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お葬式の疑問

【本当に後悔しない?】直葬が選ばれる理由と、その後のトラブル事例を紹介

「直葬本当に後悔しない?」というテキストの背景にある火葬場の施設内

お坊さん歴20年以上の未熟僧みじゅくそうと申します。

このような人に向けて書いています
  • お葬式なんかしないで『直葬』でいいんじゃないの?
  • とにかくお金をかけたくないから『直葬』にしたい。
  • インターネットで見たけど、10万円以内で『直葬』ができるの?

最近よく見かける『直葬(ちょくそう)』というワード。

直葬は、お葬式をせずに火葬だけをするという非常に簡略化された葬送形態で、大幅に費用を抑えることができます。

しかし、安易に直葬を選んでしまうと、その後に思わぬトラブルを招く可能性があるので注意が必要です。

この記事では、

  • 直葬とは何か
  • 直葬が選ばれる理由
  • 直葬のトラブルの事例

についてお坊さん視点で書いています。

故人との最後のお別れで後悔をしないように、ぜひ最後まで読んでみてください。

『直葬』とは、お葬式をせずに火葬だけをすること。

遺骨を持った喪服の男性と遺影を持った喪服の女性を含む喪服姿の6人

最近では、いろんなメディアで『直葬』が取り上げられています。

『直葬』とは、お葬式を行わずに火葬だけをするという非常に簡素化された新しい葬送形態のことです。

『直葬』にすると、

  • 経済的な負担が少ない
  • 体力的な負担が少ない
  • 精神的な負担が少ない
  • 短時間で終わる

といったようなメリットがあります。

特に《経済的な負担が少ない》という部分が直葬の大きなメリット。

葬儀費用の平均というのは家族葬でも100万円を上回りますが、『直葬』ならその半額以下に葬儀費用を抑えることができます。

また、『直葬』はお葬式をしないので、体力的な負担が少ないだけではなく、火葬場に行くのが身内だけなので余計な気を使わなくてすむのです。

さらに、お葬式に関する打ち合わせなどをする必要もありませんから、時間を大幅に短縮できます。

このように『直葬』には魅力的なメリットがあるので、お葬式をせず直葬にする人が増え続けています。

しかし、当然ながら『直葬』のデメリットもあり、

  • 親戚や知人からの理解が得られない
  • 後からいろんな人が弔問に来てしまう
  • 菩提寺とのトラブルが起きてしまう可能性がある
  • 結局は後悔する

などが挙げられます。

お葬式は『告別式』ともいい、字のとおり【故人と最後のお別れをするための式】です。

直葬をすると、この【故人と最後のお別れをするための式】を省略することになります。

そのため、親戚や知人から「ちゃんとお別れをしたかったのに!」と文句を言われることもあります。

そして、後から訃報を聞いた人たちは遺族の自宅へ弔問をしに来るでしょう。

すると、遺族としては誰かが来るたびに対応をすることになり、かえって疲れてしまうのです。

また、菩提寺(自分の家のお墓があるお寺)に何の相談もせずに直葬をしてしまうと、その後に菩提寺とトラブルになります。

多くのお寺では、

  • お葬式は必ず菩提寺が執り行う
  • 納骨するには戒名をつけることが必須

といったような【お墓へ納骨するための条件】があるので、お寺に無断で直葬をすると、お墓へ納骨できなくなります。

このように、思いもよらぬデメリットがあるせいで「こんなことなら、ちゃんとお葬式をしておけばよかった。」と後悔する人も多いんですよね

