お坊さん歴20年以上の未熟僧と申します。
- もうお寺との付き合いをやめたい
- 家庭の事情で『墓じまい』をしなくてはいけない
- 念のために離檀の方法や費用を知っておきたい
菩提寺との付き合いはけっこう大変ですよね。
いろんな行事への参加を求められたり、ときには多額の寄付を要求されます。
そのため、近年では「お寺との付き合いをやめたい」と考える人が急増中です。
また、お墓の後継者がいなかったり、遠方に転居するなどの理由で、やむを得ず『墓じまい』が必要なケースもあります。
菩提寺との付き合いを解消し檀家をやめたいときは【離檀】をしましょう。
この記事では、菩提寺を離檀する方法と費用について、お坊さんの僕が詳しく解説しています。
トラブルがなくスムーズに菩提寺との付き合いを解消できるようになりますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
檀家をやめるときは住職さんに『離檀』を申し出る
菩提寺との付き合いを解消することを『離檀(りだん)』といいます。
菩提寺との付き合いをやめたいと思うなら、住職さんに離檀を申し出て【墓じまい】をしましょう。
菩提寺があれば、自分の家のお墓をずっと守ってもらえるという安心感はあります。
しかし一方で、いろんな行事への参加を求められたり、高額な寄付を要求されることもあるので、菩提寺との付き合いはけっこう大変です。
そして、仮に菩提寺の住職さんに問題がある場合でも、檀家となっていればその住職さんにお葬式や法事をお願いしなくてはいけません。
そのため、何かと義務や制限の多い《お寺との付き合い》を解消し、ほとんど義務や制限のない霊園などへ移る人が急増しています。
また、菩提寺との付き合いには問題がなくても、家庭の事情で『墓じまい』が必要な人もいるため、近年ではたくさんの寺院で離檀が頻発しています。
菩提寺との付き合いをやめる場合は、住職さんに離檀を申し出て、遺骨の取り出しと墓地の原状回復をしてください。
付き合いをやめたいからといって、勝手に遺骨を取り出して墓じまいをするのではなく、必ず菩提寺の住職さんへ離檀の旨を伝えましょう。
しかし、離檀というのは菩提寺にとって望ましいことではないため、何かしらの引き止めをされるかもしれません。
そのため、離檀をするときにはトラブルがよく起こるのです。
なので、檀家をやめるときは事前に『離檀に関する知識』をしっかりと頭に入れておきましょう。
離檀をする方法
離檀をするときは、
- 遺骨の移転先を決める
- 住職さんへ離檀の意思を伝える
- 住職さんに『墓石の魂抜き供養』をしてもらう
- 石材店に依頼して『遺骨の取り出し』『墓石の撤去』『墓地の整地』をしてもらう
- 取り出した遺骨は、持ち帰って手元供養、または他の場所へ改葬する
という流れになります。
遺骨の移転先を決める
菩提寺との付き合いを解消するときは、あらかじめ遺骨の移転先を決めておきましょう。
離檀をするということは、お墓を解体して遺骨を引き取るということです。
引き取った遺骨は、自宅などで安置するか、他の場所へ納骨しなくてはいけません。
また、遺骨を移転するときには『改葬の手続き』が必要となるため、どうしても移転先を決めておく必要があるのです。
住職さんへ離檀の意思を伝える
離檀をしたい場合は、住職さんに離檀の意思を伝えましょう。
どうせ付き合いをやめるからといって、勝手に墓じまいをしようとしてはいけません。
お墓に埋葬されている遺骨を他の場所へ移すには【改葬許可申請書】という書類を役所へ提出する必要があり、それには住職さんの署名&捺印が不可欠です。
なので、お墓に遺骨が埋葬されている場合は、住職さんに離檀の意思を伝える必要があります。
では、遺骨が埋葬されていなければ大丈夫かというと、理由は後述しますがそんなことはありませんので、ちゃんと住職さんに離檀の意思を伝えてください。
離檀を申し出るときは『離檀をする理由』を明確にしておきましょう。
きっと引き止められると思うので、そのときに離檀をする理由をしっかりと伝えてあげてください。
もしも、ただ単に『その菩提寺が嫌だ』という理由で離檀をしたい場合は、そのまま正直に伝えるか、不誠実ではありますが【ウソの理由】を作ってください。
とにかく、離檀をするときは必ず住職さんに伝え、勝手に墓じまいをしないようにしましょう。
必ず住職さんに『墓石の魂抜き供養』をしてもらう
離檀の意思を伝えたら、必ず住職さんに『墓石の魂抜き供養』をしてもらいましょう。
お墓を建てたときには【墓石の魂入れ供養】をして、墓石を《ただの石》の状態から《お墓》に変えるのです。
これによって、私たちは《お墓》を介してご先祖様や亡きご家族と交流できるようになります。
