お坊さん歴20年以上の未熟僧と申します。
- 『ついで参り』って何?
- なぜ『ついで参り』をしちゃダメなの?
- どうしても『ついで参り』になってしまうケースもあるんじゃないの?
あなたはどこかへ出かけたついでにお墓参りをするということはありませんか?
じつは、昔から「お墓参りは何かの用事のついでに行ってはダメだ。」と言われているのです。
この《何かの用事のついで》にお墓参りすることを、『ついで参り』といいます。
つまり、お墓参りをするなら【ついで参り】ではいけないということなんですが、僕はこれがどうしても納得できません。
お坊さんの観点からしてもついで参りは問題ないですし、むしろ良いことだとさえ思います。
この記事では、
- 『ついで参り』がダメだと言われている理由
- じつは『ついで参り』をしても問題はないということ
- お墓参りで一番大切なこと
について詳しく解説しています。
最後まで読んでいただければ、もう『ついで参り』のことは全然気にならなくなり、余計な心配をせずにお墓参りができるようになりますので、ぜひチェックしてみてください。
『ついで参り』の何がダメなの?
何かの用事のついでにお墓参りをすることを『ついで参り』といいます。
そして、お墓参りをするなら『ついで参り』ではダメだと言われています。
どんな【ついで】がダメなのかというと、例えば、
- まったく別の用事を済ませた後に、お墓参りをする
- 自分の家のお墓参りの後に、親戚や知人の家のお墓参りをする
みたいなことです。
つまり、
- お墓参りは重要なことだから、別の用事を済ませた後にするのはダメ。
- お墓参りのハシゴもダメ。
というわけです。
要するに、『ご先祖様へ挨拶をするためにお墓参りをするんだから、何かの【ついで】に行くのは失礼にあたる』ということですね。
ご先祖様のことを優先的に考えた結果、お墓参りが先?
「ついで参りはダメです。」と主張する人の多くは、
- お墓参りはなるべく早めに、遅くとも午前中にしないと、ご先祖様に対して失礼。
- 遅い時間(午後に入るともう【遅い時間】なのだそうです)にお墓参りをするのは、ご先祖様のことを優先的に考えていないということ。つまり、ご先祖様を【軽んじている】ということ。
と言っていますが、そこまで『お墓参り』の方を優先しなきゃダメなのでしょうか?
僕は『ついで参り』がご先祖様に対して失礼なことだとは思えません。
お墓参りというのは、簡単に言えば 『ご先祖様へのご挨拶』なのですが、なぜそんなに【先に】とか【早め】にこだわる必要があるのでしょうか?
例えば、あなたが誰かの家へ挨拶をしに行く場合、必ず『午前中』に行きますか?
もちろん、時と場合、そして用事の内容によっては午前中に行くかもしれませんが、まずは「あまり早い時間に訪問するとご迷惑にならないかな?」と相手の都合を先に考えるんじゃないですか?
訪問先の相手のことを考えて、あえて午後に挨拶に行くこともありますが、それは決して相手を軽んじていませんよね?
むしろ、相手のことを優先的に考えています。
何でもかんでも【先にすること=相手のことを優先的に考えること】とは限らないので、他の用事よりもお墓参りを先にすることがご先祖様に対する礼儀とまでは言えません。
もちろん、午前中のお墓参りでもいいんですよ。
たしかに、仏様に関することは『基本的には午前中に行う』という習慣が昔からあります。
これは、仏様の世界では『食事ができるのは午前中だけ』というルールがあるとされているから、ちゃんとお供物を召し上がっていただけるうちにお墓参りをした方がよいという理屈なんです。
でも、これって、あくまで【目安】にすぎないものだし、しかも理由も《後付け感》が非常にあります。
というわけで、お墓参りのタイミングなんて考えてもほとんど意味がありませんから、あなたの都合でOKです!
【関連記事】:お墓参りにはいつ行くべき?お墓参りをするタイミングと時間
お墓参りのハシゴはダメ?
