- お盆って何なの?
- お盆期間には何をするんだろう?
- お盆の風習について知りたい。
あなたは毎年のお盆をどのように過ごしていますか?
お盆休みに出かけるという人も多いでしょう。
しかし、じつは、お盆の期間はどこかへお出かけするのではなくご先祖様と一緒に家で過ごすものなんです。
この記事では、お坊さん歴20年以上の僕が、
- お盆の意味と由来
- お盆にすること
- お盆の供養
について解説しています。
お盆について他の人へ説明できるくらいの知識がつきますので最後まで読んでみてください。
お盆の意味や由来

一年のうちで、
- 7月13日~16日
- 8月13日~16日
は『お盆』と呼ばれる期間です。
お盆になると、多くの人は『お盆休暇』を取って、帰省したり、旅行へ出かけたり、あるいは自宅でゆっくり過ごしたりします。
しかし、お盆は休暇のためのものではありません。日本の仏教では、お盆になるとご先祖様が家に帰ってくると考えられています。
お盆の間は、家に仏様専用の棚を設けて供養をし、一緒にお盆の期間を過ごし、日頃の感謝をより近くでお伝えします。
ですから、本来ならお盆はご先祖様と一緒に家で過ごすものなんです。
お盆の意味
人が亡くなると、一般的にはお葬式を執り行います。
お葬式を終えた後、故人は仏様の世界(あの世)で『仏弟子』として修行に励むそうです。
あの世の修行は、今まで知らなかったことをたくさん学ぶことができて『とても楽しい』らしいですよ。
そうはいっても、休むことなくずっと修行を続けるのは大変なので、年に一度『修行のお休み期間』が設けられており、それが『お盆』です。
つまり、お盆というのは、ご先祖様にとって、年に一度、修行をお休みして家でゆっくりと過ごすための期間なんですよね。
ですから、お盆期間中は家でゆっくりと過ごしてもらい、リフレッシュしてもらいましょう。
そのために私たちは、ご先祖様のための『専用の席』をあらかじめ用意しておきます。
これを、『精霊棚(しょうりょうだな)』あるいは『盆棚(ぼんだな)』といいます。
お盆の期間は、精霊棚にいろんな飾り付けをして、お盆ならではのお供え物をし、ご先祖様をもてなします。
お盆の由来と歴史
お盆というものは、どのようにして始まり、いつから行われているものなのでしょうか?
ここからは、お盆の由来と歴史について紹介します。
お盆の由来
お盆の正式な名称は『盂蘭盆(うらぼん)』といいます。
この『盂蘭盆』は、インドの古い言葉であるサンスクリット語の【ウランバナ=逆さ吊り】という言葉が語源になっています。
なぜ【逆さ吊り】などという、いかにも苦しそうなものが語源になっているのでしょうか?
これは、『仏説盂蘭盆経』というお経の中にある、仏教を広められたお釈迦様と、その弟子である『目連尊者』とのやりとりが元になっています。
やりとりの内容は次のようなものです。
お釈迦様にはとても優秀な十人の弟子がおり、その中の一人に目連尊者という弟子がおられました。
目連尊者は、『神通力(じんつうりき)』という【あの世のことまで見通せる能力】がある方でした。
あるとき、目連尊者はすでに亡くなっていた自分の母親が今ごろあの世でどのように過ごしているのかが気になり、神通力であの世の母親の様子を見てみました。
すると、そこには母親が『餓鬼(がき)』という【飢えと喉の渇きの苦しみを受け続ける世界】に堕ちて、苦しみに満ちた顔で過ごしているではありませんか。
目連尊者は慌ててお釈迦様の元へ駆けつけ、神通力で見たものをすべて説明し、「何とか母を救い出す方法はないでしょうか!?」と助けを乞いました。
そんな目連尊者を見たおシャカ様は、
「わかった。では、7月15日に【安居(あんご)=定められた修行期間】を終えた多くの僧侶達に食事を振る舞って供養をしなさい。その供養によってお前が積んだ功徳を、餓鬼の世界にいる母親を始め、苦しみを受けている多くの者へ回し向けなさい。そうすれば、お前の母親は必ず餓鬼の世界を離れられるだろう。」
とおっしゃいました。
目連尊者はこの教えを忠実に実践し、その後もう一度神通力であの世を見てみました。
すると、目連尊者の母親は無事に餓鬼の世界を離れて、仏様の世界でとても穏やかな顔で過ごしているのが見えました。
以上のような話が、ご先祖様に対して感謝の気持ちを伝え、心を込めて供養をする『お盆』の行事として今日まで続いているのです。
お盆の歴史
では、お盆という行事が日本で行われ始めたのは一体いつ頃からなのでしょうか?
