お坊さん歴20年以上の未熟僧(みじゅくそう)と申します。
- お葬式にはどんなコートを着て行けばいいの?
- 今、自分が持っているコートでも大丈夫かな?
- みんなはどんなコートを着ているの?
真冬など『寒い時期』にお葬式へ参列するときは【コート】を着て行く人が多いです。
しかし、何かと決まりごとの多い仏事ですから、「もしかしてコートにもマナーがあるのかな?」と心配になりますよね?
お察しのとおり、じつは、お葬式に着ていく『コート』の色、形、素材にそれぞれマナーがあり、大まかに言うと、
- 光沢のない『黒色』、または『黒に近い色』のもの
- フードやファーがないもの
- 余計な装飾がないもの
- 毛皮を使っていない(偽物でもダメ)もの
- 歩いてもヒザが隠れるくらいの長さがあるもの
といった決まりがあります。
せっかく【喪服のマナー】を守っていても、【コートのマナー】が守られていなければ、結局は恥をかいてしまいます。
この記事では、お坊さんの僕がお葬式に適したコートの基準について詳しく紹介しています。
この記事を読めば、お葬式に着て行くコートに関する不安や疑問が解消できますので、ぜひチェックしてみてください。
お葬式に適したコートの基準
お葬式の知らせはいつ来るか分かりませんので、それが真冬のような寒い時期になることもあります。
寒い時期のお葬式となれば、喪服の上に【コート】を着て行くことになりますよね。
じつは、喪服の着用に関するマナーがあるように、お葬式に着て行く『コート』にもマナーがありますので、ちゃんと【お葬式に適したコート】を選びましょう。
では、お葬式に着て行くのに適したコートとはどのようなモノなのでしょうか?
お葬式に適したコートは、
- 光沢のない『黒色』、または『黒に近い色』
- フードやファーがない
- 余計な装飾がない
- 毛皮を使っていない(偽物でもダメ)
- 歩いてもヒザが隠れるくらいの長さがある
というのが基準となります。
しかし、上記のような基準を全て満たすようなコートは数が少ないかもしれませんので、【できる限り基準に近いものを着て行く】というスタンスでかまいません。
要するに、できるだけ暗い色でシンプルな形の、他の人から【カジュアル】だと思われないようなコートを着ることが大切です。
お葬式では喪服を着ますが、そこには『喪主と同じように、私も故人を亡くしたことを深く悲しみ、心から冥福を祈っています』ということを意思表示する意味があります。
ですから、喪服と同じように、着て行くコートにもそのような意思表示の意味を込めて、できるだけ黒色のものが好ましいというわけです。
ちなみに、昔の喪服は『白色』だったのですが、明治期以降は諸外国に合わせるなど、さまざまな理由により【黒色】になりました。
お葬式での服装の意味を知っていれば、喪服やコートを選ぶ時の判断ができるようになりますので、興味のある方は『喪服を持っていない時はどう対処する?喪服の意味と必要性を解説します』を参考にしてみてください。
礼装用コート
お葬式で着用するのは『喪服』と決まっています。
しかし、喪服の上に着る【喪服専用のコート】というものはありません。
喪服専用のコートはありませんが、喪服は礼服なので『礼装用コート』を着るのが最適です。
ただし、礼装用コートを着る場合は少し注意が必要です。
じつは、『礼装用コート』というのは【正装用のコート】なので、男性であれば礼装用コートの中に着るのは、正喪服の《モーニング》となります。
しかし、今はみんなモーニングではなく【準喪服】となるブラックフォーマルスーツを着ますので、中は略式なのに外は正式みたいな何とも変なバランスになってしまいます。
そうすると、「じゃあ、中には正式な喪服を着ればいいのでは?」という話になるのですが、じつは、正喪服を着るのは喪主だけなので一般弔問客が正喪服を着ると余計に変なのです。
お葬式で礼装用コートを着用するのはいいのですが、【本来なら変なバランスで着ている】ということは知っておきましょう。
コートの色
お葬式に着て行くコートに関する注意点の1つに『色』があります。
コートの色は、光沢のない『黒色』がベストです。
そのようなコートがなければ、
- 濃いグレー
- できるだけ黒に近い色
- 少し明るくても落ち着いた色で単色のもの
で代用してもかません。
つまり、光沢のない『黒色』がなければ【なるべく黒色に寄せて、なおかつ単色】であるものを着るということです。
黒色に近い方がいい理由は、先ほども言いましたように『遺族と同じように、私も深く悲しみ、心から冥福を祈っています。』ということを表すからです。
ですから、お葬式に【派手な色】のコートで行くなんてことは言語道断なので注意しましょう。
また、注意すべきは『色』だけではなく、できるだけ柄の入っていないモノを着て行くようにしてください。
いくら光沢のない黒色でも、柄が入ると【カジュアル感】が出てしまいますので、お葬には『黒に近い色』で『無地』のコートを着用しましょう。
コートの形やデザイン
お葬式に着て行くコートは『形』や『デザイン』にも注意が必要です。
コートの形としては、
