- 不祝儀袋って何なの?
- 『御香典』と『御霊前』と『御仏前』の違いがよく分からない。
- 不祝儀袋の正しい書き方を知りたい。
- 不祝儀袋には、どうやってお札を入れたらいいの?
お葬式に参列するときには【御香典】または【御霊前】、法事のときには【御仏前】を持参しますが、それらのことを『不祝儀袋(ぶしゅうぎぶくろ)』といいます。
あなたは、この不祝儀袋の書き方やお札の入れ方で悩んでいませんか?
お葬式や法事にはいろんな決まり事があるので、何をどうしたらいいのか迷ってしまいますよね。
じつは、不祝儀袋の書き方やお札の入れ方というのは、お葬式と法事で少し違うだけで、さほど難しいものではありません。
この記事では、お坊さん歴20年以上の僕が、
- 不祝儀袋とは何か
- 不祝儀袋の種類と、それぞれの意味
- 不祝儀袋の書き方
- 不祝儀袋へのお札の入れ方
について詳しく解説しています。
不祝儀袋の取り扱いやマナーについてしっかりと学べますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
不祝儀袋の意味
お葬式や法事など、故人を供養するための法要を『滅罪(めつざい)法要』といいます。
滅罪法要に参列するときには現金を袋に包みますが、この袋のことを『不祝儀袋(ぶしゅうぎぶくろ)』といいます。
不祝儀袋の種類には、
- 御香典(御香奠)
- 御霊前
- 御仏前
がありますので、参列する法要によって使い分けが必要です。
あなたは、結婚式でお祝い金を包む『祝儀袋(しゅうぎぶくろ)』というのは聞いたことがありますよね?
結婚式というのはお祝い事なので【祝儀】です。
一方で、お葬式や法事は亡くなった人を供養するものであり、お祝い事である【祝儀】とはまったく反対の意味なので【不祝儀】となります。
不祝儀袋には、
- 水引の色
- 中袋の有無
- その土地の風習
など、地域によって違いがあります。
この記事では、一般的に使用される不祝儀袋について書いていますので、基本的な部分を押さえた上で、それぞれの地域のやり方に従うようにしてください。
不祝儀袋の書き方
あなたくらいの年齢の人は、不祝儀袋を書く機会があまり多くないはずです。
不祝儀袋の書き方には一応の決まりがあり、参列する法要の内容によって書き方が変わりますので、この機会にしっかりと区別できるようにしておきましょう。
お葬式のときに渡す不祝儀袋
不祝儀袋を使うのは、
- お葬式(またはお通夜)のとき
- 法事(=回忌法要)のとき
です。
お葬式と法事では法要の内容が違いますから、不祝儀袋の書き方も違います。
とはいえ、書き方を間違えたところで誰かに文句を言われることはないですが、基本を知っておいて損はないと思います。
御香典(御香奠)
まずは、お葬式(お通夜)のときに包む不祝儀袋の書き方です。
お葬式(お通夜)の時には、お悔やみの気持ちとして、『御香典(おこうでん)=御香奠』の袋に現金を包みます。
『御香典』とは、お葬式(お通夜)の際に、故人の弔いのため祭壇前に供えられた現金や供物のことをいいます。
しかし、本来の意味では、御香典というのは【故人のために供えたお香】のことです。
御香典は《御香奠》とも書きますが、【奠】という字には神仏のために物をお供えするという意味があるため、御香典は『神仏に【お香】を供える』という意味になります。
では、なぜ【お香】を供えるのでしょう?