日本でお盆が行われ始めたのは、最古の記録として、推古天皇の時代(606年)であるといわれています。
つまり、今から約1,400年も前からお盆の行事はあったんですね。
亡くなった人を敬い、ご先祖様に感謝をするという気持ちは、ずっと昔の人たちから現在の私たちにまで脈々と受け継がれています。
お盆供養やお墓参りをするのは、長い歴史を受け継いで、後の人たちへと引き継ぐことでもあるわけですね。
お盆の期間
全国的に行われているお盆は8月が多く、これを一般的には『8月盆』と呼んでいます。
しかし、東京などの一部の地域には、7月にお盆を行う『7月盆』もあります。
同じお盆でありながら、なぜこのような差があるのでしょうか?
7月盆と8月盆の違い
お盆には『7月盆』と『8月盆』がありますが、どちらもやる事は全く同じです。
どちらも、お墓参りをしたり、お盆供養をするなど、お盆を過ごすときの内容に違いは一切ありません。
お盆の始まりとなったのは、目連尊者が多くの僧侶へ食事を振る舞い供養をした7月15日ですから、お盆の供養は7月15日にするのが本来なんですよね。
実際に、昔はちゃんと7月15日にお盆供養を営んでいました。
しかし、明治期を境に日本では【新暦】を使用するようになり、これによって、旧暦の7月15日(本来の時期)と新暦の7月15日とでは約1ヶ月のズレが出てしまいました。
『7月15日』という《日付》を重要視して、そのまま新暦に当てはめてお盆を執り行っているのが【7月盆】です。
そして、旧暦の7月はだいたい新暦の8月くらいの時期に相当するので、《時期》を重要視してお盆を執り行うのが【8月盆】です。
また、旧暦における本来の7月15日を正確に計測して現在の新暦に当てはめてお盆を迎えている地域があります。
それは、沖縄です。
旧暦による日数の数え方であるため、7月15日に相当する日が新暦だと毎年変わってしまいます。
ですから、沖縄では毎年【お盆の日付が変わる】ということになり、これを『旧盆』と呼んでいます。
お盆と終戦記念日とは無関係
全国的に行われる『8月盆』は8月15日ですが、これは『終戦記念日』と同じ日となります。
たくさんの戦没者を慰霊する終戦記念日と同じ日に、ご先祖様のお盆供養をします。
どちらも『すでに他界された人』を偲び供養をする日ですが、お盆と終戦記念日が同じ日であることに何か関係があるのでしょうか?
じつは、お盆と終戦記念日は無関係です。偶然同じ日になっているだけです。
お盆供養は本来7月15日に行うものですが、それを新暦に当てはめることによって、現在では多くの地域で8月15日にお盆供養を行います。
一方の終戦記念日は、天皇陛下が日本国民に向けて日本が降伏したことを伝えた日です。
ですから、同じ8月15日ではありますが、まったく別ものです。
お盆期間にすること

お盆の供養と聞いて多くの人がイメージするのは、《お坊さんにお経をあげてもらうこと》ではないでしょうか?
もちろん、お坊さんにお経をあげてもらうのは立派なお盆の供養です。
しかし、他にもやることがあります。
それは、ご先祖様がくつろげる席をちゃんと用意して、心を込めてもてなすことです。もしかすると、お経よりもこちらの方が大事かもしれません。
お盆には、
- ご先祖様が自宅に帰ってこられる際には、家族みんなで【お迎え】をする。
- お盆中はできるだけご先祖様と一緒に過ごし、心を込めてもてなす。
- お盆最終日には、家族みんなでご先祖様を【お見送り】をする。
これらをちゃんとやることが、ご先祖様の一番喜ぶお盆の過ごし方だと思います。
では、ご先祖様をもてなすために具体的に何をすればいいのでしょうか?