『お墓参りのハシゴ』もダメだと言われています。
ただし、『お墓参りのハシゴ』に関しては賛否両論があり、問題ないとする意見もあります。
お坊さんとして僕の意見を言わせてもらうと、『お墓参りのハシゴ』はダメではありません。
自分の家のお墓参りだけでなく、わざわざ他の家のお墓参りまでするんですから、それはめちゃくちゃイイことじゃないですか、何が悪いのかさっぱり分かりません。
とはいえ、お花やお線香まで供えてしまうと迷惑をかけるということはありますので、花筒や香炉がキレイに掃除してあったら、そこへ勝手にお花やお線香を供えるのはやめた方がいいでしょう。
でも、お墓の前で手を合わせるだけなら、ハシゴでも何でもかまわないのでお参りした方がいいですよ。
しかし、『お墓参りのハシゴ』に限って言えば、お参りする順番があるというのは納得できます。
例えば、親戚同士で【同じお寺】とか【同じ集合墓地の中】にお墓があるというケースがけっこうあります。
そうすると、
という気持ちになるんですよね、多くの人は。
となると、お参りをする順番は、
- 自分の家のお墓
- 親戚の家のお墓
となります。
親戚の家のお墓にもお参りするのなら、まず先に自分の家のお墓をお参りする、というのが普通の流れです。
このような、『自分の家のお墓』と『親戚の家のお墓』がすぐ近くにある場合は、【自分の家のお墓⇒親戚の家のお墓】という順番でいいと思います。
では、もしも、
- あなたの家のお墓は、あなたの自宅から【車で20分】くらいの場所にある
- 親戚の家のお墓は、あなたの自宅から【車で5分】くらいの場所にある
- 『あなたの家のお墓』と『親戚の家のお墓』は、あなたの自宅から見て同じ方向にある
というような場合はどうするか。
このケースであれば、先に【親戚の家のお墓】へお参りしてもいいでしょう。
優先順位を守るために、わざわざ、
- 『親戚の家のお墓』のある場所を通り越して、まず先に『自分の家のお墓』にお参りをする
- 行った道を戻ってきて、それから次に『親戚の家のお墓』にお参りをする
なんて面倒なことはしなくてもいいですよ。
お墓参りだけではなく何でもそうですが、【臨機応変】に【柔軟】に考えてOKです。
余計なことは気にせずお墓参りをしてください
この記事をここまで読んでくださったあなたは本当に素晴らしい人です!
だって、『できるだけ正しい方法でお墓参りをしたい』と思っているからこの記事を読んでくれているわけですよね?
それは、あなたが日頃からご先祖様に感謝をしていて、それに対する礼をつくしたいと思っている証拠です。
その気持ちはちゃんとご先祖様に伝わっていますよ。
お墓参りで大事なのは、作法や習慣ではなく、あなたの【気持ち】の部分です。
あなたが、ご先祖様に対して感謝する気持ちを忘れないでいることが最も大切なんです。
ご先祖様は、べつに『お墓参りの優先順位』なんか全然気にしていませんよ。
『関連記事】:お墓参りをする意味とは?お墓参りのやり方と注意点も詳しく解説
他の用事と一緒にお墓参りをしても問題ない
「ついで参りはダメ。」と言っている人に一つ聞きたい。
お墓のある場所が自宅からとても遠い人もいるのですが、そういう人に対しても同じように「午前中に自分の家のお墓参りだけをしろ。」って言うのでしょうか?
まず【午前中】っていうところで、かなりハードルが高い。
そして、せっかく遠方から来たのに、「【自分の家のお墓だけ】をお参りして、すぐそこにある親戚の家のお墓にはお参りをするな。」と言うのでしょうか?
せっかく遠くから来てるんだから、お墓参りの他にも用事とか立ち寄りたい場所があるはず、だったら、スケジュールの都合によっては他の用事を先にしたっていいですよね?
お墓参りなんて、ある程度は【臨機応変】に【柔軟】に考えたらいいんですよ。
というか、余計なことを気にしないで、あなたの自由にお墓参りをしたらいいんですよ。
必要以上に【優先順位】とかを気にするあまり、【お墓参りを延期してしまう】なんてことになってしまったら、その方がご先祖様に対して失礼です。
だから、もしも他に用事があるのなら、その用事が終わってから、ついでにお墓参りをしてかまいません。
すぐ近くに親戚の家のお墓があるなら、せっかくなんだからついでにお参りすればいいじゃないですか。
むしろ、その方が素晴らしい心構え。
『ついで参り』の何がダメなの?
他の用事の後にお墓参りをしたっていいんです!余計なことは気にするな!
まとめ:ついで参りは問題なし!余計なことは気にせずお参りをしてください。
お墓参りは、ご先祖様を含め亡くなった方々へご挨拶です。
でも、僕はお坊さんですが「日頃の生活において、ご先祖様を【優先】してください」なんて言ったことは一度もないです。
べつに、ご先祖様を【優先】までさせなくてもいいんです。
ご先祖様だって、『お墓参りをしてくれたこと』自体を喜んでいるでしょうし、仮にお墓参りを後回しにされたからといって怒ったりしません。
基本的には、あなたの生活リズムや他の用事の方を優先させればいいのです。
ご先祖様のことを大切に考えるというのは、感謝する気持ちを忘れないでいることであって、【先に】とか【早く】といったように優先させることではないですよ。
「お墓参りは午前中にするのが礼儀です。」という人もいますが、そんなことはあまり気にしなくていいです。
仏教には【供養は午前中が望ましい】という考え方がありますが、あくまでも『目安』にすぎません。
優先順位にとらわれ過ぎて、それでお墓参り自体がどんどん先延ばしになる方が、よっぽどご先祖様に対して失礼です。
ですから、いちいち『お墓参りと他の用事のどっちを先に行くのか』なんて迷わなくてもいいので、無駄なく効率のよい順番でお出かけの計画を立てて、そこへお墓参りを組み入れてください。
※お墓参りへ行く前に読んでみてください。