『直葬』というのはメリットの部分が目立ちますが、その裏で大きなデメリットがあることも忘れてはいけません。

直葬が選ばれる主な理由

理由という文字が書かれた紙を差し出す右手

直葬が選ばれる主な理由としては、

  • 費用が安い
  • お葬式(宗教行為)の必要性を感じない
  • 故人の強い遺志

ということが挙げられます。

費用が安い

直葬を選ぶ理由として最も多いのは費用が安いということです。

以前に葬儀社のスタッフさんから聞いたことがありますが、直葬を選ぶ人の70%が【お金をかけたくない】という理由なのだそうです。

お葬式にかかる費用は家族葬でも100万円以上かかりますが、直葬であればその半額以下まで費用を抑えられます。

ですから、お金がない人にとっては、費用の安い直葬がとても魅力的なものに映ることでしょう。

しかし、いくら直葬が安いとはいえ【20万円~40万円】くらいはかかります。

たまに葬儀社の広告などに【10万円以下】で直葬ができると掲載されていますが、実際のところ10万円以下では難しいです。

葬儀社としては人件費や材料費そして多額な宣伝広告費をかけているので、いくら直葬とはいえ10万円以下の金額では利益が出ません。

ちなみに、生活保護を受けていた人が亡くなると直葬になりますが、このときに行政から担当葬儀社へ直葬の費用として20万円程度支払われます。

行政のお金はすべて【税金】なので、直葬の費用についても無駄なお金は出しません。

ですから、それはつまり直葬をするためには最低でも20万円が必要であることを意味しています。

じつは、【価格の安さ】を強調している葬儀社は、上手にお客さんを誘導してオプションを追加するように仕向けます

まずは安い価格に応じた【物足りない内容のプラン】を見せ、その後に少しずつ内容のグレードアップを提案して儲けを出していくんです。

ですから、広告では【10万円以下】となっていても実際にはさまざまな追加料金が発生し、結局は相場の20万円~40万円近くの料金を支払うことになります

直葬を選ぶ人の中には「ウチはお金がないから、費用が1番安い葬儀社でいいよ。」と言う人もいますが、その金額だけではすまないので要注意です。

ヘタをすれば相場以上の金額になってしまう可能性もあるので、【価格の安さ】だけで選ばないようにしましょう。

お葬式(宗教行為)の必要性を感じない

直葬を選ぶ理由として『お葬式の必要性を感じない』という人もいます。

そのような人は、お葬式を含めた『宗教行為』そのものに対して必要性を感じていません。

宗教というのは『信じること』がすべてなので、それができない人にとって宗教は無意味です。

そして、ほとんどのお葬式は何らかの宗教行為によって執り行われますので、宗教を信じない人にとってはお葬式そのものが【不要なもの】となります。

しかし、「宗教を信じない。」と言っている人でも、

  • 子どもが生まれたら初宮参り七五三
  • 年末になればクリスマス
  • 年明けには初詣

といったように、意識をしていなくても立派な宗教行為をしており、完全な無宗教ではないのです。

とはいえ、宗教は誰にも強制されるものではないので、どうしてもお葬式の必要性を感じない人は直葬でよいと思います。

あるいは、近年では『無宗教葬儀』という【宗教行為をしないお葬式】もあるので、それでもよいでしょう。

宗教行為に意味を感じないのであれば、直葬ではなく、せめて無宗教葬儀だけでもしてあげることをおすすめします。

《関連記事》:お坊さん無しでお葬式はできる?無宗教葬儀の流れと注意点を紹介

故人の強い遺志

お葬式というのは『故人のため』に執り行うものです。