仏様となった人は、お香から出る『香り』を食べると言われており、これを【香食(こうじき)】といいます。
つまり、お葬式や法事でお香を供えることは、【故人にお食事を振る舞う】という意味があるのです。
それが現在では、何かと出費の多いお葬式を支援する意味で、お香やお供え物ではなく現金を【御香典】として包むようになりました。
お香については別記事の『お線香のあげ方やマナーを場面別に詳しく紹介。お焼香の作法も合わせて紹介』で詳しく解説していますので、ぜひ一度ご覧ください。
御霊前
御香典と同じ目的で使用されているものに、『御霊前(ごれいぜん)』があります。
お葬式(お通夜)で現金を包むときには、【御香典】と【御霊前】のどちらで書いてもかまいません。
では、『御霊前』とはどのような意味なのでしょうか?
人が亡くなると、四十九日を迎えるまで故人の魂(=霊魂)はまだこの世に残っていると言われています。
故人の霊魂は四十九日を境に【仏様の世界(あの世)】に旅立たれ、仏の世界におられる『精霊(しょうりょう)』に変わります。
ですから、四十九日を過ぎるまでは、故人はまだ霊魂としてこの世に残っている状態のままなので、『故人の霊魂の前にお供えします』という意味で【御霊前】と書きます。
薄墨で書く
お葬式(お通夜)で使用する御香典や御霊前を書くときには、できるだけ文字を『薄墨(うすずみ)』で書くようにしてください。
薄墨で書くとは、通常の墨の色ではなく、もっと薄い墨の色(=灰色)で書くということです。
薄墨で書く理由は、
- 悲しみのあまり、涙が硯(すずり)に入ってしまい墨の色が薄くなった。
- 予想もしないような出来事で、慌てて墨をすり、十分に墨の色が出ていない。
という『突然の訃報に悲しみが消えない』という気持ちを表現するためです。
ただし、あくまで悲しみの気持ちを表現しているだけなので、薄墨で書いていないことがマナー違反になるわけではありません。
また、御香典や御霊前を書く時には、本物の墨汁と筆を使うのではなく筆ペンで書いて大丈夫です。
最近の筆ペンは本物の毛筆のような書き心地のものもあり、さらに【薄墨】専用の筆ペンも販売されていますので、もしもの時のために一つ購入しておきましょう。
法事(回忌法要)のときに渡す不祝儀袋
お葬式の時だけではなく、法事(回忌法要)のときにも不祝儀袋に現金を包みます。
ただし、お葬式のときとは違い、法事で包む不祝儀袋は薄墨ではなくしっかりとした墨の色(濃い黒色)で書くようにしてください。
御仏前
お葬式(お通夜)のときに包むのは【御香典】または【御霊前】です。
しかし、法事(回忌法要)のときに包むのは『御仏前(ごぶつぜん)』の袋となりますので注意してください。
御仏前は、字のとおり【仏様の前にお供えするもの】という意味です。
故人はあの世で、たくさんの仏様に守り導かれて過ごしていますので、御仏前というのは《故人》に対してだけではなく《故人を守ってくれている仏様》にも供えているわけです。
御仏前は『御佛前』と書くこともあります。
『佛』という字は『仏』の旧漢字なので意味は同じですから、御仏前の書き方は『御仏前』と『御佛前』のどちらでもかまいません。
四十九日忌法要のときは、御霊前?御仏前?
今までお坊さんをしてきて何度も質問されたのが、
四十九日忌法要のときには、『御霊前』と『御仏前』のどちらで包むのが正しいのか?
