仏壇の疑問

遺影はいらない。遺影を飾りたくないなら処分してもOK

お坊さん歴20年以上の未熟僧(みじゅくそう)と申します。

こんな人に向けて書いています
  • べつに遺影なんて飾らなくてもいいんじゃない?
  • 遺影を飾らないと故人は成仏できないの?
  • 飾らない遺影はどうすればいいんだろう?

家族が亡くなると、家のどこかに『遺影』を飾るのが一般的です。

しかし、「遺影なんて飾りたくない」という人もけっこういます。

ただ、そのような人も【遺影を飾らないこと】に対して何となく《後ろめたさ》を感じています。

お坊さんとして言わせていただくと、遺影は飾らなくてもいいですよ。

なぜなら、遺影は『ただの写真』にすぎないからです。

ただの写真なので、必要なければ飾らなくていいし、処分をしたってかまいません。

この記事では、

  • 遺影とはどういうものなのか
  • 遺影を飾らない場合はどうすればいいのか

について詳しく解説しています。

最後まで読んでいただければ、遺影には大した意味がないことが分かってスッキリしますので、ぜひチェックしてみてください。

遺影は無理に飾らなくてもいい

現在の日本では、家族が亡くなると家のどこかに故人の遺影を飾るのが一般的です。

でも、遺影を飾りたくない場合は、遺影を飾らなくてもいいですし、なんなら処分をしたってかまいません。

遺影は『ただの写真』にすぎない

多くの人は『家族が亡くなったら遺影を飾るのが当たり前』だと思っています。

しかし、じつは、遺影というものは《必ず飾るべき》というほど大事なものではありません。

なぜなら、遺影というのはただの『写真』だからです。

ただの『写真』ですから、遺影を飾るかどうかは家族が自由に決めたらいいんです。

とはいえ、遺影を飾らないというのは何となく、

  • 「もしかして故人が怒るんじゃないかな?」
  • 「ちゃんと供養できるのかな?」

と不安になりますよね?

大丈夫ですよ、遺影がなくても故人は怒りませんし、供養にもまったく影響はありません。

また、遺影に向かって手を合わせている人がけっこういますが、そんなことをする必要はないですよ。

なぜなら、遺影はただの『写真』であって、写真は『手を合わせる』ものではなく『見る』ものだからです。

手を合わせなきゃいけないのは故人の【位牌】の方です。

位牌は必要なものですが、遺影はあまり重要ではないということを覚えておいてくださいね。

【関連記事】:位牌とは何なの?位牌の意味や必要性をお坊さんが解説します。

遺影を飾る風習は比較的最近のもの

多くの家で当たり前のように飾られている遺影。

でもじつは、遺影を飾る風習は比較的最近のものなんです。

遺影を飾るようになったのは明治期以降ですから、だいたい今から130〜150年前くらいです。

その前には遺影というのはなかったのですが、遺影に似たようなものはありました。

遺影の元になっているのは、江戸時代の『死絵』や『葬儀絵巻』だという説があります。

『死絵』というのは、役者などの有名人が亡くなった場合、冥福を祈る意味で書かれた浮世絵です。

『葬儀絵巻』というのは、記録として葬儀の様子を絵に描いたものです。

この頃はまだ写真ではなく【絵】ですが、明治期に入った頃に有名人の生涯を写真集に残すようになり、これが故人の姿を【写真】に残すキッカケとなったのです。

その後は、日清日露戦争で亡くなった人の写真を遺影として使うようになりました。

その風習が全国に広がり、現在の『遺影』として残っているんですね。

しかし、じつは遺影を飾るのは日本独特の風習なのです。

欧米人は『生きている人』の写真を飾ることはしますが、『亡くなった人』の写真は飾らないのです。

私たち日本人は、よく遺影に向かって話しかけますが、欧米人にとってはこれに違和感を覚えるそうです。

すでに《亡くなった人》で、しかも《写真》に向かって話しかける日本人は【頭がどうかしている】ように映るんですって。

ということで、遺影を飾る風習は比較的最近のものですし、日本だけで広がったものですから、ずっと昔に遠くのインドで誕生した仏教とは何の関係もないんですよね。

つまり、遺影を飾ろうが処分しようが、それは完全にあなたの自由なのです。

遺影を飾るのはよくない?

以前に信者さんから、

遺影を飾るのは縁起が悪いからあまりよくないって聞いたんですけど、本当ですか?

という質問をされことがあります。

なぜ【遺影を飾る=縁起が悪い】という発想になるのか、僕にはイマイチ分からないんですよね。

亡くなった人が写っているから、何となく他の《霊》を呼び寄せてしまう気がするのでしょうか?