ですから、生前に本人が「自分のお葬式はしなくていい。」と家族に伝えていたら、家族は本人の意思を尊重するでしょう。

そのため、故人の強い遺志により、お葬式をせず直葬にするというケースもあります。

とはいえ、故人の遺志を尊重したくても、すでにお寺の檀家になっていたり、うるさい親戚がいるなどの理由でお葬式をせざるを得ないことも珍しくありません。

故人の遺志を尊重することはとても大切ですが、後でさまざまなトラブルが起きてしまう可能性もあるので柔軟な判断が必要です。

お葬式をするかどうかの判断は、現状をよく考えてから可能な範囲で『故人の遺志』を尊重してあげてください。

直葬をした後のトラブル

両手で髪を掴んで苦悩する女性

最近では『直葬』をする人が増えているとはいえ、それでもまだ広く認知されてはいません。

ですから、『直葬』を初めて知った人は、

  • 手抜きをしている
  • 過度な節約である
  • 故人の尊厳を守っていない

といったイメージを抱くこともあります。

そのため、後になってトラブルが起きることもあるので、『直葬』をするには十分な注意が必要です。

親戚や知人から理解を得られず文句を言われる

一般的なお葬式では、親戚や知人など【故人と縁があった人】が参列し最後のお別れをします。

しかし、『直葬』ではそれを一切せず、遺族など【故人の身内だけ】で最後のお別れをすることになります。

すると、後になって親戚や知人から理解を得られず文句を言われることがよくあるんです。

遺族にとってはいろんな理由があって『直葬』にしたわけですが、他の人たちにはそれが分からず【故人と最後のお別れができなかった】という事実だけが残ります。

それで、

  • 「最後に故人の姿を見たかったのに・・・。」
  • 「お葬式をしないなんて非常識だ!」
  • 「親戚なんだから最後のお別れくらいさせてほしかった。」

などと文句を言われてしまうのです。

ですから、『直葬』にする場合は、【故人と縁があった人】に対してしっかりと理由を説明できるようにしておきましょう。

菩提寺との関係が悪くなる

お葬式をするかどうかは、基本的には遺族が自由に決めることです。

しかし、すでに『菩提寺』がある場合はお葬式をしなくていけません。

なぜなら、菩提寺との付き合いがある以上、必ず菩提寺の僧侶がお葬式をする約束になっているからです。

ここで、念のため『菩提寺』について説明しておきます。

例えば、あなたの家のお墓が【A寺】というお寺の墓地に建っているとします。

この場合、あなたの家にとってA寺は『菩提寺』となります。

反対に、A寺にとってはあなたの家が『檀家(だんか)』となります。

お寺の墓地にお墓を建てるときは、必ず『菩提寺』と『檀家』の関係になるのです。

そして、檀家(あなたの家)のお葬式や法事はすべて菩提寺(A寺)が担当するという約束をします。

このように、あなたの家で不幸があった場合、菩提寺にお葬式を依頼しなくてはいけないのです。

それにもかかわらず無断で『直葬』をしてしまったら、菩提寺との関係が悪くなるのは必須です。

お寺に無断で『直葬』をするのは、お寺との約束を破ることになるので必ずトラブルになります。

もしも『直葬』をしたい場合は、必ず菩提寺の許可を得てください。

お寺の許可が得られず、それでも『直葬』をしたい場合は、まず【寺檀】の関係を解消し、使用している墓地をお寺に返還しなくてはいけません。

そうすると、新たに墓地を探さなくていけませんし、墓石の撤去費用などもかかってしまいます。

つまり、すでに菩提寺があるという場合、実質的には『直葬』にすることは難しいのです。

《関連記事》:お寺の檀家とは何か。檀家になるとデメリットだらけでメリットは少ない!