というものです。
先ほど、四十九日までは故人の霊魂がこの世に残っているので、お葬式の時には『御霊前』と書いてもよい、と言いました。
となると、【あの世へ旅立つ当日となる四十九日には御霊前と御仏前のどちらになるのか?】という疑問が出てきます。
僕は、四十九日忌法要の時に包む袋の表書きは『御仏前』でよいと思います。
四十九日の段階では、故人はもう『霊魂』ではないのですが、かといって、まだ『仏様』というわけでもないので、本当は『御霊前』と『御仏前』のどちらでもない状態となってしまいます。
しかし、四十九日を迎える故人は、もう間もなく『仏様の世界の住人』となられるのですから、法要当日は【故人は既にあの世で仏様に守られている存在】として扱ってよいのです。
ですから、四十九日忌法要の際には『御仏前』で問題ありませんし、実際に四十九日忌法要で包む不祝儀袋には『御仏前』と書く人が多いです。
不祝儀袋を書く時の注意点
不祝儀袋の書き方は、御香典、御霊前、御仏前、いずれも基本的には同じです。
不祝儀袋には、
- 外袋と中袋がある
- 連名での書き方がある
- 数字は【旧漢字】を使用する
といった注意点があります。
上記の注意点をふまえた上で、故人に対する供養の気持ちを筆に込めて、ゆっくりと丁寧に書きましょう。
外袋の書き方
外袋には、中央で上下を分けるように結び切りの水引があります。
まず、水引の結び目の上部には『御香典』や『御仏前』を書き入れます。
外袋に書く文字の大きさですが、市販サイズの袋に書く場合は、一文字あたりタテ2cm×横2cmくらいだと袋全体に対する文字の大きさのバランスがよくなります。
次に、水引の結び目の下部には、あなたのフルネームを書き入れます。
名前の文字の大きさは、文字数にもよりますが、一文字あたりタテ1.2cm~1.5cm×横1.2cm~1.5cmくらいが丁度いいです。
袋の中心へきれいに書き入れるためには、
- 袋に左右の中心線を引く。※後で消せるように鉛筆で薄く線を引く
- 中心線の上に表書きと名前を書き入れる
- 書き入れた文字を十分に乾かす
- 鉛筆で引いた中心線を消しゴム等で消す
といった方法がいいですよ。
不祝儀袋を連名で出すときの書き方
お通夜やお葬式の場合は、不祝儀袋を連名で書いて包み、代表者だけが参列するということもあります。
もしも、あなたが代表者として参列する場合は、お金を包む人の名前をあなたが書かなくてはなりません。
その場合、どのようにして書くのがよいのでしょうか?
『御香典』などの表書きは先にお伝えしたような手順で書けば大丈夫ですが、問題は【連名での名前の書き方】です。
まず、【2名分】を書く場合は、
- 中央に【目上の人】の名前を書く
- その左隣にもう一人の名前を書く
となります。
次に、【3名分】を書く場合は、
- 中央に【一番目上となる人】の名前を書く
- その左隣に【二番目に目上となる人】の名前を書く
- さらにその左隣に最後の一人の名前を書く
となります。
4名以上での連名となると、一つの袋に全員分の名前を書くのではなく、
- 中央に『〇〇一同』と書く
- 袋の他に別紙(白い便箋や和紙)を用意し、目上の人から順番に右側から縦書きで名前を書く
という方法が好ましいです。
中袋(内袋)の書き方
市販の不祝儀袋には、外袋と中袋(内袋)がセットになっているものが多いです。
中袋は必ず使用しなければならないものではなく、不祝儀袋のタイプによっては中袋が付いていないものもあります。
中袋がある場合には、
- 包む現金の金額
- 氏名
- 住所
を書き入れます。
中袋は、お葬式の後で喪主が【どこの誰がいくら包んでくれたのか】を確認するときに使用しますので必ず記入しておきましょう。
中袋がないタイプのものは、外袋の裏側へ、金額、氏名、住所を書き入れてください。
数字は【旧漢字】で書く
不祝儀袋の中袋または外袋の裏側には包む金額を書き入れますが、タテ書きの場合には数字は【旧漢字】を使って書くというのが一般的です。
不祝儀の相場の金額を旧漢字で書くと、
- 3千円⇒『参阡圓』
