お坊さん歴20年以上の未熟僧と申します。
- お葬式や法事で納める【お布施の相場】が知りたい。
- とにかく【お布施を値切る方法】が知りたい。
お坊さんに渡す『お布施』の金額って高すぎると思いませんか?
お葬式の場合なんて、わずか1時間程度で数十万円は持って行かれます。
そんな高すぎる『お布施』をもっと安くしたいですよね。
先に結論を言うと、お布施は適切に交渉すれば値下げしてもらえます。
あなたとお寺がお互いに納得できる範囲であれば交渉は十分に可能なんです。
この記事では、
- お布施の金額の相場
- お布施を値切る方法
- お布施の値引き交渉のコツと注意点
を紹介しています。
少しでもあなたの負担が減って、なおかつ、お寺との関係を良好に保つために最後まで読んでみてください。
お坊さんの心理を利用した方法なのでご参考にどうぞ。
お布施とは
お葬式や法事のときにお坊さんへ渡している『お布施』ですが、そもそも『お布施』とは何なのでしょう?
『お布施』には、
- 【物質的な施し】:金銭や物
- 【知識・精神的な施し】:説法や援助などの行為
この2つがありますが、多くの人が連想する『お布施』は【物質的な施し】の方でしょう。
とても大事なことですが、『布施』とは【自発的なもの】であることが前提です。
つまり、本来ならお布施の金額はあなたが決めていいものなんですよね。
なので、素晴らしい信念をお持ちのご住職は「お布施は【お気持ち】で構いませんよ。」と言って、あえて金額を決めていません。
でも、多くの人は、
いくら【お気持ち】とはいえ相場の金額くらいは払わないとマズイよな・・・。
と思うものなんですよね。
実際にあった話ですが、ある人が本当に【お気持ちの金額】でお布施を納めたところ、お寺から「もう少し多く納めてもらえませんか?」と言われたそうです。
そう、まさかの『お布施の追加請求』をされたんです。
後になって追加請求するくらいなら、最初から正直に『目安にしてほしい金額』を伝えておくべきですよ。
まるで、
「今日の夕飯は何を食べたい?」と聞いたら、
「あぁ、別に何でもイイよ♪」って答えたから、
「じゃあ、ラーメンでも食べに行こうか。」と提案したら、
「え~、ラーメン?今はなんか麺って気分じゃないんだよねぇ。」と言われたようなカンジです。
正直、かなりイラッとします。
ですから、僕のいる寺では「あくまで目安ですけれども・・・」という前置きをしてから、納めてもらいたい金額を正直にお伝えしています。
たぶん、ほとんどのお寺が同じように『目安となる金額』をお伝えしているのではないでしょうか。
お布施の金額の相場
お寺から追加請求されないためにも、事前に【お布施の金額の相場】を知っておくのがよいと思いますので紹介をしておきます。
ただし、紹介するのはあくまで【一般的なお布施の相場の金額】です。インターネットの僧侶派遣の広告に掲載されているような【破格な金額】は比較対象にはしていません。
アレを比較対象に盛り込んでいたら、ほとんどのお寺は潰れますのでカンベンしてください。
あと、相場の中でも地域によって大きな差があるということを予めご了承ください。
この記事では全国平均の相場で話をしていきますね。
お葬式のお布施の相場
まずは、【お葬式】のお布施の相場について紹介します。
仏式でお葬式をする場合は、基本的には故人に【戒名】を授けます。
この戒名がクセ者なんですが、戒名にはいくつかの『位(=ランク)』があります。
そして、故人に授ける戒名の位(ランク)によって納める金額が全然違うのです。いわゆる『戒名料』が違ってくるわけですね。
【数十万円】という単位で違います。
そのため、同じお葬式を執り行うにしてもお布施の金額に大きな差が出てしまうんです。
ということで、ここでは【比較的安めの戒名】を授けた前提で話を進めます。
従来のやり方である『お通夜+お葬式』という2日間で執り行う場合の【お布施】の相場は、
30万円~50万円
です。
そして、一部の地域で急増している『一日葬=お通夜無し』の場合の相場であれば、
25万円~40万円
です。
お葬式は、故人と最後のお別れをし、故人を仏様の世界へ送り出す大切な儀式です。
とても大きな出費になってしまいますが、故人にとって最後の晴れ舞台ですから、念のため50万円くらいを考えておいた方が良さそうですね。
法事のお布施の相場
次は、【法事】のお布施の相場です。
法事のお布施は、お葬式のときとは違い、数万円程度を納めることがほとんどです。
たまに信者さんから、
亡くなってから年数が経つほどお布施は安くなりますか?