一般的には、
- 精霊棚(お盆飾り)の設置
- 迎え火と送り火
などをします。
精霊棚(お盆飾り)を作る
先ほども言いましたが、お盆になると自宅にお帰りになったご先祖様のために『精霊棚(しょうりょうだな)』または『盆棚(ぼんだな)』という仏様専用の席を作ります。
ご先祖様にゆっくりと休んでいただくための席なので、季節の物をお供えするなどして丁重に心を込めておもてなしをしましょう。
位牌は仏壇から出して精霊棚へ移す
精霊棚を設けるときの注意点があります。
それは、ちゃんと仏壇から位牌を出すということです。
まず、精霊棚とは、仏壇の中に設けるのではなく、テーブルなどの上に飾り付けるものです。
この精霊棚を仏壇と切り離して別の場所に設けるということが大事なのです。
そして、用意したテーブルの上には『まこも』というゴザのようなものを敷きます。
次に、仏壇の中に安置されている位牌を取り出し、『まこも』に乗せて祀ります。
位牌が複数ある場合は、すべての位牌を仏壇から取り出して、まこもの中央部から両端へと【古い仏様の順】に祀るようにしましょう。
また、位牌が2つある場合は、向かって右側に古い仏様の位牌を置き、反対の左側には新しい仏様の位牌を置くとよいでしょう。
仏様の配置の決まり事として、
- 最上位(または最優先)の仏様は【真ん中】
- 2番目の仏様は、最上位の仏様の【右側】
- 3番目の仏様は、最上位の仏様の【左側】
- 4番目の仏様は、2番目の仏様の【右側】
- 5番目の仏様は、3番目の仏様の【左側】
というように、仏様の優先順位が下るにつれて中央部から両端側へと置き場所が変わっていきます。
他のお供物・花・ローソク・お鈴などは、用意したテーブルの『まこも』以外の場所に置いてください。
このようにして、精霊棚を設けていくわけですが、なぜ『位牌を仏壇から取り出す』のでしょうか?
その理由は、ご先祖様にリラックスをしてもらうためです。
仏壇の中には本尊様がおられ、その空間は『仏様の世界(=あの世)』を表現しています。
つまり、少し大げさかもしれませんが、仏壇の中は『仏様の世界=あの世』と同じなんですよね。
位牌はご先祖様が宿ることができる場所で、お盆にあの世から帰ってこられると、それぞれの位牌へ宿り、ゆっくりと身体を休められます。
位牌を仏壇から出すのは、修行をお休みして帰ってきたご先祖様を、ちゃんとあの世から切り離してあげるためです。
位牌を仏壇の中に入れておくと、帰ってきたご先祖様はせっかく自宅にいるのに休んだ気分になりません。
【あの世と同じ空間】である仏壇の中に位牌があると、ご先祖様としては《せっかく自宅に帰ってきてるのに、あの世にいるような気分》になってしまうでしょう。
というわけで、仏壇とは別の場所へ精霊棚を設け、しっかりとあの世と切り離してあげて、ご先祖様にはゆっくりと過ごしていただきましょう。
精霊馬と精霊牛
お盆ならではの飾りつけとして、
- 精霊馬(しょうりょううま)
- 精霊牛(しょうりょううし)
が代表的なものだと思います。
精霊馬とは、キュウリに【折った割り箸】などを4本刺して、馬のような形にしたもののことです。
精霊牛とは、ナスに【折った割り箸】などを4本刺して、牛のような形にしたもののことです。
これらは多くの地域でお供えされているのですが、あなたも見たことがありませんか?