何度も言いますが、遺影は『ただの写真』ですから縁起の良い悪いなんて関係ないです。

なので、遺影を飾ることは、べつに【よいこと】でもないですし、また【よくないこと】でもありません。

縁起とは関係ありませんが、『遺影を仏壇の上に置く』というのはよくないです。

仏壇の上って、平面なので遺影を置くにはちょうどいいんですよね。

しかし、仏壇の上に物を置いてはいけません。

なぜなら、仏壇の中にいらっしゃる『ご本尊様』の頭上に物を置くことになって失礼だからです。

遺影を飾るかどうかは自由ですが、飾るなら仏壇の上以外の場所へ飾るようにしてくださいね。

飾らない遺影はどうすればいいの?

家族と話し合って『遺影は飾らない』ことに決まった場合、飾らない遺影はどうすればいいのでしょうか?

飾らない遺影は、

  • とりあえずどこかに保管しておく
  • 処分をする

のどちらかです。

本当にどちらでもいいので、あなたの自由でかまいませんが、あえてどちらかを選ぶなら『とりあえずどこかに保管しておく』ことをおすすめします。

とりあえずどこかに保管しておく

飾らない遺影については、とりあえずどこかに保管しておくという選択肢があります。

遺影の保管場所は本当にどこでもいいので、置いてもジャマにならないような所にとりあえず保管しておくのです。

えっ?飾らないなら保管なんてしなくてもいいんじゃないの?

未熟僧
未熟僧
今後もしも【法事】をするなら遺影はあった方がいいですよ。

法事をするときには故人の【遺影】を飾ることがほとんどです。

遺影があった方が「今この人の供養をしていますよ。」ということが分かりやすいですし、遺影で故人の顔を見ている方が、生前の故人のことを思い出しやすくなります。

だから、お坊さんによっては「法事のときは遺影を必ず持って来てください。」という人もいるので、そのようなときに遺影がなかったら少し面倒なことになります。

その他にも、遺影がなかったら親戚から文句を言われるかもしれません。

多くの人は《家族が亡くなったら遺影を飾るのが当然》だと思っていますので、あなたの親戚の中に『うるさくて面倒くさい親戚』がいる場合は注意した方がいいですよ。

きっと「遺影がないなんて故人がかわいそうだよ。」みたいなカンジで言われることでしょう。

なので、遺影はとりあえず保管しておく方が無難です。

処分をする

やっぱり遺影はいらないから、もう処分したいんだよね。

未熟僧
未熟僧
そうですか・・・。

じゃあ処分の方法を紹介しますね。

遺影はいらないから処分したいという人もいることでしょう。

ここからは遺影の処分方法について紹介していきます。

遺影の処分方法は、

  • 自分で処分する
  • お寺や神社で処分してもらう

のどちらかです。

自分で処分する

先ほどから何度も言っていますが、遺影はただの『写真』です。

ですから、遺影は自分で処分するというのが基本です。

もちろん、処分というのは【可燃ゴミ】として出すことです。

他の人に写真が見えないよう、半紙などに包んでビニールに入れて出すようにしましょう。

あるいは、【自分で燃やす】というのも方法の1つです。

自分で燃やす場合は、庭で燃やすか、家の中なら十分に注意して灰皿の上で燃やすといいでしょう。

お寺や神社で処分してもらう

遺影がただの写真とはいえ、自分で処分することに抵抗がある人もいるでしょう。

そんなときは、お寺や神社で処分してもらうというのも1つの方法です。

お寺や神社なら、ちゃんと供養をしてから処分してくれますから、何となく安心できますよね。

ただし、処分を依頼するということは『お金』が必要になると思っておきましょう。

処分費用は、まぁ【5,000円】もあれば大丈夫でしょう。

でも、遺影の処分をしないお寺や神社もありますので、ちゃんと事前に確認をしてから持って行くようにしてください。

まとめ:遺影はただの写真。飾らなくてもいいし、処分をしてもいい。

家族が亡くなったら、家に故人の遺影を飾ります。

でも、最近では「遺影を飾りたくない。」という人が増えました。

遺影を飾りたくないのなら、無理に飾らなくていいですし、いらないなら処分をしてもかまいません。

なぜなら、遺影というのは『ただの写真』だからです。

それに、遺影は明治期以降からの比較的新しい習慣です。

また、遺影を飾ろうが処分しようが、ただの写真である以上、故人の供養とは何の関係もありません。

だから、遺影を飾るのかどうかは『あなたの自由』なのです。

しかし、故人の回忌法要をするときなどに遺影が必要となる場合がありますので、とりあえず処分はせずに保管をしておく方が無難です。

どうしても処分をしたい場合は、自分でゴミに出すか、費用をかけてお寺や神社に処分してもらってください。

最近では写真を撮っても、それを現像する人は減っており、みんなスマホやPCに画像を保存します。

故人の顔を忘れないように、そして故人をいつも近くに感じるための遺影ですから、その目的が果たせるのであれば【現像された写真】にこだわる必要はないのかもしれませんね。

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