という質問をされます。
これは、例えば、
一周忌のお布施が5万円だったとしたら、十三回忌くらいになると3万円程度になるのか?
という意味の質問です。
たぶん、どこのお寺でも【年数が経つほどお布施の金額が減る】ということはないと思いますよ。
おそらく、多くのお寺は毎回同じ金額を納めてもらうようにしているはずです。
そして、法事の金額の相場は、
3万円~5万円
です。
法事をするのは数年に一度です。
すみませんが、法事の場合は、できるだけこの相場の範囲くらいでお布施を納めてもらえませんか?
お布施を値切る方法と注意点
お布施の相場はお分かりいただけたと思いますが、問題は『相場より安くするにはどうしたらいいのか』ということですよね。
お布施を値切るときは、最初からあなたとお寺の《妥協点》となる金額で交渉してください。
あなたの希望ばかりを通そうとしてはいけませんよ。
最初から【適度な値引きの金額】で交渉した方が、あなたもお寺もお互いに気持ちよく折り合えると思いますよ。
では、【適切な値引きの金額】とは具体的にどのくらいなのでしょう?
最大『20%OFF』を目安にして交渉する
何か物を買うときは、その物によって原価が違うので値引きできる金額にも限度があります。
でも、お布施の場合は原価なんてない、つまり値引きの限度もありません。
しかも、本来ならお布施の金額を決めるのはあなたなのです。
もしかして今、「よっしゃ、それじゃあガンガン値切ってやろうじゃないの!」みたいに思いましたか?
でも、先ほどの家電量販店の例と同じで、お寺から提示された金額の目安に対して、あまり大きな値引きを要求しない方がいいと思うんですよ。
お寺だって頑固に「絶対にこの金額を納めてください。」とは言わないものです。一定の金額の目安を提示をした上で、ちゃんと臨機応変に対応してくれますよ。
それなのに、最初から「とにかく半値まで下げてください。」とか言ってしまうと、その時点で住職さんの気分を害します。
では、適度な値引きの金額はどれくらいなのでしょうか?
僕の経験から言うと、お寺から提示された金額に対して最大【20%OFF】までが値引きの妥協点ではないかと思います。
これ以上の値引きの要求は、その後のお寺との関係悪化が心配です。
お寺としても、20%くらいまでの減収であれば、上手くやりくりすれば何とかなります。しかし、それ以上となるとお寺の経営に支障が・・・。
世間では《坊主丸もうけ》なんていう言葉もありますが、実際はそんことないんですよ。
じつは、お寺全体の約7割がシビアな経営を強いられている状況なんですが、こういうところは認知されていないんですよね。
ですから、住職さん達は、信者(檀家)さんの負担と寺の維持の両方を考えて、ギリギリまで抑えた金額の目安を提示しています。
なので、20%OFFくらいでお互いに手を打った方が無難ですよ。
お葬式で50万円と提示されたら40万円、法事で5万円と提示されたら4万円、というように交渉してみてください。
そして、これくらいでどうか許してください。
【安くしてくれて当たり前】という態度は厳禁
何度も言いますが、お布施の金額は本来ならあなたが決めるものです。
とはいえ、「お布施なんだから、こちらの言い値でやってくれ。」というような【安くしてくれて当たり前】の態度は絶対にヤメましょう。
お坊さんもわかってるんですよね、施主の方が正しいことを言っているのは。
でも、お寺側も維持費を確保するのが大変なんです。たくさんの信者(檀家)さんのお墓を守る責任がありますのでね。
それで、申し訳なく思いながらも、やむを得ず金額の目安を提示しています。
そこへ『安くしてくれて当たり前でしょ?』という態度を見ると、お坊さんだって人間であり感情もあるので、カチンときますし、優しくもなれません。
なので、交渉時のコツは、あなたは嫌かもしれませんが、【ご迷惑をおかけして申し訳ない】という態度で臨むことです。
もちろん『申し訳ないフリ』でかまいませんよ。
ここで、交渉時の文言を考えてみました。
故人は生前からこちらの住職さんのお経がとても好きでした。
そして、故人はいつも「自分のお葬式のときには、ぜひ住職さんにお経を読んでもらいたい」と言っておりました。
今回、故人の願いを叶えてやりたいと思っています。
しかし、今の我が家は◯◯な状況なので、大変申し訳ありませんが▲▲万円を納めたいと考えております。
どうかそれで故人の願いを叶えてやってもらえないでしょうか?