この精霊馬と精霊牛は、『ご先祖様があの世とこの世を往来するときに乗る動物』であるといわれています。
ご先祖様は、この世の自宅まで帰って来るときには、なるべく早くお帰りになるために精霊馬に乗ります。
逆に、再びあの世へお戻りになるときには、精霊牛に乗ってたくさんのお土産などを提げながらゆっくりと戻って行かれます。
精霊馬と精霊牛の作り方は同じです。
作り方は、
- キュウリを一つ用意する
- 折った割り箸などを4つ用意する
- 折った割り箸などを、《馬の【脚】》のように見立てて刺す
- ナスを一つ用意する
- 折った割り箸などを4つ用意する
- 折った割り箸などを、《牛の【脚】》のように見立てて刺す
と、このようにとても簡単です。
このときのコツは、
- ほとんどのキュウリやナスは少し曲がっていますので、上向きに反るようにして持ち、反っている方と逆側へ折った割り箸などを刺して【脚】の部分を作っていく。
- ナスはヘタの部分を【牛の頭】に見立てて作る。
- 割り箸などを折る時の長さ(脚の部分の長さ)は、キュウリやナスの【全長の3分の1】くらいにする。
- 割り箸などを刺す場所は、キュウリやナスの全長の【3分の1と3分の2に相当する場所】を目安にする。※例えば、長さ30cmのキュウリの場合、端から10cm付近に2本の脚を作り、次に端から20cm付近に残りの2本の脚を作る。
ということです。
このようにすると、スッと背筋を伸ばしたバランスの良い精霊馬と精霊牛が出来上がりますよ。
精霊馬と精霊牛は、お盆が始まる当日(7月13日または8月13日)の朝には作っておきましょう。
特に精霊馬は、お盆が始まって【ご先祖様をお迎えに行く前】に作っておくのが基本です。精霊馬が用意されていないと、ご先祖様がなかなか帰ってこられません。
ちなみに、ご先祖様は大勢いらっしゃっても、精霊馬と精霊牛は1つずつ作っておけば問題ありません。
精霊棚(お盆飾り)の処分方法
お盆が終わったら精霊棚を片付けます。
このときに、
- まこも
- 精霊馬と精霊牛
- その他のお盆飾りやお供物
などをどのようにして処分すればよいか迷いますよね?
お盆飾りは、基本的に一般可燃物と一緒に処分をしてもかまいません。半紙など白い紙に包んで処分してしまって大丈夫です。
とはいえ、やはり「仏様に関するものを普通の可燃物と一緒に処分するのは気が引ける」という人は多いんですよね。
なので、もしも自分で処分することに抵抗がある場合は、お寺や霊園で『お焚き上げ』をしてもらいましょう。
ただし、すべてのお寺や霊園で『お焚き上げ』をしてもらえるとは限りませんので、必ず事前に確認をした方がいいですよ。
また、場合によっては【お焚き上げ料】が必要となることもありますので、その点についても確認をしておいてください。
迎え火と送り火
お盆にあの世から帰ってくるご先祖様は、まずお墓へ向かわれるそうです。
直接自宅まで帰ってくるわけではないので、私たちは、お盆の始まりの日にはお墓へ【お迎え】に行き、お盆が終わればお墓へ【見送り】に行くのです。
このお盆の独特の作法ですが、
- お迎えのことを『迎え火(むかえび)』
- 見送りのことを『送り火(おくりび)』
といいます。
この迎え火と送り火の時には、手持ち用の提灯(ちょうちん)とローソクが必要となります。
迎え火
お盆が始まる日(7月13日または8月13日)の朝には、ご先祖様をお迎えに行く『迎え火』をします。
迎え火をするために用意する物は、
- 手持ち用の提灯
- ローソク
- ライター
- お花
- お線香
です。
ご先祖様を自宅までお連れするときの手順は、
- まずは普段どおりのお墓参りをする
- お墓の前で火を焚く(=ライターで点火)
- その火でローソクに火を灯す
- 火を灯したローソクを提灯に移す
- 提灯に移したローソクの火を消さないように帰宅する
- 持ち帰った火を、精霊棚のローソクに移す
という具合です。
しかし、これは基本的な手順で、迎え火の作法は地域によって違いがあると思いますので、その地域の作法に従って執り行ってください。
なお、一度自宅の精霊棚に火を移したら、もうそれでお迎えは完了しているので、お盆期間中ずっとローソクの火をつけっ放しにする必要はないですよ。
また、迎え火の途中で、風が吹いて提灯の火が消えてしまうことがありますが、すぐその場でライターなどで火をつけ直せばそれで大丈夫です。
ときどき、お墓に戻って火をつけ直す人もいますが、そこまでする必要はありません。
車で迎え火をする場合は、お墓の前で提灯に火を移し、帰宅する際には乗車時に一度火を消して、降車時に再び火をつけ直してください。
送り火