ですから、逆に墓石を撤去するときは『墓石の魂抜き供養』をして、お墓を《ただの石》に戻さなくてはいけません。
もしもこの供養をしないと、ご先祖様や亡きご家族との交流を一方的に交流を絶つことになるので非常に失礼です。
離檀することが決まったら、住職さんと話し合って日程を決め、菩提寺での最後の供養となる『墓石の魂抜き供養』をしてもらってください。
石材店に依頼して『遺骨の取り出し』『墓石の撤去』『墓地の整地』をしてもらう
墓石の魂抜き供養が済んだら、石材店に依頼をして、
- 遺骨の取り出し
- 墓石の撤去
- 墓地の整地
をしてもらいます。
すでにお墓へ遺骨が納められている場合は、石材店に依頼して遺骨を取り出してもらってください。
まだ遺骨が納められていない場合は、そのまま墓石の撤去と墓地の整地をしてもらってください。
また、多くのお寺には【指定石材店】がありますので、住職さんに指定石材店の連絡先を聞いて依頼しましょう。
もしも、菩提寺に指定石材店がない場合は、あなたが選んだ業者に依頼をしましょう。
取り出した遺骨は、持ち帰って手元供養、または他の場所へ改葬する
お墓から取り出した遺骨は、持ち帰って手元供養をするか、他の場所へ改葬します。
遺骨を取り出したら、菩提寺で保管している『火葬許可証』を返してもらってください。
これは遺骨が適切に火葬されたことを証明するものであり、遺骨の改葬先で提出を求められる可能性があります。
ただし、『火葬許可証』の保管義務は5年間なので、もしも菩提寺が保管していなければ、代わりに『埋葬証明書』を発行してもらいましょう。
また、取り出した遺骨を他の場所へ改葬するのではなく、菩提寺内にある【永代供養墓】へ納骨するというケースもあります。
しかし、この場合は遺骨が菩提寺の敷地内にあるため、お寺によっては離檀の扱いにならず付き合いが継続することもあるので要注意です。
どうしても現在の菩提寺を離檀して、さらに永代供養を希望する場合は、他の寺院の永代供養墓へ改葬することを検討してみてください。
離檀をするときの費用
離檀をするには、
- 墓石の魂抜き供養のお布施
- 『墓石の撤去』と『墓地の整地』の費用
- 離檀料
などの費用が発生します。
墓石の魂抜き供養のお布施
離檀にあたり『墓石の魂抜き供養』をしてもらうときは《お布施》を包んでください。
墓石の魂抜き供養のお布施は【1万円~5万円】が相場です。
ただし、お布施の金額というのは地域や宗派、そして寺院によってまったく違います。
場合によっては10万円超えということも十分にあり得ますので、菩提寺の住職さんに確認をしておきましょう。
『墓石の撤去』と『墓地の整地』の費用
墓石の魂抜き供養が済んだら、石材店などに『墓石の撤去』と『墓地の整地』を依頼しましょう。
『墓石の撤去』と『墓地の整地』の費用は【1㎡あたり15万円】くらいが目安です。
ただし、これらの費用は、
- 墓地の面積
- 石の種類
- 石の数
- 石の重量
- 地域
- 石材店ごとの値段設定
によって大きく異なりますので、事前に見積もりを取っておいてください。
また、それぞれの費用についても価格の高騰によりどんどん値段が上がっています。
なので、離檀をするつもりなら早めに行動することをおすすめします。
離檀料
離檀をするときには、菩提寺から『離檀料』を要求されることがあります。
離檀料の相場は【1万円~20万円】程度です。
離檀料というのは、菩提寺に対する《最後の御礼》なので、本来ならあなたが金額を自由に決めたり、あるいは離檀料を納めないという選択もあります。
そのため、寺院によっては離檀料を要求しないところもあります。
ちなみに、僕がいるお寺でも離檀料は頂いていません。
また、相場以上の金額を要求している寺院もありますが、あまりに法外な金額の場合は弁護士に相談しましょう。
あるいは、最近では離檀の手続きを代行してくれる業者もありますので、困ったときにはそのような業者に依頼することも検討してください。
まとめ
菩提寺との付き合いをやめたい、あるいは家庭の事情で墓じまいをする必要があるときは【離檀】をしましょう。
離檀をする方法は、
- 遺骨の移転先を決める
- 住職さんへ離檀の意思を伝える
- 住職さんに『墓石の魂抜き供養』をしてもらう
- 石材店に依頼して『遺骨の取り出し』『墓石の撤去』『墓地の整地』をしてもらう
- 取り出した遺骨は、持ち帰って手元供養、または他の場所へ改葬する
となります。
また、離檀に関する費用には、
- 墓石の魂抜き供養のお布施
- 『墓石の撤去』と『墓地の整地』の費用
- 離檀料
があります。
離檀をするということは、ご先祖様たちがずっと続けてきた菩提寺との付き合いを終わらせることです。
まずはその意味をよく考えて、それでも離檀をしたいと思うなら本記事をご参考に実行してみてください。