結局は後悔する

『直葬』をしようと考えている人の多くは、おそらく『直葬』のメリットの部分ばかりが見えている状態でしょう。

しかし、すでに紹介してきたように『直葬』にはデメリットもありますし、トラブルになることも多いんですよね。

わずか数万円で『直葬』ができると思ったのに結局は相場どおりの金額を支払い、さらに親戚や知人からは文句を言われ、そのうえ菩提寺ともトラブルになる。

それで、『直葬』が思ったよりもメリットが少ないどころか、余計に大変であることに気がつき、「こんなはずじゃなかったのに…。」と結局は後悔することになります。

『直葬』にするなら火葬場にはお坊さんを呼ばない

バツ印の入った丸いプレートを右手に持ち、残念な表情をしている男性僧侶

ここで、お坊さんの僕からのお願いです。

亡くなった家族をどのように送り出すかは遺族が自由に決めてかまいません。

しかし、『直葬』にするなら火葬場にはお坊さんを呼ばないようにしてください。

『直葬』というのはお葬式をしない葬送形態なので、お坊さんの出番は一切ありません。

ところが、『直葬』を選んだ人の中には、

「何もしないのは気が引けるから、少しだけでもお坊さんにお経を読んでもらった方がいい。」

といって、お坊さんに火葬場まで来てもらい【火葬直前の簡単な供養】を依頼する人がいます。

しかし、『直葬』を選んだのなら、お坊さんを火葬場に呼ばないでください。

『直葬』を選んだということは、家族で話し合って《お葬式をしない》と決めたはずです。

それなのに、火葬直前に簡単なお経だけ読んでもらうなんて、そんな中途半端な供養をしてはいけません。

中途半端な供養をするのは、故人に対して、そしてお坊さんに対しても失礼です。

しかも、お経を読むだけでは【お葬式の代わり】にはならないんです。

詳細については割愛しますが、お坊さんが故人へ『引導』を渡して、それでようやくお葬式になるのです。

じつは、お経を読むことなんて【二の次】の要素でしかありません。

そして、最重要の『引導』は火葬場でササッとできるものでもありません。

ですから、火葬場での読経を依頼するくらいなら、『一日葬』でもいいので、参列者が遺族だけでもいいので、ちゃんとお葬式をやってあげてください。

中途半端が1番ダメですから、『直葬』にするなら火葬だけをして、少しでも気が引けるようなら『一日葬』をする、このどちらかに決めましょう。

【関連記事】:お葬式をする目的。お葬式でお坊さんがしていることを具体的に解説!

後悔のないように、ちゃんとお葬式をする

正面から見た豪華な祭壇

『直葬』には魅力的なメリットがありますが、それにもかかわらず【直葬にしたことを後悔する人】も多いです。

なぜなら、先ほども紹介したように『直葬』はデメリットも多いからです。

ですから、亡くなった大切な家族のためにも、後悔のないように、ちゃんとお葬式をするということを優先的に考えてください。

『直葬』を選ぶ人の70%は【費用が安いから】という金銭的な理由です。

お葬式は急にやって来るものですから、いざというときに金銭的な余裕がなくなってしまい、それで『直葬』を選ぶんですよね。

しかし、多くの人が「やっぱり、ちゃんとお葬式をしてあげればよかったな。」と後悔をしています。

それならば、ちゃんとお葬式をするつもりで、

  • 互助会に入って少しずつ葬儀費用の積み立てをしておく
  • 複数の葬儀社に資料請求し、お葬式の内容と費用を確認しておく

といった準備をしておけばいいのです。

お葬式の準備をするには互助会への入会が有効な手段となります。

互助会に入り、契約コースを選んで積み立てをしておけば、お葬式のときには大幅な割引きが受けられ、さらに格安の価格で豪華施設を使用できます。

また、事前に積み立てを済ませておけば、その分だけお葬式のときに支払うお金が少なくてすむんですよね。

お葬式に対する金銭的な心配があるのなら、互助会に入会するなどして、今から少しずつ費用の準備をして、なおかつ【お得】になるように対策をしておくことが大事です。

ですから、安易に『直葬』を選ぶのではなく、必ず来るお葬式のために今のうちからしっかりと準備をしておきましょう。

まとめ

『直葬』は、従来のようなお葬式をせず、最初から火葬をするという大幅に簡略化された葬送形態です。

『直葬』であれば、経済的、体力的、精神的、時間的に負担を減らすことができるので、近年では多くの人の注目を集めています。

しかし、『直葬』には、

  • 思ったよりも費用の削減ができない
  • 菩提寺との関係が悪くなる
  • 親戚や知人たちから文句を言われる
  • 結局は後悔する

といったトラブルもあります。

『直葬』のメリットばかりに目が行ってしまがちですが、後でトラブルが起きることを考えると、じつはデメリットの方が多いです。

『直葬』を選ぶ人の70%は【費用が安いから】という理由ですが、それはお葬式になって急に大きな出費が必要となるから慌てるわけです。

そうならないために、互助会に入会するなどして今のうちからしっかりと葬儀費用の準備をしておきましょう。

大切な家族を送り出すのですから、安易に『直葬』を選んで後悔するのではなく、事前に準備をしておき、ちゃんと『お葬式』をしてあげてくださいね。