お盆の最終日(7月16日または8月16日)の夕方には、仏様達を見送りに行く【送り火】をします。
送り火は、基本的には迎え火と逆のことをすればよく、用意するものも同じです。
仏様達を見送るときの手順は、
- 精霊棚のローソクの火を、手持ち用の提灯に移す。
- 提灯に移したローソクの火を消さないようにお墓の前まで運ぶ。
- お墓の前で提灯の火を消す。
- 普段どおりのお墓参りをする。
という具合です。
お盆期間をゆっくりと過ごされたご先祖様は、名残惜しみながらも再びあの世へと戻っていかれます。
お盆供養をする

お盆になると、自宅に帰ってこられたご先祖様のために『お盆供養』をします。
お盆供養は、あなたが普段お付き合いをしているお寺のお坊さんにしてもらってください。
お盆供養には、
- 通常のお盆供養
- 新盆供養
の2つがあり、家ごとにその年の状況に合わせてどちらかのお盆供養をすることになります。
また、お盆供養は、お寺の本堂で行うケースと自宅で行うケースがありますので、事前にお坊さんに確認をしておきましょう。
通常のお盆供養
【前年の6月25日以前】または【本年の6月26日以降】に家族が亡くなっている場合は『通常のお盆供養』をします。
ほとんどの場合は、お寺の方からお盆供養のお知らせが来ますので、それから供養を申し込めば大丈夫ですよ。
多くの場合、お盆供養は【お寺の本堂】で行われるので、法要に参列して、その後は塔婆などを受け取ってからお墓参りをします。
新盆供養
人が亡くなって初めて迎えるお盆のことを『新盆』といいます。
『新盆』の読み方は【にいぼん】【しんぼん】【あらぼん】などです。
新盆となる条件は、【亡くなってから初めてお盆を迎える】ということの他に、お盆を迎える段階で【亡くなってから49日を過ぎている】ことが条件です。
亡くなった人はすぐにあの世へ旅立つわけではなく、亡くなってから【49日間】は故人の魂がまだこの世に残っているそうです。これを『中陰(ちゅういん)』または『中有(ちゅうう)』といいます。
お盆は、【あの世】の修行をお休みして自宅に帰ってこられる期間ですから、お盆の期間中にまだこの世にいる故人は、その年のお盆は新盆とはならず、翌年のお盆が新盆となります。
お寺で新盆供養(法要)をしてもらう
お盆になると、ほとんどのお寺ではお盆供養(法要)が執り行われ、このときに新盆供養(法要)も一緒に執り行うことが多いです。
お盆供養(新盆供養を含む)は、お寺によって執り行われる日が違いますので、あなたの菩提寺または最寄りのお寺へ確認をしてみてください。
気になる新盆供養のお布施の目安ですが、だいたい『3万円~5万円』です。しかし、これはあくまでも【目安】なので、事前にお寺へ確認をしておきましょう。
お盆供養の形式はお寺によって異なりますが、お盆供養は【合同形式】で執り行うことが多いようです。
合同形式のお盆供養では、各家がそれぞれに親戚などを招くことができないので、親戚に予めその旨を伝えておくとよいでしょう。
ちなみに、新盆供養をする際には、新盆の『塔婆』を建てることをおすすめします。
当たり前ですが、故人にとって【新盆は一度きり】です。じつは、塔婆を建てることで故人に対する【最高レベルの供養】ができるのです。
塔婆については『塔婆(卒塔婆)って何なの?塔婆の意味と必要性を説明します』の記事で詳しく解説をしていますので読んでみてください。
自宅で新盆供養(法要)をしてもらう
お寺によっては自宅で新盆供養をしている場合もあります。
自宅で新盆供養ができる場合は、希望の法要日を事前に予約して、準備すべき事を前もって確認しておきましょう。
また、自宅の場合、お坊さんが【車】で来ることを想定し、お坊さんの車を停めておける場所を確保しておいてください。
自宅での新盆供養は、お寺の合同形式とは違って親戚を招くことができるので、多くの方々で故人の初めてのお盆を迎えてあげましょう。
施餓鬼(せがき)供養
お盆供養を執り行う際には、『施餓鬼(せがき)供養』を同時に執り行っているお寺も多いです。
そのため、信者さんの中には【お盆供養と施餓鬼供養は同じもの】と認識している人も多いです。
施餓鬼とは、字のごとく【餓鬼】に【施す】ことです。
餓鬼というのは、いつも【飢え】と【喉の渇き】の苦しみを受け続けている者をいいます。
この餓鬼達に、食べ物や飲み物を施すことによって、餓鬼を救い出してあげるのが『施餓鬼供養』です。
なので、施餓鬼供養は【餓鬼に飲食を施す】ための供養であり、ご先祖様の供養とは関係ありません。また、施餓鬼供養はお盆のように決まった時期だけではなく、いつでも行えます。
では、なぜお盆供養と本来は関係のない施餓鬼供養を一緒に執り行うことが多いのでしょうか?
