お坊さん歴20年以上の未熟僧と申します。
- 法事のときの正座が苦痛でしかたない。
- 法事では正座をしなきゃいけないの?
- 正座をする意味って何なんだろう?
- 足がしびれにくい座り方を知りたい!
- 足がしびれてしまったらどうすればいいの?
あなたは『正座』をどのくらいの時間していられますか?
10分くらいですか?それとも30分くらいはイケますか?
えっ、もしかして1時間でも大丈夫なんですか?
正座の得意・不得意は人それぞれです。
得意な人はいいですけど、不得意な人にとって正座をすることは、ほぼ【拷問】です。
そんな【拷問】を強いられる場面の1つが『法事』です。
法事の時には、だいたい30分〜1時間くらいは法要をお勤めしていますので、その間は正座をしていることになるわけです。
しかし、そもそも法事をする時は必ず『正座』をしなくてはいけないのでしょうか?
僕としては、法事の時に、
正座なんかしなくてもイイ
と思っています。
特に【自宅での法事】の場合は、正座なんかしないで座椅子を使っちゃえばいいんですよ。
この記事では、
- 正座の意味
- 正座をしなくてもいい理由
- 正座のしかた(念のために)
について【お坊さん目線】で書いています。
正座が不得意なあなたにはぜひ読んでいただきたい内容なので、ぜひ最後まで読んでみてください。
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法事では無理に正座をしなくてよい
お坊さんと聞くと『正座してお経を読む姿』を思い浮かべる人は多いかと思います。
そのせいでしょうか、
と本当によく質問されます。
何だか誤解があるみたいなので言っておきますが、正座をすればお坊さんだって足はしびれます、はい。
足はしびれているんですが、長年の経験で【しびれ始める時間】や【うまくゴマかす方法】をよく知っているから、何ともないように見せられるんです。
何ともないように見せることが上手なのは【正座が得意なお坊さん】で、下手なのが【正座が不得意なお坊さん】だと思います。
そして、僕は残念なことに【正座が不得意なお坊さん】なのです。
つまり、僕は、基本的にしびれ始める時間が早いし、うまくゴマかすのも下手です。
そんな僕はずっと「なぜ法要の時には正座をしなくちゃいけないの?」と思い続けてきました。
そして、僕なりに考えてみた結果、
正座なんかしなくてもイイ
という結論にいたりました。
この結論にいたってから、僕は正座するのをヤメました!・・・というわけにはいきませんが、不思議と《正座できる時間》は長くなりました。
僕は一応『お坊さん』なので、正座をヤメることは難しい立場ですが、あなたの場合は気にせずヤメちゃっても大丈夫です。
正座をする意味
では、まず根本的なところから。
一般的に、法事の時に正座をするのは【ごく当たり前のこと】みたいになってますが、
「そもそも、正座をして何の意味があんの?」
って思いませんか?
僕は思っていましたよ。
だって、正座をすると途中から足が痛くなって、まったく法要に集中できなくなるんですもん。
でも、法要の時に正座をするのにはそれなりの意味があって、それを知れば僕も一応は納得できました。
正座というのは、目の前にいる相手に対して、
- 敬意があること
- 敵意がないこと
を表すための座り方なんです。
ご存じのように、正座をしているとすぐには立ち上がれません。
つまり、正座というのは【目の前の相手を攻撃するには不向きな座り方】なんです。
だから、この座り方をすることで、
「私は、あなたに対する敵意なんて一切ありませんよ。
その証拠に、ほら見て、私はこんな座り方をしてるんですよ?
私は、あなたに敬意や親愛の気持ちしかないんです。」
と相手に伝えているのです。
そして、それが【相手がいる時の座り方】つまり『正座』として定着している、ということです。
これを仏様に対しても同じように、【敵意が無い】ことはもちろんですが、【敬意】を表すために正座をするわけですね。
仏様には敬意を表すべきなんで、そういう理由で正座の方がイイと言われたらお坊さんの僕としては文句を言えません。
正座をしなくてもよい理由
それでも、僕は『正座をするべき』とまでは思いません。
まず、正座はすべての人ができるものではありません。
足の不自由な人に対して「正座してください」とは言えないですよね?
身体的な理由で正座ができない人は【仏様への敬意がない】ということなのでしょうか?
そうではありませんよね?
僕は、仏様への敬意を表す方法は、べつに『正座以外のやり方』でもイイんじゃねぇの?って思うんですよね。
敬意を表すには【頭を下げる】でも【手を合わせる】でも、他の方法があるはず。
だから、どのような形で仏様に敬意を表すのか、その方法は《自由》でいいんですよ。
もし、寝転がって鼻をほじることが敬意を表すことだったら、誰のことも気にせずソレをすればイイんです。
僕はそれを見ても怒りませんよ、でも事前に『その人にとっては【寝転がりの鼻ほじほじ】が敬意の表れ』であることは教えておいてくださいね。
まぁ、この例は少し極端でしたが、要するに正座に固執することはありませんよと言いたいのです。
正座をする人、正座をしない人、それぞれが選択した【敬意を表す方法】をやればイイです、そこに強制はありません。
もう一つ。
これはぼくの経験から思うことですが、正座をすると、法要の途中から、僕も含めてみなさんの意識が【足のしびれ】の方に行ってしまいがちです。
あなたは法要の途中でこう思ったことありませんか?
