外出をするときは、ちょっとしたオシャレや身だしなみとして『香水』をつけますよね。
好きな香水をつけると気分が上がり、また、一緒にいる相手に好印象を与えることもできます。
しかし、【法事】に参列するときは香水をつけない方がいいですよ。
法事のときに香水をつけると、仏様や他の参列者に迷惑をかけてしまう可能性があります。
日頃から香水をつけて出かける人は、法事へ行く前に本記事を読んでみてください。
この記事を書いている僕『未熟僧(みじゅくそう)』は、お坊さん歴20年以上。仏事の疑問を解消するいろんな情報を発信しています。
ある日の法事で異様な香りが・・・
これは、檀家であるA家の法事をしたときの話です。
僕はいつものように法事の準備をしながら、A家のみなさんが来るのを待っていました。
法要開始時間の30分前くらいになった頃、A家のみなさんが来られました。
僕はA家のみなさんを控室に案内し、施主と話をしていたところ、どこからか甘い匂いが漂ってきたのです。
僕はすぐに、それが施主の奥様がつけている【香水】の匂いだと分かりました。
奥様の香水は、ほんのり香るのではなく、かなり強く香っていたのですが、僕がいる寺には【香水の使用を禁じる】という決まりはないので、そのときは特に注意などをしませんでした。
しばらくして、施主に用事があり控室へ入ったところ、部屋中が香水の匂いでいっぱいです。
あれだけ強い匂いが充満していると、人によっては気分が悪くなるかもしれません。
そこで僕は、予定時間よりも早く法要を始めることにしました。
急いで法衣に着替え、A家のみなさんを本堂へ案内しましたが、やはり本堂へ向かう通路も甘い匂いでいっぱいになりました。
A家のみなさんに本堂の中へ入ってもらい、すぐに法事を開始。
僕がお経を読んでいる間も、本堂の中は香水の匂いで埋め尽くされていきます。
そして僕は、法要の途中でいつもどおりA家のみなさんに焼香をするように促しました。
すると、何やら異様な香りがしてきたのです。
香水の匂いと焼香の匂いが混じり合い、今までに嗅いだことのない異様な匂いが発生していました。
クサいというわけではありませんが、甘ったるいようなツーンと酸っぱいような何ともいえない匂いでした。
その後、法事が終わってA家のみなさんは控室に戻られましたが、本堂内は異様な匂いがずっと残ったままです。
本堂の扉や窓を開けて換気をしても、まだ香水の匂いは残っています。
さらに困ったことに、A家のみなさんは法事の後に控室で食事をすることになっていました。
今度は、甘ったるい香水の匂いと料理の匂いが混ざり合い、こちらの匂いは正直言って不快な匂いとなっていました。
あれだけ不快な匂いが充満してると、A家のみなさんは、せっかくの料理の味もよく分からなかったことでしょう。
また、僕の鼻の中にも異様な匂いは残り続け、数時間はずっと不快な思いをしながら過ごすことになりました。
香水をたくさんつけている本人は、自分の香水の匂いがキツイことに気がつきません。
そして、周囲の人もわざわざ「あなたの香水の匂いはキツイですよ。」なんてことは言いません。
自分は良い匂いのつもりでも、周囲の人はそう思っていない可能性があるので、香水のつけ過ぎには十分注意しましょう。
法事には香水をつけて行かない方がいい理由
僕は「香水をつけることは良くない」と言っているのではありません。
適度な量の香水であれば、オシャレですし清潔感もあっていいと思います。
ただし、法事のときには香水をつけない方がいいですよ。
その理由には、
- 仏様(故人)に迷惑をかける
- 他の参列者や、他家の法事の参列者に迷惑をかける
- 法事で香水をつけること自体が不適切
ということが挙げられます。
仏様(故人)に迷惑をかける
法事で香水をつけると仏様(故人)に迷惑をかけることになります。
なぜなら、香水をつけることによって仏様(故人)の食事をジャマしているからです。
「はっ?何を言ってるの?」と思ったかもしれませんが、このまま読み進めてください。
法事のときには『焼香』をしますよね。あるいは『線香を供える』こともあるでしょう。
じつは、仏様は《お香》を燃やしたときに出る『香り』を主食として召し上がっており、これを【香食(こうじき)】といいます。
なので、焼香や線香などを燃やすことによって仏様(故人)に食事をしてもらっているんです。
そして、仏様は《お香》の香りを好むのであって、香水の匂いを好むわけではありません。
となると、香水の匂いというのは、《お香》の香りのジャマをしているだけなんですよね。
例えば、あなたがステーキ屋へ行ったときに、他のテーブルのお客さんが強い香水をつけていたらどうでしょう?
美味しそうに焼けたステーキ肉のいい香りが、香水の匂いによってジャマされたと感じませんか?
法事に香水をつけて行くのは、故人の食事をジャマすることと同じなんです。
法事は、故人のために行うものです。
ですから、故人の供養を大切に思うなら、故人の食事のジャマをしないように、香水をつけるのは控えるべきだと思います。
他の参列者や、他家の法事の参列者に迷惑をかける
法事に香水をつけていくと、他の参列者や、他家の法事の参列者に迷惑をかけることがあります。
先ほどお話したA家の法事のように、1人が多量の香水をつけていることで他の参列者に迷惑をかけてしまいます。
そして、匂いというのは意外と残り続けるものですから、後から来た他家の法事の参列者にも影響が出てしまうのです。
寺院や霊園では、1日に複数の法事が行われるため、本堂や控室などを多くの人が利用します。
ですから、1人の香水のせいで、その後に来る大勢の人たちに不快な思いをさせてしまうんですよね。
香水をつけて満足しているのは【香水をつけている本人】だけです。
他の人に不快感を与える可能性があることを考えると、法事には香水をつけて行かない方がいいと思います。
法事で香水をつけること自体が不適切
僕は、そもそも法事で香水をつけること自体が不適切だと思います。
なぜなら、香水というのは《オシャレ》や《身だしなみ》のために使うものだからです。
一般的に『法事やお葬式では、できるだけ着飾らない』というのがマナーになっています。
これは、心から故人を偲ぶときに自分を着飾る必要はない、ということなんですよね。
香水は普段の生活において【必要なもの】というわけではありません。
法事は、故人を偲ぶために行うものですから、不要な匂いを出さないように香水はつけない方がよいと思います。
『香水』以外で注意すること
法事で身につけるものは『香水』以外にも注意することがあります。
法事やお葬式で身につけるものには、
- 黒色である
- 光沢のないもの
- 余計な金具や装飾がないもの
- 動物性でないもの
- 余計な匂いがしないもの
といったマナーがあります。
簡単に言うと、派手なものはNGで、オシャレの要素は排除せよ、ということです。
仏事にはマナーがたくさんあるので、気をつけることばかりで大変ですよね。
でも、しっかりと故人を偲ぶため、そして遺族に不快感を与えないためにも、できる限りマナーを守るようにしましょう。
【関連記事】:必ず確認しよう!法事に参列するときの持ち物とマナー
まとめ
法事に参列するときには香水をつけないようにしましょう。
香水の匂いは、仏様(故人)と他の参列者に迷惑をかけてしまいます。
香水は『オシャレ』や『身だしなみ』のために使うものですから、法事では【不要なもの】です。
故人を偲ぶときには【できるだけ着飾らない】のがマナーなので、香水をつけないことが故人と遺族に対する礼儀であるという認識を持ちましょう。