お坊さん歴20年以上の未熟僧(みじゅくそう)と申します。
- お墓の形にはちゃんとした決まりがあるの?
- 自分の好きな形(デザイン)でお墓を建てたい。
- お墓の形を決める時の注意点は?
- やめた方がいい形はあるの?
お墓は【大切な家族の遺骨】を納める場所です。
ですから、どんな形のお墓を建てるべきなのかで悩んでしまう人が多いのです。
じつは、
お墓の形は、あなたが自由に決めていい
のです。
昔は、お墓の形というのが大体決まっていましたが、最近では自由な形でお墓を建てる人が増えています。
しかし、自由であるからこそ、お墓の形は慎重に決めなくてはいけないのです。
よく考えずにお墓の形を決めてしまうと、後代までずっと迷惑をかけてしまうことになります。
この記事では、
- お墓の形を決めるときの心得
- お墓の形を決めるときの注意点
- どんなお墓の形にすればいいのか
について書いています。
最後まで読んでいただければ、お墓選びで失敗をせずにすみますので、ぜひチェックしてみてください。
お墓の形は自由です
先日、ある霊園で50代と見られる夫婦が墓地の見学に来ていました。
霊園内に建っているお墓を見てまわり、自分の家のお墓を建てるときの参考にしていたようです。
霊園にあるお墓は、お寺の墓地とは違っていろんな形のお墓が建てられています。
もちろん、昔ながらの【和型】のお墓もありますが、最近では全体の半分以上は【洋型】が建っています。
見学に来ていたご夫婦の目に留まったのも、やはり洋型のお墓でした。
あなたはどのようなお墓を建てようと考えていますか?
きっとあなたも、形式の決まっている和型ではなく、デザインが豊富な洋型のお墓なのでは?
でも、洋型のお墓の形を決める時はよ〜く考えてくださいよ。
デザインが豊富であるが故に、デザイン選びに失敗すると【代々にわたって迷惑をかける】ハメになりますので。
お墓は、あなただけではなく代々受け継いでいくものですから、後代の人に迷惑をかけないようにお墓の形は慎重に選ばないといけません。
お墓にはいろんな由来や意味があって現在のような形になっています。
ですから、現在あるような自由なデザインのお墓に対して否定的な見方をする人もいます。
でも、お坊さんである僕としては、
お墓の形は自由に決めてかまわない
と考えています。
お墓を建てることは、ご先祖様や亡き家族を供養する気持ちを表す最上級の行為なんです。
供養の気持ちを表す方法は自由ですから、お墓の形も自由なわけです。
お墓については『お墓の意味や役割とは何?お墓参りでお墓はパワースポットに育つ?』の記事で詳しく解説しています。
ただし、いくら『自由』とはいえ、常識の範囲を逸脱するデザインや、後代に残すにあたって不適切なデザインは控えるべきです。
あなたが建てようとしているのは『お墓』であって、『芸術作品』ではありませんので、そこは十分に注意してください。
ですから、お墓の形はあなたが自由に決めてもよいのですが、後述する注意点をよく考えた上で決めましょう。
お墓は代々受け継いでいくもの
お墓は、亡き家族の遺骨を納めるための大切な場所です。
そして、お墓は遺骨を納めるだけではなく、じつは、『あの世とこの世を結んでいる神聖な場所』でもあるのです。
私たちは、お墓を経由してあの世の故人と通じ合うことができるんです。
お墓はそれくらい重要なものですから、今のあなたの気分だけでお墓の形を決めてはいけません。
お墓は、
代々受け継いでいくもの
ということを忘れないでください。
っていうか、むしろあなたよりも後代の人の方がお参りする機会が多くなるんですからね!
じゃあ、どのような形にすればいいんでしょうね?
お墓の形は、
- 【和型】:背の高い縦向きの三段構造の形
- 【洋型】:背の低い横向きの二段構造の形
の2つに大別できます。
あなたくらいの年代なら、『お墓』といえば【和型】を最初にイメージしませんか?
でも、最近は洋型のものが急増していて、お墓に対するイメージがずいぶんと変わってきています。
洋型のお墓は、和型のものよりも圧倒的に自由度が高いというか、デザイン性に富んでいるから人気があるんですよね。
今後は『和型』を建てる人がどんどん減って、近い将来に和型のお墓は姿を消すでしょう。
ちなみに、あなたも洋型のお墓がいいんでしょ?
きっと、どんなデザインにしようかと、いろいろ想像が膨らんでいることでしょうね。
ところで、形を決める時にあなたのお子様にもちゃんと相談をしたのですか?
