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お葬式の疑問

火葬後に収骨をしない!?『ゼロ葬』にする理由とメリット&デメリットを紹介

数字の0が書かれた木製ブロック

お坊さん歴20年以上の未熟僧みじゅくそうと申します。

こんな人に向けて書いています
  • どうしても故人の遺骨を引き取りたくない
  • 事情があって故人の遺骨を引き取ることができない
  • 『ゼロ葬』について知りたい

最近では【お葬式のカタチ】がずいぶんと変わりました。

例えば、

  • 家族葬:できるだけ人を呼ばず、故人と近い関係の人だけで行う
  • 一日葬:通夜をせずにお葬式だけを行う
  • 直葬:お葬式さえも行わない

などです。

僕がお坊さんになりたての頃には想像もできなかったくらい、【お葬式のカタチ】は大きく変わりました。

しかし、近年ではさらに新しい【お葬式のカタチ】が誕生しています。

その名も、『ゼロ葬』です。

ゼロ葬とは、お葬式をしないだけではなく、火葬後の収骨をせず、故人の遺骨を引き取らないという、なんとも驚きのお葬式のカタチです。

ただし、この『ゼロ葬』はさすがにインパクトが大きいので、安易に決めてしまわず慎重に考える必要があります。

この記事では、

  • 『ゼロ葬』とは何か
  • 『ゼロ葬』が選ばれる理由
  • 『ゼロ葬』のメリットとデメリット

について書いています。

未熟僧
未熟僧
新しい葬送形態の1つとして参考にしてみてください。

『ゼロ葬』って何?

頭上に?マークがある黒いスーツを着た男性の後ろ姿

近年のお葬式には、『一日葬』『家族葬』『直葬』などいくつかの形態がありますが、新たに『ゼロ葬』という葬送形態が誕生しています。

『ゼロ葬』とは、火葬後の収骨をせず、故人の遺骨を引き取らないという非常にインパクトの大きな葬送形態です。

『ゼロ葬』の【ゼロ】は数字の【0】のことで、つまり【何も無い】という意味ですから、

  • お葬式が無い
  • 収骨が無い
  • その後の供養が無い
  • 故人のための【お墓】が必要ない

ということなんですよね。

ちなみに、この『ゼロ葬』という名前は、宗教学者の島田裕巳氏の著書である《0葬ーあっさり死ぬ》(2014年出版)が元になっているそうです。

現在のところは、さまざまな事情で《どうしても遺骨を引き取ることができない》という人がゼロ葬を選んでいます。

やむを得ない理由があって、それで仕方なく『収骨拒否』をしているわけですね。

西日本では、遺骨の一部だけを持って帰る【部分収骨】という文化がありますが、ゼロ葬の場合は一部さえも持って帰らず全面的に収骨拒否をします。

本当に何もしないので、言ってみれば【究極に簡略化された葬送のカタチ】です。

未熟僧
未熟僧
もはや『葬送』でさえないかも。

じつは、お坊さんである僕も『ゼロ葬』を知りませんでしたから、世間の人にはほとんど認知されていないはず。

しかも、【あえて遺骨を引き取らない】という、今までだと考えられないような形態ですから、きっと一部の人からは批判を受けることでしょう。

また、この『ゼロ葬』はどこの火葬場でもできるわけではないんですよね。

条例や火葬場の規則は各自治体によって違いますから、あなたがそのつもりでいても、いざというときになって「ウチではできませんよ。」と断られてしまうかもしれません。

ですから、どうしても遺骨を引き取ることができないのなら、事前に『収骨拒否』ができる火葬場を探しておく必要があります。

とはいえ、現在のところ『ゼロ葬』は最新の葬送形態なので、後悔のないよう慎重に考えて選ぶようにしましょう。

『ゼロ葬』を選ぶ理由

右手で数字の0を持って微笑む女性

『ゼロ葬』は遺骨を収骨せずに、そのまま火葬場に残してくるわけですが、『ゼロ葬』を選ぶ理由とは一体何なのでしょうか?

