お坊さん歴20年以上の未熟僧(みじゅくそう)と申します。
- ウチの墓地に植木をしたい。
- 墓地の植木を管理するのは大変かな?
墓地の中に植木があると、見た目はちょっとした『庭』みたいですよね。
墓石だけの状態よりも、少しでも自然な『緑』があることで墓地全体が優しい雰囲気になります。
でも、墓地に植木をするのはデメリットが多すぎるのでヤメた方がいいですよ。
本記事では、
- 墓地に植木をしてもよいのか
- 墓地に植木をすることのデメリット
- どうしても植木したい場合の注意点
について解説しています。
墓地に植木をして後悔しないために、まずは本記事を読んでみてください。
墓地に植木をしてもいいの?
墓地に植木をするかどうかは墓地使用者の自由で、法律上も問題はありません。
ただし、墓地の植木はトラブルが多いため、お寺や霊園によっては禁止しているところもあります。
じつは、僕のいる寺では毎年のように、
といったクレームがあります。
お寺には昔ながらの広い墓地が多く、墓地内に植木をする人もいるんですよね。
でも、植物は生きているので、枝葉は伸びて、木の種類によっては葉も落ちます。
なので、墓地に植木をするからには、ちゃんと剪定をするなどの管理が必要です。
そして、それを少しでもサボるとすぐに隣の墓地の家からクレームが飛んできます。
僕は20年以上お坊さんをしていますが、墓地に植木をするのはデメリットが多すぎるのでヤメた方がいいと思っています。
もしも僕の家族が「ウチのお墓にちょっとした木を植えようと思うんだけど・・・。」なんて言い出したら、僕は全力で反対します。
それくらい『墓地の植木』というのはおすすめできないものなんです。
墓地に植木をするデメリット
僕は、『墓地の植木』に対してほぼデメリットしか感じていません。
墓地の植木を管理するためには、あなたの貴重な【時間・お金・労力】をたくさん使います。
でも、その割にはメリットが『最初だけの満足感』のみで、あとはデメリットしかありません。
デメリットの具体例をあげると、
- 墓地内の空きスペースが狭くなる
- 隣の墓地に迷惑がかかる
- 通路のジャマになる
- 手入れをするのが大変
- 墓石を傾けてしまう
- ハチが巣を作ってしまう
などです。
あなたが墓地に植木をして後悔をしないように、主なデメリットをできるだけ詳しくお伝えします。
墓地内の空きスペースが狭くなる
墓地に植木をすると墓地内の空きスペースが狭くなるというデメリットがあります。
一般的な墓地の場合、墓石が建っていない空きスペースは【墓地全体の3分の1程度】でしょう。
また、近年の墓地は小型化していますので、さらに空きスペースが少ないです。
そのわずかな場所に植木をするわけですから、墓地内の空きスペースがかなり狭くなります。
墓地内の空きスペースが少ないと、お墓参りのときに足の踏み場がないのはもちろん、
- 水桶などのお墓参り用具
- お墓の掃除用具
- 自分の荷物
などを置く場所もありません。
最初は木が小さいのでそんなに狭く感じませんが、木が育っていくと圧迫感が出てきますよ。
しかも、植木の葉にはクモの巣がついていたり、砂汚れもたくさんついているので、それらが服につかないよう注意しなくてはいけません。
そのため、植木のある墓地でお墓参りをしている人を見ると、やはり【きゅうくつ】そうですよ。
せっかくですから、ちゃんと空きスペースを作って【ゆったり】とお墓参りをしてもらいたいものです。
隣の墓地に迷惑がかかる
墓地に植木をすると、隣の墓地に迷惑がかかるのが大きなデメリットです。
植物はどんどん育っていくので、ちゃんと【剪定】をしなくちゃいけません。
グイグイ伸びていく枝葉をそのままにしてしまうと、あっという間に『隣の墓地』へ入ってしまいます。
それは、隣の墓地の人にとって【非常に迷惑】なことです。