先ほどから言っているように、お墓は後の人たちもお参りするものですからね。
あなただけではなく、お子様の意見もしっかりと聞いて、お墓を【家族全体のもの】として考えなくちゃダメですからね。
家族みんなが「コレにしよう!」と納得して決めた形でお墓を建てるようにしましょう。
あなただけの意見で建てたお墓は、ヘタをすると《後代の人にとって迷惑なもの》になってしまうかもしれませんよ。
お墓の形(デザイン)を決める時の注意点
お墓の形を決める時には、
- 後代の人たちも使うことを考える
- 霊園の規定に沿ったものにする
- お墓として適さない形や彫刻は避ける
という点に注意してください。
何度も言いますが、【後代の人も使うことを考える】ということが非常に大事ですからね。
この大事なことができていないお墓がたまにあるんですよ。
初めてそういうお墓を見た時に、「えっ?何でこの形にしたの!?」と衝撃を受けたのを覚えています。
まずは霊園の規定を確認する
あなたがすでに契約している霊園には、
建てるお墓に関する規定
がありますよね?
えっ?そんなの知らない?
それはマズいですねぇ。
ほとんどの霊園には、石の種類や墓石の高さに規定があるんですよ。
自由にお墓の形を決めてよいと言いましたが、それは当然ながら『規定に沿っている』ことが前提です。
お墓の形を決める前に、建てるお墓に関する規定がどのようなものか、事前に必ず管理事務所へ確認をしておいてくださいね。
せっかく家族で話し合って決めたのに、後になって「それだと建てられません」と言われた、なんてことのないようにしましょう。
お墓に適さない形は避ける
僕が20年以上お坊さんをしてきた中で、とても印象に残っている【お墓には適さない形】を2つ紹介します。
この2つは洋型の中でも『デザイン墓』と呼ばれる部類のお墓でした。
もしも、あなたが次の2つのうちのどちらかに該当していたら、すぐに考えを改めることを強くおすすめします。
ハート型のお墓
ある霊園に法事で行ったとき、何やら変な形のお墓が目に入りました。
僕は、お墓の前に石材店の人が立っていたので訊ねてみました。
すると、
との返答。
それを聞いたぼくは、
と叫んでいました。もちろん、心の中でね。
僕の言っていること、おわかりいただけますか?
そのお墓は、ハートの形をパンパンに膨らませたような形状でした。
きっと、お墓としても機能させたかったんでしょうね、無理やり横に膨らませ過ぎているもんだから、ハートの凹みの部分が、どう見ても『お尻の割れ目』そのもの。
あれじゃ、お墓参りのたびに【お尻に向かって手を合わせている】ようなもんです。
石材店の人は完成図をちゃんと施主に見せていたのか?
そんなことを疑ってしまうような、僕にとっては衝撃的で忘れられない形のお墓でした。
というか、もともと、ハート型は字を彫刻できる面積を狭めてしまいますし、皆が好むという形ではありません。
なので、悪いことは言いません、【ハート型】のお墓はヤメた方がいいです。
野球ボール型のお墓
施主に連れられてお墓の前に着いた時、僕は言葉が出ませんでした。
キレイに磨きあげられた球体の石にボールの縫い目が彫られていました。
そうです、【野球ボールの形】をしたお墓です。
お墓が野球ボールの形だなんて、まさに『変化球』!
その施主は、なぜ【野球ボールの形】にしたのでしょう?
理由はとてもシンプルで、故人が《大の野球ファン》だったから、なのだそうです。
そうですよね、せっかくだから故人が大好きだったものを『お墓』という形で残したかったんですよね。
それだけ故人のことを大切に思っているのでしょう。
でもね。
そのお墓、いずれは他の家族も入るんじゃないんですか?
えっ、まさか家族全員が《大の野球ファン》なんですか?
さらに言えば、後代の人たちも全員が《大の野球ファン》になるに違いない、ということでしょうか?
このお墓も先ほどのハート型と同じですね、後代の人も使うことをまったく考えていない!
これが、1人しか納骨しないような『個人墓』であれば何も問題はありませんよ。
でも、家族みんなや後代の人たちが使うには《不適切》と言わざるを得ません。
お墓の形を決めるのは施主の自由ですが、あまり【その時の感情】だけに流されてはダメですよ。
故人のためを想って決めた形は、後代の人にとっては《自分には何の関係もない形》のお墓になっちゃいますんでね。
また、独特の形をしたお墓は目立ちますから、他のお墓と【差別化】できるのはいいのですが、もしかすると、それは『単なるあなたのエゴ』かもしれませんよ。
オリジナルデザインを追求し過ぎたお墓は、結局はその使い勝手の悪さから撤去される運命となりますので要注意ですよ!