じつは、お盆も施餓鬼も『餓鬼の世界で苦しむ者を救い出す』という部分が共通しているから一緒に執り行うのです。
お盆は、目連尊者の母親が餓鬼の世界で苦しんでいるのを救い出したことが始まりです。
そして施餓鬼は、目連尊者の母親と同じように餓鬼の世界で苦しむ者を救い出すための供養ですが、普段はあまり大々的に行われるものではありません。
しかし、どちらも苦しむ者を救い出すための重要な供養なので、【餓鬼】という共通点あるお盆に一緒に供養しよう、ということになったのです。
お盆にまつわる風習

お盆に執り行われるのは『法要』だけではなく、他にもお盆にまつわる風習があります。
盆踊り
お盆の行事で代表的なものに『盆踊り』があります。
お祭りなどで、会場の中央に設けられた櫓(やぐら)を囲んで参加者みんなで踊ります。
盆踊りは《踊る》ことによってご先祖様の供養をしているのです。
盆踊りの由来は、平安時代に活躍したお坊さんである『空也上人(くうやしょうにん)』の【踊り念仏】が元になっている、とされています。
空也上人は、ひょうたんを叩きながらリズムよく念仏をお唱えし、人々はこれを真似て同じようにリズムよく念仏をお唱えしました。
そして、リズムのよい念仏に更に《踊り》が加わったのが【踊り念仏】です。
踊り念仏は、やがてお盆供養と結びつき、『盆踊り』になったといわれています。
これを鎌倉時代に活躍したお坊さんである『一遍小人(いっぺんしょうにん)』が全国的に広め、現在ではお盆になると各地で盆踊りの行事が催されるようになりました。
お盆の間は海に入ってはいけないの?
あなたは『お盆の間は海に入ってはいけない』という言い伝えを聞いたことがありませんか?
夏は海開きもされており、せっかく海水浴にピッタリな時期なのに、なぜお盆の間は海に入ってはいけないのでしょう?
『水辺には死者の霊が集まる』という言い伝え
昔から、『水辺には死者の霊が集まる』といわれます。
ここでいう『死者の霊』とは【誰からも供養を受けていない者の霊】という意味です。
なぜ、そのような霊は水辺に集まるのか?
人が亡くなると『末期の水(まつごのみず)』で故人の口を潤してあげます。
末期の水は、お釈迦様がいよいよ最期を迎えられるときに、喉の渇きを潤してもらうために浄水を差し出されたことが由来とされています。
また、故人に水を与えることによって「生き返ってもらいたい」という家族の願いが込められています。
末期の水には、残された家族の【故人の冥福を祈る気持ち】や【故人に対する感謝の気持ち】といった、故人を供養する気持ちが込められているのです。
しかし、誰からも供養を受けていない者の霊は、末期の水を口にしていません。
そのため、供養の象徴である水を求めて霊が水辺に集まってくるのだそうです。
しかしながら、水を目の前にしても自分の力ではそれを口にすることができず、そのまま水辺をひたすら漂い続けてしまうのです。
そして、そのような霊の中には、水辺に来た人を自分と同じところへ引きづり込もうとする霊もいるとのこと。
お盆のように暑い真夏の時期は、涼むために海へ行って泳ぐ機会も増えます。
そうすると、悪い霊に出会い海中へ引きづり込まれてしまう可能性も高くなってしまいます。
それで、『お盆の間は海へ入ってはいけない』と言われているのです。
水難事故が多い
お盆の間に海へ入ってはいけない理由が『死者の霊が集まっているから』というのは、ハッキリ言って【迷信】です。
実際の理由は、
- クラゲが多く発生する時期
- 台風などによる高波が多い
- 離岸流が多い
- 水草や藻などが多く生えており、足をとられたり滑ってしまう
といったように、お盆は【海での事故が多発する時期】だからだと思います。
クラゲは一年を通して海にいるものですが、お盆はクラゲの成長が特に進む時期です。
クラゲって接近していても気づきにくいですよね?あなたも、海で泳いでいたらいつの間にかクラゲがすぐ目の前にいた経験はありませんか?それで知らぬ間に触ってしまい、刺されてしまうんですよね。