隣の墓地の人からすれば、侵入してきた枝葉を勝手にバッサリと切るのも気が引けるんですよね。
それで、しばらくの間は何も言わずに、「早く気がついて枝を切ってくれないかなぁ。」と我慢をします。
なのに、いつまでたっても剪定をしてくれないので、とうとう枝葉よりも先に【堪忍袋の緒】が切れしまいます。
その結果、お寺や霊園の方にクレームが入ってくるわけです。
墓地の植木が引き起こすトラブルのほとんどは『隣への越境』です。
なので、植木をするなら【隣の墓地に迷惑をかけないようにする】というのは絶対条件となります。
春から夏にかけて枝葉はどんどん伸びますので、そのような時期は最低でも【1か月に1回】は植木の手入れをするようにしましょう。
【関連記事】:お墓参りには剪定(せんてい)ばさみを持って行こう!剪定ばさみの選び方も詳しく解説
通路のジャマになる
墓地に植木をすると通路のジャマになることが多いです。
植木の枝葉で迷惑をかけるのは【隣の墓地】だけではありません。
植木の枝葉は《通路》にもはみ出しますので【通路を歩く人】にとっても迷惑です。
そこを通る人もしばらくは我慢してくれますが、いずれお寺や霊園にクレームを入れることになります。
もしかすると、「じゃあ、隣にも通路にもはみ出さなきゃいいんじゃないの?」と思う人もいるでしょう。
たしかに、墓地内で収まっていれば、そんなには迷惑にならないかもしれません。
ただ、墓地の入り口(=通路側)に植木をする人が多いので、通路に枝葉が出ていなくても、前を通るときに【圧迫感】があるんですよね。
多くの人は、植木がある墓地の前を通るときに、植木に体や物が当たらないように注意します。
そうなるともう、植木は【ジャマ】なものなんですよね。
手入れをするのが大変
墓地に植木をすると手入れをするのが大変です。
植木は放っておくと必ず誰かに迷惑をかけるので定期的な手入れが必要です。
多くの草木は春あたりから新芽が出てきて、夏になる頃には枝葉がグイグイ育つため、植木を良い状態で保つには、
- 4月~6月頃に大まかな形作りをする【基本剪定】
- 8月~10月頃に形を整えるための【軽剪定】
をしなくてはいけません。
剪定をするのに適した時期はだいたい【暑い時期】ですから、体力的にもキツイんですよね。
あなたはまだ若いので少しくらい暑くても平気かもしれませんが、30年後も同じように平気でいられる自信がありますか?
ハチが巣を作ってしまう
墓地の植木にはハチが巣を作ってしまうことがよくあります。
お墓参りをしているときに、お墓の周りをハチが飛んでいたことはありませんか?
それはもしかすると、どこかの墓地の植木にハチが巣を作っているのかもしれません。
ハチの巣は、近寄るだけでも攻撃をされる可能性があります。
墓地の植木というのは、植木そのものがジャマになるだけではなく【ハチに攻撃される】という二次的な被害まであるので本当に迷惑です。
墓石を傾けてしまう
じつは、墓地の植木は墓石を傾けてしまうデメリットがあるんです。
植木をすると、枝葉が伸びるだけではなく、地中では【根】も伸びています。
根が伸びるチカラはすごくて、古い墓石や外柵(石製の囲い柵)くらいなら傾けてしまうんですよね。
木の根というのは柔らかい場所を張っていくので、石と石の接合部分などの【わずかな隙間】を通って根が太り、いずれ石を傾けてしまいます。
特に、『外柵(がいさく)』は植木の根によって動かされてしまうことが多いですよ。
僕のいる寺でも、植木の根が外柵の石を傾けてしまい、その石が今にも通路へ落ちそうな墓地がありました。
さすがに危険だったので【外柵の修繕】と【植木の撤去】をしてもらいました。
植木をすると、枝葉だけではなく【根】にも注意しなくてはいけないんですよね。
それでも墓地に植木をしたい場合
墓地に植木をすることのデメリットを紹介しましたが、それでも「ウチは植木をしたいんや!」という人もいるかもしれません。