お墓に適さない彫刻のデザインは避ける
【お墓に適さない形】の次は、【お墓に適さない彫刻のデザイン】を紹介します。
お墓の正面には、『〇〇家之墓』というような家名や、あるいは『絆』『和』『感謝』といったようなメッセージを彫刻します。
その他にも、絵などの図柄を彫刻するというお墓も多いです。
じつは、お墓の形だけではなく、この『彫刻』にも注意が必要なんです。
海や山の図柄の彫刻
故人のご家族がお墓を見つめながらおっしゃいました。
ご家族の視線の先には、お墓の正面に大きく【ワイキキの浜辺】の絵が・・・。
海はこれまでにいろんな生命を生み出した場所であり、今でも数えきれないほどの生物が海の中で生命活動を続けています。
ですから、海はまさに生命の象徴ともいえます。
しかし、時には、その海が猛威をふるって多くの生命を奪うこともあります。
また、海では毎年のように水難事故が発生し、たくさんの命が失われています。
何が言いたいかというと、
今後、もしもご家族の誰かが海で亡くなってしまったらどうするんですか?
ってことです。
例えば、家族の誰かが海で亡くなってしまった場合、ご遺骨を【ワイキキの浜辺】が彫刻されたお墓に納骨するんですか?
海で亡くなったのに、海の景色が彫ってある場所に?
これは、海だけではなく『山』の場合も同じことがいえます。
もしも、雪山で遭難して亡くなった家族を【富士山】の彫刻があるお墓に納骨するつもりなの?
これって、ぼくの考え過ぎですかね?
故人を大切に思う気持ちは、本当に素晴らしくて清らかなものです。
しかし、お墓の形を決める時と同じように、あなたの【その時の感情】だけでお墓への彫刻のデザインを決めてしまわないよう、十分に注意してほしいと思います。
一人の仏様だけを特別に扱う内容の彫刻
おすすめできないお墓の彫刻のデザインがもう一つあります。
それは、【1人の仏様だけを特別に扱う】内容の彫刻をすることです。
以前に見たのですが、お墓の正面の全スペースを使って、「◯◯君に捧ぐ。ここに君の生きた証を〜」と、1人の仏様に対する手紙のようなメッセージが彫刻されていたお墓があったんです。
それは、故人のご両親がどれほど我が子を愛し、そして、どれほどの悲しみであったのか、若くして亡くなった我が子に対する親の気持ちがよく表れている内容でした。
愛する我が子に先立たれたのですから、そのようなお墓にしたくなるのは当然ですよね。
僕にも子どもがおりますので、その気持ちはとてもよく分かります。
分かるんですけど、
やはり、お墓が1人だけのものではないということを忘れてはいけません。
もしも、そのお墓が1人しか納骨しない『個人墓』であるならば、まったく問題はありません。
でも、そのお墓は大きくて立派なもので、明らかに【代々受け継いでいくため】のものでした。
その家で後から亡くなられた他のご家族は、そのお墓に自分の居場所が無いような気になってしまうんじゃないですかね?
しつこいようですが、お墓は【後代の人もお参りするもの】であることを決して忘れないでくださいね。
どんなお墓にすればいい?
お墓の形を決める時の注意点についてはもうご理解いただけましたよね?
となると、次は、
「じゃあ、どんなお墓がいいの?」
ってことになるわけです。
すでにお伝えしたように、あまりに【独特すぎる形】はおすすめできません、高確率で後悔をしますから。
僕は、せっかくこの記事を読んでくれたあなたには後悔をしてほしくないんですよね。
ということで、ここからは【お墓を建てる上での最低条件】をご紹介します。
大谷石と白御影石は選択肢から除外
まず、お墓を建てるには、使用する『石の種類』の選択をしなければいけません。
僕だったら石の種類を決めるときは、
- 大谷石(おおやいし)
- 白御影石(しろみかげいし)
この2つをまず除外しますね。
特に『大谷石』は論外!
あっ、大谷石の関係者の皆様ごめんなさい。
でもね、僕ってウソつけないの。
大谷石は、《値段が比較的安い上に、軽くて加工がしやすい》という理由で数十年前に流行ったんですよ。
でも、これがなかなかの問題児でございまして・・・。
ものすげぇスピードで腐食するもんですから、建てた当初はキレイでも、数十年後には『うかつに触れると崩れる』というような【危険なお墓】が出来上がります。
もしかすると、昔は採れる石の種類自体が少なくて、選択肢がなかったんでしょうかね?