また、お盆の時期は【波の高さ】にも注意が必要です。
お盆の頃は海水温度も上がり、それが原因で台風が発生しやすい時期です。沖合で台風が発生すると高波を引き起こし、それが海岸まで届きます。
水の力をバカにしてはいけませんよ。ヒザくらいの高さでも流れが速ければ、簡単に足を持っていかれます。波が高くなれば、それだけ流れも速くて力も強くなります。
あと、海の場合は【波の流れ】にも要注意です。
海岸に打ち付けられた波は、再び沖へと引いて流れていきます。
この沖へと引いて流れるスピードが局地的に速くなる場所があり、これを『離岸流(りがんりゅう)』といいます。この離岸流に入ってしまうと、岸に向かってどんなに一生懸命泳いでも、どんどん沖へと流されてしまいます。
流されるときの感覚としては『沖に引きづり込まれる』ようなカンジなのだそうです。そして、この離岸流が原因で毎年のように水難事故が起きています。
そして、夏の海は海中にはたくさんの【水草】が生えていますが、時にはこの水草に足を取られてしまうことがあります。
また、藻などもたくさん生えているので、うかつに岩や石に足をかけると滑ってしまいます。
このように、『お盆の間は海へ入ってはいけない』と言われているのは水難事故の可能性が高くなるから、という理由でしょう。
お盆玉
新年を迎えると、親戚同士で集まり、子ども達は『お年玉』という名の【おこづかい】があります。
そして、最近では、お年玉ならぬ『お盆玉(おぼんだま)』というものがあるそうです。
お盆には親戚同士が集まり、正月のときと同じような状況となりますので、そこでまた【おこづかい】を子ども達にあげるということなのでしょう。
とはいえ、年に2回も【おこづかい】をあげる側だって大変ですよね。
せっかくなので、子ども達には【おこづかい】をあげるだけではなく、【ご先祖様のありがたさ】も教えてあげてくださいね。
例えば、
「いっぱいお盆玉がもらえてよかったね。ほら見てごらん、これだけたくさんの親戚の人達がいるから君はいっぱいお盆玉をもらえたんだよ。今ここにみんながいるのは、ご先祖様がいてくれたおかげだから、ご先祖様にも『ありがとう』を言おうね。」
みたいなカンジで教えてあげてください。
お盆とお彼岸はまったく別物

たまに信者さんから「お盆にお墓参りをしたので、翌月の【秋のお彼岸】にはお墓参りをしなくてもいいんですよね?」という質問をされます。
いいえ、【お盆】と【お彼岸】はまったく別物なので、それぞれにお墓参りをしてください。
今まで説明してきたように、お盆のお墓参りは【仏様達を自宅にお連れしたり、お見送りする】ためのものです。
一方で、お彼岸のお墓参りは【あなた自身の仏道修行】のためのものです。
同じお墓参りをしているようですが、その意味がまったく違います。
ですから、お盆と秋の彼岸は近い時期にあっても、それぞれにちゃんとお墓参りをしましょう。
お彼岸については『彼岸にお墓参りをする理由。彼岸の意味と過ごし方をお坊さんが解説』の記事で詳しく解説していますので、興味のある方は読んでみてください。
まとめ:お盆についてちゃんと知った上で供養をしましょう
お盆は私たちが休暇をとるためのものではありません。
お盆は、あなたの家のご先祖様と一緒に過ごすための期間です。
お盆になると、ご先祖様が【あの世の修行を一旦お休みするため】に自宅へ帰ってこられますので、精霊棚を設け、いろんなお供え物をして【おもてなし】をします。
つまり、帰ってこられるご先祖様と一緒に過ごすために、私たちは仕事をお休みするので、本来なら外出するべきではないのです。
お盆はできるだけ家にいて、ご先祖様の位牌に話しかけたり、同じ食事を供えたり、かつてと同じように接することが『良いお盆供養』となります。
とはいえ、あなただって休暇を楽しみたいですよね。
なので、お盆期間に外出をしたら、その日の出来事をちゃんとご先祖様に話してあげてくださいね。
※お盆のお墓参りで忘れ物をしないようにご注意ください。