こんなカンジで言われると、お坊さんは「よしっ、わかりました」となります。
ポイントは【こちらの住職さんのお経がとても好きでした】の部分です。
お坊さんといえば『読経をする人(仕事)』というイメージがありませんか?
じつは、それはお坊さんにとっても同じです。
お坊さんにとって『読経』というものは、『自分自身』そのものなんです。
ですから、読経を認めてもらえたり褒めてもらえると、じつはメチャクチャ嬉しいので、交渉をするときにそこを責めない手はないのです。
少しだけ《おだてて》あげてください、成功率はかなり上がるはずですから。
以上を念頭に置き、できるだけ具体的な理由(経済的な事情・故人の強い遺志など)を付け加えて交渉してみてください。
相場より高ければそれを指摘する
お寺から提示されたお布施の金額の目安が『明らかに相場よりも高額』である場合もあります。
そんな場合はちゃんと値引き交渉をしましょう。
しかし残念ながら、もともと相場よりも高額なものを相場以下の水準まで値引きすることは非常に困難です。
ですから、ここでは【相場の金額くらいまで値引きをする方法】を紹介します。
まず、お寺のある地域(都道府県レベルでOKです)のお布施の相場を調べます。さらに、もっとお寺の近くの地域の相場を調べられると最高ですね♪
そして、お寺から提示された金額が明らかに相場よりも高額である場合は、住職さんに【相場よりも高い理由】を尋ねてみてください。
これはかなり勇気が必要ですが、大事なことなんです。
それで、あなたが納得できるような理由が返ってくれば、そのまま提示された金額で納めるか、先ほどの20%OFFの方法へ移行です。
反対に、「ウチは昔からこの金額で・・」とか「他のみなさんにも同じように納めてもらってますので・・」のように納得できる理由がない場合は、
我が家はこちらのお寺様と今後も末永くお付き合いをさせていただきたいと思っております。
しかし、恥ずかしながら我が家は今◯◯な状況なので、こちら近辺の相場である▲▲万円ほどでお願いしたいと考えております。
大変失礼かとは思いますが、ご理解をいただけませんか?
