仏事全般

行年と享年、満年齢と数え年、それぞれの違いを解説します。

お坊さん歴20年以上の未熟僧(みじゅくそう)と申します。

この記事は要するにこんな内容です
  • 位牌などに記載する『故人の年齢』は、【行年】とするのか【享年】とするのか
  • 故人の年齢の『年数』は、【満年齢】で数えるのか【数え年】で数えるのか

先日、位牌を新しく作り直したいという信者さんがウチの寺に来られました。

その方は何だか申し訳なさそうに、

  • 「お位牌の裏にある『年齢』なんですけど、【行年】と【享年】のどちらが正しいのですか?あと、前に『故人の年齢は数え年にしなきゃいけない』と聞いたんですが、やっぱりそうなんですか?」

と質問されました。

あなたなら、どのように答えますか?

位牌や墓石に彫刻されている『故人の年齢』の表記ですが、普段はほとんど気にしていませんよね?

ですから、いざ新たな位牌の作製となった時に困ってしまうのです。

この記事を読むと、

  1. 【行年】と【享年】の違い
  2. 【満年齢】と【数え年】の違い
  3. 年齢には【歳】と【才】のどちらを使うのか

が分かります。

あなた以外にも多くの人がこの疑問を持たれるので、参考までに、ぜひ一度ご覧になってください。

行年と享年の違いって何?

あなたの家の仏壇に安置されている【お位牌】をご覧ください。

そして、お位牌の年齢の表記の部分に注目してみてください。

また、時間がある時でかまいませんので、同じようにお墓に刻まれている故人の年齢の表記に注目してみてください。

そこには何と書いてありますか?

行年】ですか?それとも【享年】ですか?

年齢の表記の部分では、行年と享年の二種類があります。

どちらも『故人が亡くなった時の年齢』を表す言葉なのですが、なぜ二種類あるのでしょう?

そして、仏事においては、【行年】と【享年】のどちらを用いるべきなのでしょうか?

結論としましては、

どちらを用いても問題はありません

ので、別に何も心配しなくて大丈夫ですよ。

どちらでも問題はありませんが、その違いを知っておくと今後何かの役に立つかもしれませんよ。

【行年】とは

【行年】は、この世に生まれてから亡くなった時までの経過年数、という意味です。

では、なぜ【行】年というのでしょうね?

【行】という字は、【修行】の【行】を意味するといわれています。

つまり、故人がこの世に生を受けて【修行を続けた年数という意味になります。

えっ?「いやいや、故人は特に修行なんかしていなかったけど?」ですって?

いいえ、そんなことはありませんよ。

仏教を広めた『お釈迦(しゃか)様』は、

「私たちが今いるこの世は《苦しみの世界》である。この世に生を受けた時点で、すでに苦しみを味わうのだ。」

とおっしゃいました。

確かに、生きていくことは多くの【苦しみ】に耐えることでもあります。

その【苦しみ】を経験してこそいろんな真実が見えてきますよね?

つまり、生きていることは、たくさんの苦しみを乗り越えて真実を見つけ出すための【修行】なのです。

故人が生涯を通じて懸命に【修行】を続けた尊い年数が【行年】というわけです。

【享年】とは

では、【享年】とはどのような意味なのでしょうか。

基本的には【行年】と同じように、この世に生まれてから亡くなった時までの経過年数、という意味です。

同じような意味なのに、なぜこちらは【享】年なのでしょう?

【享年】の【享】という字は、『天から享(う)けた』という意味があります。

つまり、享年とは【天から享けた大切な命をまっとうした年数】という意味になります。

微妙に違うが、どちらもほぼ同じ意味

じつは、【行年】と【享年】、厳密にはまだ他にもわずかな違いがあります。

【行年】は、この世に生まれてからどのくらい経過したか、を数えた数字です。

そして、行年は『生きたの数という意味です。

また、位牌や墓石には『行年◯◯歳(才)』と表記します。

【享年】も、何年生きたか、を表す数字ですが、享年には『0歳』という概念がなく、生まれた年を1歳と数えます。

なので、位牌や墓石に年齢を記す場合、故人の生きた年数を少しでも多く表記するため、昔は享年の方を多用していたそうです。

ちなみに、享年は『生きた年月の数という意味で、位牌や墓石には『享年◯◯』だけ表記し、『歳(才)』は無いのが正式なのだそうです。

このように、行年と享年には、厳密にいうとわずかな違いがあります。

でもまぁ、それほど気にするレベルのことではないと思います。

いずれにせよ、『故人が生まれてから亡くなるまでの年数』という意味では同じです。

【満年齢】か【数え年】か

次に、年齢の『数』の部分について書いていきます。

年齢を表すものには、【満年齢】【数え年】があります。

両者の違いは、

  • 【満年齢】は、例えばあなたが書類へ記入しているような、生年月日から数えた『実年齢』を指すもの
  • 【数え年】は、生まれた年を1歳として数えた年齢を指すもの

