめは、
です。
これに対する返答は、『下げたご飯は食べてあげるのが理想的』となります。
仏様はお供えをしてもらった分の【7分の1】だけを受け取ります。
そして、「お供えをどうもありがとう。私はこれだけで十分だから、あとはみんなで分けてね♪」と、残りの【7分の6】は私たちに返してくれるのです。
だから、供えたご飯のほとんどは私たちへのお返しなんですよね。
せっかく、私たちのために返してくれたものですから、ありがたく食べるのが理想的なんです。
とはいえ、供えてから長い時間がたっていたら無理に食べることはありませんよ。
可能であれば食べるといいですよ、というカンジですね。
仏壇から下げたご飯を食べない場合は、他のものと一緒に『可燃ゴミ』として処分してください。
たまに、「お庭にまいて鳥などに食べてもらうのがよい。」という人もいますが、それはヤメた方がいいですよ。
鳥はエサのある場所を学習しますから、その後もお庭に鳥が集まってきますし、そこらじゅうにフンをします。
カラスだと、時期によっては人間を攻撃をしてきますので危険です。
ですから、周辺に他の住宅がないような場所ならかまいませんが、住宅が密集しているような場所ではご飯をお庭にまくなんてことを絶対にしてはいけません。
まとめ:感謝の気持ちを表すために仏壇へご飯を供えましょう
仏壇に毎日『ご飯』を供えるのはけっこう大変です。
だから、無理して毎日『ご飯』を供える必要はありません。
なぜなら、仏様はご飯を食べているわけではないからです。
仏様の食べているのは、お香を燃やしたときに出る『香り』です。
では、何のために『ご飯』を供えるのかというと、ご本尊様やご先祖様に対して『感謝の気持ち』を表すためです。
ご飯というのは、私たちが生きていくために必要なものであり、とても貴重なもの。
そんな貴重なものを仏様へ捧げることで『感謝の気持ち』を示します。
ですから、『感謝の気持ち』を伝えるタイミングもあなた次第なので、べつに毎日じゃなくたっていいんです。
それに、『ご飯』の供え方も、そんなに難しい決まりなんて特にないので、器にちゃんと乗っかる量を丸っぽい形に盛ればいいんです。
あとは、あなたのタイミング(可能なら午前中)で、あなたの好きなように供えてください。
そして、最後に下げたお供え物は家族みんなで食べてしまってください。
仏壇へ『ご飯』を供えて、あなたの『感謝の気持ち』をアツアツの湯気に乗せてお伝えしてあげてください。