とキッパリ言ってみてください。これで了承してくれると思いますよ。
しかし、どれだけお願いをしても高額なお布施を要求するようなお寺なら、そのお寺との付き合いを解消することも考えなければいけません。
信者さんの事情を無視するようなお寺に未来はありません。
そんなお寺の檀家でいると、あなただけでなく【あなたの後の代の人たち】も苦労をすることになりますよ。
そもそも、あなたが今『お寺の檀家』であることを望まないのであれば、もっと低価格で自由にお墓を使うことができる【霊園】などにお墓を移すことを検討してもいいでしょう。
お布施以外の寄付などにも注意
よくあることなのですが、お葬式のときに、お布施の他にも『寄付』を要求しているお寺があります。
お寺から、
「お葬式で納めてもらいたいお布施は、だいたい◯◯万円くらいが目安です。」
と相場よりも安い金額を言われてホッとしていたら、
「それから、お布施とは別にご寄付を◯◯万円くらいを目安に納めてください。」
と、追加で要求されるのです。
それで結局は、お布施と寄付を合計すると、相場と同等かそれ以上の金額になってしまっている、と。
同業者の僕が言うのもなんですが、まるで【詐欺】みたいなやり方ですよね。
この記事では、読経料や戒名料をお寺へ納めることを『お布施』と言ってきました。
念のためお伝えしておきますが、この記事で僕が『お布施』と言っているのは、読経料や戒名料のことだけではありません。
寄付はもちろん、お車代や御膳料など、【◯◯料(代)】といったものを含めた《お寺へ納める費用すべて》のことを『お布施』と表現してます。
なので、寄付などを別に要求された場合は、【すべてを合計した金額の最大20%まで】で値引きの交渉をしてくださいね。
値引き交渉をしないでほしいケース
値引き交渉に関して、あなたに1つお伝えしたいことがあります。
これは、僕からの【お坊さんとしてのお願い】でもあります。
もしも、あなたとお付き合いのあるお寺が、すでに相場を下回った金額を提示しているのであれば、もうそれ以上の値引き交渉はしないであげてもらえませんか?
はじめから相場を下回っているなんて、それだけでも十分に【信者(檀家)さん想いの良いお寺】ですから。
お布施が相場より安いお寺というのは、じつは近隣のお寺にとっては『迷惑な存在』になっているんです。
そりゃそうですよね、「すぐ近くの◯◯寺さんの方が安いけど、何がそんなに違うんですか?」って話ですから。
良心的なお寺は近隣のお寺からチクチクと嫌味の1つくらいは言われます。
それにもかかわらず、信者さんの負担を減らすために相場を上回らないようにしているんですよ。そこらへんのところ、なにとぞご理解をよろしくお願い申し上げます。
あとは、葬儀社から紹介してもらったお寺に対しても値引き交渉はしないであげてもらえませんか?
多くの葬儀社には各宗派ごとに【提携寺院】があります。
お葬式をするにあたり、『普段からお付き合いのあるお寺がない』という人も多いので、喪主の要望があれば、葬儀社はそれらの提携寺院にお葬式の依頼をします。
そして、喪主が納めるお布施の金額は葬儀社が決めているんです。さらに、葬儀社は喪主の負担を減らすため、お布施の金額をギリギリまで安く設定します。
まぁ、喪主(お客様)のことを考えれば当たり前のことですね。
提携寺院の方も、葬儀社と喪主の意向を優先しますので、葬儀社で設定された金額を喪主から頂戴します。
さらに、喪主から頂戴したお布施の中から、『協賛金』などと称して葬儀社へ定率のバックマージンを返しています。
そうすると、実際にお寺へ入るお布施はグッと減ってしまうんですよね。
ですから、
- すでに相場を下回った金額を提示しているお寺
- 葬儀社から紹介されたお寺
に関しては、よほどの事情がない限り値引き交渉はしないでいただきたいなと思います。
まとめ: お布施は安くできますが、その分を仏様へ還元して!
お布施は適切に交渉すれば値下げしてもらえます。
具体的な目安として『お寺が提示した金額の20%OFFまで』くらいであれば値引きは十分に可能です。
また、交渉時には【お経を褒める】とか【不明瞭な点を指摘する】というように《お坊さんの心理》を考慮した攻め方をしてください。
そして、無事にお布施を安く抑えられたら、せっかくなのでその分は家族で旅行とか豪華な食事を・・・しないでくださいよ!
僕が『お布施を安くする方法』を書いたのは、安く抑えられた分を、あなたの家の【仏様たちのため】に使ってほしいからなんです。
仏壇の中にある仏具を新調するとか、お墓に供えるお花を少し豪華にするとか、命日には必ず塔婆を建てるようにする、とかです。
安く抑えられた分の全部とは言いません、その中の一部で構いませんから、仏様のために使ってください。
あなたが仏様の供養を永く続けるために、この記事が役に立てばいいなと思います。
※法事の施主をするならコチラの記事を読んでみてください。