どうしても墓地に植木をしたい場合は、それなりの責任と覚悟をもって『他の人へ迷惑をかけない』ように管理をしてください。
定期的にしっかりと手入れをする
どうしても墓地に植木をしたいのなら、定期的にしっかりと手入れをするようにしてください。
墓地の植木は法律で禁じられているわけではないので、お寺や霊園が許可をしているなら植木をしていいと思います。
しかし、それによって他の人へ迷惑をかけないように十分に注意し、必ず定期的に手入れをしてくださいね。
もしも、
- 隣の墓地に出ないようにする
- 通路に出ないようにする
- 通行人に【圧迫感】を与えない大きさに剪定する
- ハチが巣を作っていないか確認・対策をする
といった最低限のことができないのであれば植木はやめましょう。
お寺や霊園の規程や指示に従う
墓地に植木をするなら、お寺や霊園の規定や指示に従うことが条件です。
お寺や霊園には、墓地を使用するための『管理使用規程』が必ずあり、その中には【墓地の植木】に関する項目が入っている場合もあります。
規程というのは要するに【決まり事】なので、法律が変わったり、内容がそのときの社会状況に合わない場合には変更されることがあります。
なので、もしも植木に関する規定が変わったら、それに沿ってしっかりと対応をしてくださいね。
また、規程の中に記載されていなくても、植木に関してお寺や霊園からの指示があったら、それにもちゃんと対応をしましょう。
お寺や霊園による植木の撤去もある
もしもの話ですが、お寺や霊園の規程や指示に従わず、しかも他の人に迷惑をかけていた場合、その墓地の植木は強制的に撤去されるかもしれません。
お寺や霊園は【みんな】が気持ちよくお墓参りができるように規程を設けたり、時には指示をします。
それにもかかわらず、一部の人が身勝手な行動をとっていたら、お寺や霊園は、
- 墓地使用者の許可を得ることなく植木を剪定する
- 最悪の場合は完全に植木を撤去する
などの強い行動に出ることもあります。
植木をすることは自由ですが、墓地使用者の管理があまりにヒドい場合は【強制措置】がとられることもある、ということを知っておいてください。
『後の代の人たち』のこともよく考える
植木のように【永くそこにあるもの】を取り扱う場合には、自分のことだけではなく『後の代の人たち』のことも考えてくださいね。
植木は、木の種類にもよりますが、正しい管理をしていれば数十年くらいは生き続けます。
ですから、墓地に植木をすると『植木の管理』も数十年にわたり受け継がれることになります。
もしもあなたが一生懸命に墓地の植木の世話をしていたら、それを見ていたあなたの『後の代の人たち』も同じように世話をするかもしれません。
でも、それは喜んで世話をしているのではなく、「お父さんが大事にしてた木だから、簡単には切れないよねぇ・・・。」と、切りたくても切れないだけかもしれませんよ。
まとめ:墓地には植木をしない方がいい!
墓地に植木をすると、
- 墓地内のスペースが狭くなる
- 隣の墓地に迷惑がかかる
- 通路のジャマになる
- 手入れをするのが大変
- ハチが巣を作ってしまう
- 墓石を傾けてしまう
といったデメリットがあるのでヤメた方がいいです。
多くの人は、植木をしたことによって【最初だけの満足感】は得られますが、いずれ管理が大変になって、結局は後悔することになります。
だから、あなたが植木をしたいと考えているならヤメておきましょう。
もしも、もうすでに植木をしてしまっているというのなら、本来は墓地に植木なんて必要ありませんので【撤去】することをおすすめします。
僕は今まで、植木をしたことで管理が大変なだけでなく、隣の墓地の家とトラブルになった気の毒な人たちをたくさん見てきました。
この記事を読んでくれたあなたには同じような失敗をしてほしくありません。
なので、最後にもう1度言いますね、墓地には植木をしない方がいいですよ!