故人と絶縁していた

ゼロ葬を選ぶ理由として、生前に『故人と絶縁していた』というケースがあります。

私たちは、人間関係においてどうしてもお互いに理解し合うことができず、その結果『関係を断つ』ということがありますよね。

これは、相手が友人や知人の場合はもちろん、夫婦や親戚同士、さらには親子であっても起こりうることです。

もしも、あなたと絶縁していた人が亡くなった場合、故人にとってあなた以外に誰も身寄りがいなければ、あなたの所へ連絡がきます。

それで、仕方なく火葬をしたとしても、その後のことまでは面倒を見たくないと思うことでしょう。

その結果、ゼロ葬を選択することになるんですよね。

離婚した相手が孤独死をした

ゼロ葬を選ぶ理由には、『離婚した相手が孤独死をした』というケースがあります。

先ほども言いましたが、人との関係を断つというのは夫婦関係においても起こります。

未熟僧
未熟僧
要するに『離婚』ですね。

離婚をすれば、相手の人とは法的に他人となります。

しかし、もしも離婚した相手がその後もずっと独身で、そのまま孤独死をしてしまった場合、その人にまったく身寄りがいなければ、最終的にはあなたの所に連絡がきます。

本当ならばもう【赤の他人】なので何の関係もないのですが、「最後くらいは・・・。」と火葬の立ち会いだけをする人もいます。

でも、そういう人もさすがに遺骨までは引き取れないんですよね。

その結果、『ゼロ葬』を選ぶことになります。

ほぼ面識がないような遠い親戚である

ゼロ葬が選ばれる理由には、故人が『ほぼ面識がないような遠い親戚である』というケースもあります。

亡くなった人にとって【関係が近い身寄りの人】がいない場合、さらに範囲を広げて身寄りを探すことになります。

そうすると、会った記憶もないような親戚であっても、巡りめぐってあなたの所へ連絡がきます。

あとはもう同じ。

仕方なく火葬はしてあげるのですが、その後のことまで面倒を見ることができないので、遺骨を引き取ることはしないのです。

それで、結果として『ゼロ葬』を選ぶことになるんですよね。

故人の遺骨を納める場所がない

ゼロ葬を選ぶ理由には『故人の遺骨を納める場所がない』ということもあります。

遺骨を引き取った場合、基本的には遺骨をお墓へ納骨します。

しかし、遺骨を引き取った人がまだお墓を持っていない場合もありますので、それだとお骨の行き先がありません。

最近では『手元供養』といって【自宅に遺骨を置いておく】という供養方法もあります。

しかし、大切な家族の遺骨なら話は分かりますけど、それがもしも【さほど思い入れのない人】の遺骨だったらずっと家に置いておきたくないですよね?