まぁ、もちろん同じ大谷石でも上級ランクのものだったらそんなことはないのかもしれませんが。
でも、上級ランクの大谷石を使うんだったら、もっと頑丈な【御影石】を使う方がエエんとちゃうか?って思うんですよ。
どうしても大谷石にこだわりがある人以外は、他の石を使うようにした方がいいです。
大谷石が論外となると、もはや御影石くらいしか墓石の選択肢がありません。
しかし、御影石にも注意が必要です。
もし、御影石でも『白御影石』を選ぶのなら、伝えておかなきゃいけないことがあります。
白御影石は、頑丈でありながら比較的お値段も安くて人気の石です。
でも、残念なことに、白御影石はそのまま字を彫っただけだと【刻んだ文字が見えにくい】んですよねぇ。
これが白御影石の唯一のデメリット、本当に惜しい!
だから、白御影石を選ぶのであれば、お金は別途必要ですが、刻んだ文字にはペンキで着色した方がいいんです。
そして、仏様が増えるたびに、字を彫ってペンキを入れてもらってください。
ぼくは、そういうのが面倒なので白御影石は選ばないです。
ということで、ぼくが墓石を選ぶなら、
- ブラック
- グレー
- グリーン
の御影石ですね。
これらの色の御影石なら、そのまま字を彫っても自然に文字が浮き出て見えますから。
そして、白御影石よりも見た目の重厚感と高級感が全然違います。
あなたなら、どんな石を選びますか?
お墓の形は、洋型で【四角形】を基本にする
なぜ、お墓って四角形で造られているんでしょうね?
お墓は本来、『五輪塔(ごりんとう)』を元に造られているので、もっと凹凸がたくさんあるものなんです。
それが、時代を経て現在のような四角形になったんです。
四角形になった理由は簡単で、
管理するのに効率が良い形だから
です。
まず、お墓を拭き掃除する時ですが、あちこち凹凸があるよりも、表面が平らな方が断然ラクですよね?
そして、四角形の方が字を彫刻する面積を効率よく、より広く確保できるんですよ。
あとは、昔の技術だと、四角形の方が石材を加工する(石を切る)時に簡単だったので、加工の費用もそれだけ抑えられたようです。
それに、誰にも文句を言われない形というのも安心じゃないですか?
家ごとに多少の違いはあっても、だいたい同じような形をしているのには、それなりの理由があるということでしょうね。
つまり、ハート型やボール型のような奇抜なデザインではなく、基本的には四角形をベースにした方が結果的にいいんですよ。
そこから、
- 頭の部分を少しカーブさせたり、ウェーブさせる
- 墓石の角を丸める(面取り)
- 正面を少しだけ丸く膨らませる
- 落ち着いた絵柄を彫刻する
といったような、オリジナルの部分を作り出していくんです。
古い考えかもしれませんが、長く使っていくもの、ということを考えると、四角形をベースにした洋型のお墓が無難なんですよね。
インターネットを見て、建てたいお墓の形や彫刻のデザインをあらかじめ決めておく
お墓の形を決めるにあたり、できるだけ失敗しないようにするコツがあります。
まぁ、コツというほどのものではないんですが、
インターネットを見て、建てたいお墓の形や彫刻のデザインをあらかじめ決めておく
といいですよ。
霊園に行けば、石材店の人がいろいろと案内をしてくれます。
そして、すでに建っているお墓などを参考にしながら、お墓の形や彫刻のデザインを決めていくんです。
この時に、先にインターネットを見ておいて、あらかじめ希望の形や彫刻のデザインを決めておくと後の話がスムーズに進められます。
インターネットで十分に予習をして、あなたが建てたいお墓のイメージをちゃんと固めておくんです。
石材店の人だって、お客さんの希望がハッキリしている方が案内をしやすく、詳しく説明する方に時間を使うことができますから、双方にとってメリットがあります。
まずは、できるだけたくさんのサイトを見て、十分に比較検討をしてください。
この記事にたどり着いているあなたなら、そのくらいの検索はできるはず。
まとめ:お墓の形は自由ですが、後代の人のこともよく考えてから決めましょう
最近の傾向としては、新規にお墓を建てる場合、和型よりも洋型のお墓を選ぶ人が圧倒的多数を占めています。
そりゃそうですよね、現在はあらゆる面で『個人の意思を尊重する』時代なんですから、デザインの自由度が高い【洋型】を選ぶに決まってます。
どのようなお墓を建てるのかは『あなたの自由』です。
霊園の規定内であれば、どんな石を使って、どんな形にして、どんな文字で彫刻するか、すべてあなたの好きなように決めていいんですよ。
ただし、それらを決める時は本当によく考えてください。
そのお墓を守るのは、あなただけではありませんからね。
後代の人たちによって【代々受け継がれていくもの】であることを忘れちゃいけませんよ。
今のあなたの感情だけでお墓の形を決めると、きっと後悔することになります。
必ずご家族と話し合って、よく考えて、それからお墓の形を決めてくださいね。
あなたの建てたお墓が、100年後も変わらずお参りされているような素敵なお墓となることを願っています。