- トレンチコート
- チェスターコート
- ステンカラーコート
あたりが無難です。
お葬式に着て行けるかどうかの基準は『ビジネスでも使えるモノかどうか』で考えましょう。
お葬式とビジネスはまったくの別物ではありますが、【他者に対して失礼にならない】という点では共通しています。
そういう意味では、
- ダウンジャケット
- ダッフルコート
- ピーコート
などは、普段着としては大活躍する防寒着なのですが、お葬式という場所には不向きです。
とはいうものの、最近ではコートのことまでうるさく言わないですし、【黒色や濃いグレーだったらOK】という具合に、だんだんとマナーが緩くなってきています。
続いて、コートのデザインのついての注意点があります。
いくらマナーが緩くなってきたとはいえ、フードやファーが付いているものや色んな装飾が付いているものはNGです。
とりあえず、ファーが付いているコートは『動物への殺生』を露骨に連想させるので、お葬式には不適切です。
しかし、フードやファーが『取り外し可能』である場合、それらを外せば問題はありません。
また、お葬式では【慎ましやかに装う】べきなので、装飾がたくさんついているコートも避けるようにしてください。
そして、『コートの長さ』も要注意です。
コートの長さの目安は【歩いてもヒザが隠れるくらい】です。
ヒザよりも短いとカジュアルな印象を与えてしまう可能性があります。
カジュアル感がある長さかどうかの境目は『ヒザ』なので、
- ヒザより上はカジュアル
- ヒザより下はフォーマル
という認識で大丈夫です。
コートの素材
お葬式に着て行くコートは『素材』にも注意が必要です。
お葬式のコートは、
- 毛皮ではないもの(偽物でもダメ)
- ビニール製ではないもの
ということに注意してください。
先ほども言いましたが、やはり【毛皮】はヤメましょう。
毛皮のコートには、本物の皮ではなく偽物もありますが、見た目はあまり変わらないのでお葬式には不適切です。
あとは、ビニール製のコートもヤメておきましょう。
ビニール製なので光沢が出てしまうため『地味でシンプル』なコートとはいえません。
ただし、レインコートはOKです。レインコートのような実用性ではなくファッション性を目的に作られたビニール製のコートはダメです。
実際のところ、みんなはどんなコートを着ているの?
これまで、『お葬式へ参列するときに適したコートの基準』について書いてきました。
でも、実際のところ他の人たちはどんなコートを着ているのか気になりませんか?
僕が20年以上お葬式をしてきた経験から言いますと、じつは、みんな意外と好き勝手に着ているというのが現実だったりします。
本記事でこれまでさんざん『基準』とか『マナー』とかエラそうに言ってきましたけど、実際のところはそんなもんですよ。
さすがにメチャクチャ派手な格好をする人はいませんが、黒色のコートでも【ファー】が付いていたり、明るい茶色のダッフルコートを着ていたりと、みなさん自由に着ています。
でも、それはきっと多くの人が『喪服のマナー』は知っていても『コートのマナー』までは知らないからです。
それに、お葬式の服装で『黒色が適している理由』や『地味であるべき理由』を知らないと、お葬式に着て行ってもよいかどうかの判断なんてしようがありません。
しかし、ここまで読んでくださったあなたなら、もう自分自身で判断できるはずです。
着るものは人それぞれ自由なのですが、これからは、お葬式という【故人を弔う場所】ということをあなた自身で考えて服を選んでほしいなと思います。
まとめ:お葬式に行く時は、とにかく地味なコートを選びましょう。
お葬式に着て行くコートには、喪服と同じようにマナーがあります。
コートのマナーは、
- 光沢のない『黒色』、または『黒に近い色』
- フードやファーがない
- 余計な装飾がない
- 毛皮を使っていない(偽物でもダメ)
- 歩いてもヒザが隠れるくらいの長さがある
というのを基準にしてください。
要するに、『とにかく黒色もしくは黒色に近い単色で地味な形のコートを着て行く』ということです。
喪服もそうですが、お葬式で『黒くて地味なもの』を着る理由は、深い悲しみと、心から冥福を祈る気持ちを表すためです。
つまり、あなたの服装が『あなたの故人に対する気持ち』を表すということです。
もしかすると、この記事にあるような基準を満たすコートをあなたは持っていないかもしれません。
もちろん、基準のすべてを満たさなきゃダメというわけではありませんので、今あなたが持っているコートが最低限の部分だけでも満たしていれば問題はありません。
しかし、あなたはもう立派な社会人です、今後もお葬式に参列する機会があるでしょう。
ですから、場合によっては【お葬式にも着て行けるようなコートを購入する】ということも検討した方がいいと思います。
心から故人の冥福を祈り、しっかりと感謝の気持ちを伝えるために服装のマナーを守るのです。
そんなあなたを見た故人も、きっと「寒い中わざわざ来てくれてありがとうね。」と喜んでくれることでしょう。
※お葬式の持ち物チェックはこちらの記事でどうぞ。