って。
こうなると、もはや【故人の供養】よりも【足のしびれ】のことを考えています。
法事は、故人を供養するために行うものですから、法要の間は故人のことだけを考えてほしいのです。
それを妨げるものは排除してかまいませんよ、たとえそれが正座であってもね。
【座り方】なんかより【故人を供養する気持ち】の方が大切ですよ。
ということで、僕は、法事の時でも『正座はしなくてもよい』という結論にいたりました。
【正座のしかた】と【しびれの対処法】
ここまで読んでくださったあなたは、もしかして、
と思いましたか?
あぁ、あなたはなんて良識ある人なんでしょう。
そうですよね、わかりました。
ここからは、正座をしなくてはいけない状況であるあなたに【正座のしかた】を紹介します。
しかし、同じ座り方をしても人によって《しびれの度合い》は違います。
これから紹介する【正座のしかた】は、あなたにとって【しびれにくくなる】かもしれませんし、逆に【しびれやすくなる】かもしれませんので、その点はご了承ください。
それでは、僕なりの【正座のしかた】を紹介します。
とりあえず20分くらいの正座だったら、その後すぐ無事に立ち上がれると思いますよ。
しびれにくい正座のしかた
20年以上お坊さんをしてきた僕の【正座のしかた】は以下のとおり。
- 両足の親指を平行にしてつける、あるいは、ほんの少しだけ重ねる(僕は、しっかり重ねると親指がつってしまうんです)
- かかとは少し開く(開きすぎるとヒザへの負担が増えるので注意)
- お尻の肉はかかとにしっかり乗せる(両かかとで肛門をグイッと開くイメージ)
- 上半身の重心を2〜3分おきに前後左右にズラしていく(他の人にバレないように少しずつズラす)
- 「まだ大丈夫」と自分に暗示をかける(これが意外と効く)
こんなカンジですね。
ここで1つあなたへアドバイス。
正座をするなら厚くて柔らかい座布団を使わない方がイイですよ。
じつは、これを言っているお坊さんは意外と多いんです。
何故でしょうかね?僕にも分かりませんが、柔らかすぎると足の広範囲を圧迫してしまうのかもしれません。
ですから、ぜいたくを言わせていただくと、使いこんだペラペラの座布団が理想的です。
床に直接座るよりも痛みがなく、なおかつ圧迫も少ないので、正座をするときには最適です。
完全に足がしびれてしまった時の対処法
僕が今までさんざん「正座はしなくてもいい」と言ってきたのに、結局は正座をしてしまったあなた。
そして、もうとっくに足の限界を迎えて、足の感覚が無くなっており、すぐに立ち上がることは不可能になってしまいました。
そんな時は、こうしてください。
- お尻をグッと上げて上半身を前に倒して、足の血流を少しずつ戻す
- 足がピリピリしてきたら血流が戻ってきた証拠。そのまま数十秒間その姿勢をキープする
- 足首が曲げられるくらいまで回復したら、つま先立ちで正座をする(ここまでくれば、ほぼ立ち上がれます)
- 立ち上がる時は、しっかりと手をついて【ゆっくりと】立つ
どうでしょうか?できそうですか?
もしも足がしびれたら、
とにかく【ゆっくり】と動く
というのが大事です。
僕は実際に足のしびれが原因で派手に転んでしまう人を何人か見てきました。
本当に危険なので、急に立ったり、無理に歩こうとしないでください。
あと、最後にもう一つ大事なこと。
足がしびれたら恥ずかしがらずに「足がしびれたので少し待ってください」と正直に伝えてください。
もしも、慌てて立とうとして、大切な法事でケガ人が出たなんてことがないようにしましょう。
座椅子に座って法要に参加すればいいんです
法事では正座をしなくたっていいんですよ。
じゃあ、正座をしない場合、法要中はどうしていればいいのでしょうか?
簡単です、
座椅子に座っていればいいんです。
まず、最近のお寺は、
法事の参列者のためにイスを用意している
というところが増えています。
ちなみに、僕のいる寺も本堂内はすべて【イス席】ですね。
他のお寺でも、昔みたいに正座なんかさせていませんよ。
お寺でイスの使用がOKなんですから、自宅で法事をする時だってもちろん座椅子に座っても大丈夫。
テーブルで使うような高さのイスだと、正座をしている他の参列者を上から見下ろすような形になりますから、もしも座敷用の脚の短いイスがあったら、それを使うのが一番イイですね。
【関連記事】:【自宅の法事に最適!】正座ができない人におすすめの座椅子3選
まとめ: 法事でも正座をしなくていい!
昔はお寺の本堂には参列者用のイスなんてありませんでした。
座布団を敷いてみんなそこへ正座をしていました。
でも、最近では多くのお寺で本堂にイスが置いてあります。
たぶん、これは僕と同じような考えのお坊さんが多いからですね。
当然ですよ、これも時代の流れです。
これからどんどん高齢化が進むんです。
ということは、足が悪くて正座できないという人も増えるわけです。
お寺だって少しでも信者さんに快適な場所を提供しようと考えますから、正座をさせずにイスに座ってもらうという選択をするに決まってます。
でも、お寺によってはイスを置かないところもあります。
住職の考え方かもしれませんし、お寺の経済的な理由かもしれません。
あなたが法事をする時には、事前に「正座でなくても大丈夫ですか?」とお坊さんに確認しておくとイイでしょう。
ほとんどのお坊さんは許可しますよ、きっと。
僕も法要開始の前には必ず「みなさん、足を崩して楽な姿勢で臨んでください」と言いますから。
それに、たぶん今後は法事において【正座】するという慣習は無くなるでしょう。
ですから、法事でも正座はしなくてイイですよ♪