- 5千円⇒『伍阡圓』
- 1万円⇒『壱萬圓』
- 3万円⇒『参萬圓』
- 5万円⇒『伍萬圓』
- 10万円⇒『壱拾萬圓』
となります。
また、旧漢字で金額を書き入れる時には『金〇〇圓也』とするのがよいでしょう。
不祝儀袋の金額欄が横書きタイプは、金額をアラビア数字でもかまいません。
不祝儀袋へのお札の入れ方
不祝儀袋を書き終わったら、袋の中に現金を入れます。
不祝儀袋にお金を入れるときは、【お札が新券かどうか】と【お札の向き】に注意をしましょう。
結婚式でご祝儀を包むときと同様に、不祝儀を包むときにもお札の取り扱いにマナーがあります。
しかし、これから紹介するのは、あくまで【マナー】であって【儀式における決まり事】ではありませんので、一般的なマナーとして知っておくだけで十分です。
お葬式で包む御香典や御霊前には新券を使用しない
不祝儀袋にお札を入れる前に、お札が【新券かどうか】を確認してください。
お葬式(お通夜)のときに包む『御香典』や『御霊前』には新券を使用しないというマナーがあります。
これは、新しいお札を使うと、まるで【不幸を待っていた】かのような印象を与えかねないからです。
『御香典』や『御霊前』を包むときに、もしも新券しか持っていない場合は、軽くお札を折っておけば問題ないので、『明らかに新券だとわかるお札を避ける』というくらいに考えておけばOKです。
とはいえ、あまりにボロボロのお札を使用するのも逆に失礼なので、常識的な範囲でお札を入れるようにしてください。
お葬式で包むお金(お札)の入れ方
次に『お札を入れる向き』にも一応の決まりがありますのでご紹介します。
中袋がセットになっている不祝儀袋の場合は、
- 中袋へ書き入れた内容に誤りがないか再度確認する
- 中袋を【裏面が見える】ように持つ
- お札を【人物が見える】ように持つ
- お札の向きを【人物が下側になる】ように持つ
- その向きのままお札を中袋へ入れる
- お札の入った中袋を【表面が見える】ようにひっくり返す
- 外袋を【表面が見える】ように持つ
- 外袋と中袋が【表面が見える向き】にしたまま、中袋を外袋の中へ入れる
という手順でお札を入れてください。
外袋のみというタイプのものは、
- お札を【人物が見える】ように持つ
- お札の向きを【人物が下側になる】ように持つ
- お札をそのまま裏返す
- 外袋を【表面が見える】ように持つ
- 外袋の中へお札を裏返したままの向きで入れる
という手順でお札を入れてください。
中袋がある場合も無い場合も、お札は人物が裏側を向くように入れます。
これは、『お札の人物の顔が見えないようにする=悲しみのあまり顔を伏せている』ということを表現しています。
御仏前には新券を使用してもかまわない
『御香典』や『御霊前』には新券を使用しないのが一般的なマナーですが、法事(回忌法要)のときに包む『御仏前』の場合はどうでしょうか?
法事の時に包む『御仏前』には新券を使用してもかまいません。
お葬式は急に日程が決まり、そして法要の日まで数日しかないので、参列者は新券を用意する時間がありません。
一方で、法事の日程はだいぶ前から分かっています。
先の日程が分かっていて、しかも法要当日まで十分な日数がある場合は、新券を使用した方がよいでしょう。
とはいえ、【仏事全般において新券を使うのはマナー違反】という認識の人も多いので、『御仏前』であっても新券を使用しない人もいます。
まとめ
不祝儀袋はお葬式や法事で使用されるものなので、不祝儀袋に関する知識は【仏事の基本的な知識】ともいえます。
あなたの年齢くらいだと【仏事へ参列する機会】が少ないと思いますが、社会人の一般知識として仏事のこともある程度知っておいて損はありません。
まずは、今回の記事のテーマである『不祝儀袋』について知ってほしいと思います。
あなたの部下から「不祝儀袋はどう書けばよいのですか?」と訊かれた時に、すぐに答えられるようにしておいてください。
そして、お坊さんの僕としては、仏事の作法やマナーだけでなく、その先の『仏の教え』についても知っていただけると嬉しいです。