というところです。

【満年齢】に関しては私たちも日頃から意識していてわかりやすいんですが、問題は【数え年】ですよ。

【数え年】は、基本的には《満年齢+1歳》と数えていきますが、誕生日と年の変わり目によっては《満年齢+2歳》になる期間もあるので、正直なところわかりづらいです。

さて、ここで問題となるのは、位牌や墓石には【満年齢】と【数え年】のどちらで表記するのか、ということです。

これも先ほどの、行年や享年と同じように、

どちらでも問題はありません

という答えになります。

仏教的な理由でどちらと決められているわけでもないので、個人的には【満年齢】の方がわかりやすくて良いかな、と思っていますけどね。

実際のところ、位牌や墓石へ記す年齢に、【満年齢】を採用している寺はたくさんあります。

ウチの寺でもそうです。

結論として、【満年齢】か【数え年】のどちらで表記するのかは、寺の住職さんの指示を仰いでいただくのが無難かと思います。

ちなみに、ウチの寺の場合ですが、位牌も墓石も、

【満年齢】で【行年◯◯歳】

で統一しています。

【歳】か【才】か

年齢表記の最後の部分にも違いがあります。

それは、『〇〇』とするべきか、あるいは『〇〇』とするべきか、ということです。

年齢を表記する場合は、原則として、

【歳】を使用する

と覚えておいてください。

【歳】という字は、

年月や年齢など『時の経過』を表す

という時に使用する漢字です。

例えば、

  • 歳月
  • 歳末
  • お歳暮

というような言葉は、いずれも【時】を表しているものです。

一方で、【才】という字は、

生まれつきの『能力や性能』を表す

という時に使用する漢字です。

例えば、

  • 才能
  • 天才
  • 文才

というような言葉は、いずれも【能力】を表しているものです。

でも、よく年齢を表す時に『〇〇才』というのを見ますよね?

これは、【歳】という漢字は少し難しくて画数も多いため、同じく《さい》と読む【才】という漢字を代用したのです。

この漢字の代用が今ではすっかり定着して『〇〇才』という表現をするようになりました。

しかし、年齢は【時】を表す言葉なので、本来であれば『〇〇歳』とすべきです。

ですから、【歳】と【才】のどちらでも意味は通じますが、正式な書類などでは『〇〇歳』と表記する方がよいと思います。

これは、位牌や墓石における年齢表記についても同じことがいえますので、故人の年齢には【歳】とする方が無難です。

【関連記事】⇒位牌とは何なの?位牌の意味や必要性をお坊さんが解説します。

まとめ : 行年と享年、満年齢と数え年、どれでも全て問題なし

【行年】と【享年】、そして【満年齢】と【数え年】、それぞれに違いはあります。

位牌や墓石へ表記するにあたり、結局はどれも特に制限はないので、

どれを選んでも問題なし

ということになってしまいます。

ただし、一つの位牌に夫婦の戒名が連名記載されているモノを『夫婦(めおと)位牌』といいますが、この位牌の場合は、行年や享年、満年齢か数え年、といった表記は統一してください。

いくら決まりはなくても、せめて夫婦の表記くらいは合わせてあげてくださいね。

あの、念のため言っておきますが、ぼくは決して『適当に』この記事を書いているわけではないですからね。

いろいろと基本的な決まり事はあるんですが、宗派や地域によって、あるいはその寺の住職さんの考え方によってバラバラなんです。

日本の仏教ってさまざまな違いを許容しているので、ある意味もともとユルいんですよ。

今回この記事を書いたのは、ウチの寺の信者さんのように、いろいろと気になさる方も多いので、『そんなに厳しい決まりはないですよ』とお伝えしたかったのです。

それより、ぼくは『あなたがこの記事を読んでくれたこと』がとても嬉しいです。

あなたはきっと、仏様のことを大事に考えておられて、仏様に関わるものを【間違いたくない】からこの記事をお読みくださったのだと思います。

ぼくは他にも仏教に関する記事を書いています。

あなたのように、仏様に関心を持ってくださる人に読んでいただきたくて発信をしています。

今回の記事があなたの役に立つことを祈ります。