だからといって、わざわざその人のためだけにお墓を建てるなんてことはしません。

お墓を建てるには大金が必要ですし、誰も後を守る人がいなければすぐに【無縁墓】になってしまいます。

だったら、どこかの納骨施設に預けてしまえばいい・・・といっても、それだって大きな初期費用と維持費が必要です。

ですから、残酷なようですが「さほど思い入れのない人の遺骨に対してそこまでのことをする義理はない」と思うのが普通です。

それで、『ゼロ葬』を選ぶという結果になります。

故人の強い遺志

ゼロ葬を選ぶ理由として『故人の強い遺志』というケースもあります。

生前のうちから「将来、自分に【そのとき】がきたら、遺骨はぜひ◯◯にしてほしい。」というような希望を家族に伝えている人は多いです。

その中には、家族に迷惑をかけたくないという心理から、「自分の遺骨はお墓には入れずに全部処分してほしい」と希望する人もいます。

とはいえ、それが本心ではなくて言っている場合と、本心で言っている場合があるんですよね。

ほとんどの人は本心ではないですが、まれに本心で言っている人もいます。

そのような場合、家族としてはお墓に納骨したいという気持ちがあっても、結果的に『ゼロ葬』を選ぶことがあります。

『ゼロ葬』のメリットとデメリット

青空を背景にしてMeritの文字とDemeritの文字が書かれた矢印の順路看板

『ゼロ葬』という新たな葬送形態は、多くの人にとってまだ馴染みがないので、そのメリットやデメリットも認知されていません。

物事には必ずメリットとデメリットがあり、それらをしっかりと理解した上で選ばないと後悔するかもしれません。

ここからは、『ゼロ葬』のメリットとデメリットについて書いていきますので、ぜひ読んでおいてくださいね。

『ゼロ葬』のメリット

『ゼロ葬』をすることのメリットは、

  • 費用を大幅に抑えられる
  • 時間を取られない

ということです。

費用を大幅に抑えられる

『ゼロ葬』というのは、とにかく故人に対して【必要最低限のこと以外は何もしない】というものです。

つまり、

  • お葬式
  • お墓
  • その後の供養

これらが全くないんですよね。

ですから、お葬式から供養へという一般的な流れに比べると、費用を大幅に抑えられることがメリットとなります。

とりあえず、ゼロ葬の費用だけは必要ですが、それでも【10万円~20万円】くらいなので、一般的なお葬式や供養をするのに比べれば、信じられないくらい安いです。

というか、費用があまりかからないからこそ、遺骨を引き取ることはしなくても、火葬だけはしてもらえるのでしょうね。

時間を取られない

一般的なお葬式をしようとすると、いろんな【打ち合わせの時間】とか【法要や食事を行う時間】が必要になります。

しかし、『ゼロ葬』は必要最低限の打ち合わせだけで、法要や食事なんかしません。

ですから、一般的なお葬式をする場合に比べて『時間を取られない』というメリットがあります。

必要最低限の打ち合わせをして、火葬場まで付き添って、故人が火葬炉へ納められるのを見届けるだけです。

費用もさほどかからず時間もそんなに取られないので、遺骨を引き取ることはしなくても、火葬だけはしてもらえるのでしょうね。

『ゼロ葬』のデメリット

続いて『ゼロ葬』のデメリットについて紹介します。

デメリットとしては、

  • 一部の人から批判を受ける
  • 後になって遺骨を引き取ることはできない

ということが挙げられます。

一部の人から批判を受ける

ゼロ葬をする際には、家族や親戚との話し合いをしておくことが大事です。

しかし、故人に近い親戚との話し合いはできても、すべての親戚との話し合いはできませんよね。

そのため、遠い親戚など一部の人から批判を受けるということが十分に考えられ、これがゼロ葬のデメリットになります。

やはり、【遺骨を引き取らない】というのは、世間でまだ理解されていない方法で、人によっては『ありえない選択肢』なんですよね。

なので、ゼロ葬を選ぶなら、一部の人から批判を受けることは覚悟し、批判に対する説明ができるようにしておく必要があります。

後になって遺骨を引き取ることはできない

『ゼロ葬』というのは【故人の遺骨を引き取らない】ということが最大の特徴です。

しかし、逆に『ゼロ葬』を選ぶからには後になって遺骨を引き取ることはできないということを覚悟しなくてはいけません。

もしも後で気が変わったとしても遺骨を引き取ることはできないのがゼロ葬のデメリットです。

ですから、ゼロ葬は絶対にあなた1人だけで決めずに、必ず家族や故人に違い親戚と話し合ってから決めるようにしてくださいね。

『ゼロ葬(収骨拒否)』ができない火葬場があるので注意

胸の前で両手を交差させているスーツ姿の男性

先ほども言いましたように、すべての火葬場で【収骨拒否】ができるわけではないです。

つまり、あなたの自宅近くで『ゼロ葬』ができるとは限りません。

火葬に関することは、各自治体の条例や火葬場の規則が違うので、まずは【収骨拒否】ができる火葬場を探す必要があります。

それで、もしも近くの火葬場で収骨拒否ができなければ、遺体を他の市町村の火葬場まで移送することになります。

ただ、火葬場というのは基本的に『市民のためのサービス施設』ですから、他の市町村から移送されてきた遺体を火葬すると、使用料金が一気に高くなるんですよね。

それに、他から移送されてくる場合は、希望する時間帯では火葬をしてもらえないケースもあります。

また、他の市町村の火葬場まで遺体を移送するとなると、移送の距離が増えてしまい、その分だけ葬儀社へ支払う移送運賃も増えます。

『ゼロ葬』は一般的なお葬式に比べればずっと安くすむのですが、それでもある程度の出費が必要となるのでご注意ください。

まとめ:『ゼロ葬』は最新の葬送形態、後悔のないようによく考えて選ぼう。

お葬式の方法はここ20年くらいで劇的に変化しました。

現在ではどんどん簡略化が進み【必要最低限】のお葬式をするのが一般的になりつつあります。

そんな中で、『火葬後に収骨をせず、故人の遺骨を引き取らない』という究極に簡略化をした葬送形態である『ゼロ葬』が誕生しました。

『ゼロ葬』は、やむを得ない事情がある人にとっては必要なものですが、そうでない人にはおすすめできません。

故人の遺骨を引き取らないというのは、あまりにインパクトが大きすぎて、多くの人にはまだ受け入れられておらず、安易に『ゼロ葬』を選ぶと親戚間のトラブルを引き起こす可能性があります。

もちろん【故人をどのように弔うか】は誰かに強制をされて決めるものではありませんが、あなた1人で勝手に決めてしまってはいけません。

『ゼロ葬』は最新の葬送形態なので、家族や知人など必ず誰かと相談をしてから、後悔のないよう慎重に考えて選ぶようにしてくださいね。

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