お葬式をする目的。お葬式でお坊さんがしていることを具体的に解説!

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お坊さん歴20年以上の未熟僧みじゅくそうと申します。

この記事を読んで分かること
  • お葬式をする目的
  • お葬式でお坊さんがしていること

あなたは「なぜお葬式をするんだろう?」と疑問に思ったことはありませんか?

お葬式は、故人が安心して仏の世界へ旅立ってもらうための大事な儀式です。

この記事では、『お葬式をする目的』を理解してもらうために、僕たちお坊さんがお葬式中にしていることを紹介しています。

お葬式について深く知っていただくことで、より心のこもった弔いができますので、興味のある方は最後まで読んでみてください。

この記事は【仏式のお葬式】を前提とした内容です。また、浄土真宗の門徒さんにはあまり参考にならない内容かもしれませんのでご了承ください。

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お葬式をする目的

仏教には『諸行無常(しょぎょうむじょう)』という言葉があります。

この言葉は、『あらゆるもの(諸行)は常に同じようにあり続けることはできない(無常)』という意味です。

私たちの『命』もまた【無常】であり、いつか必ずその命を終えます。

そんな限りある命の中で、たくさんのことを私たちに教え与えてくださった故人に対し、『お葬式』をすることで感謝の気持ちを伝え、心を込めて冥福を祈ります。

また、仏教的な目的としては、お葬式を通じて故人に『仏弟子』となってもらい、たくさんの仏様のもとで絶対的な安らぎを得ていただくのです。

しかし、近年では世間一般の『お葬式』に対する考え方が急速に変化してきています。

以前までは、

  • 故人のために何をしてあげられるか
  • 大勢の弔問客にどう対応するか
  • 一般的な体裁は保っているか

というように、『故人のために最大限できること』を優先的に考えていました。

しかし、最近ではとにかく、

  • いかに出費を抑えるか
  • いかに簡略化するか
  • 一般的な体裁など無意味

という、『故人のために必要最低限するべきこと』を優先的に考えています。

そのように変化した原因は、長年にわたる不景気の影響もありますが、主に【仏事への無関心】だと思います。

仏事への無関心により『お葬式』の意味を知らないと、それは単なる、

  • 何だかよくわからないが一応はやっておくもの
  • なぜかたくさんの出費をするもの

でしかなくなります。

その結果、当然ながら「よくわからないものなんかに時間もお金も使う必要はない。」という考えになりますよね。

これは、僕たちお坊さんが『お葬式にどんな意味や目的があるのか』ということを、しっかりと伝えてこなかったのが悪いんです。

そういった反省をふまえ、この記事で【お葬式でお坊さんがしていること】を解説しながら、お葬式について説明していきます。

お葬式中にお坊さんは何をしているのか

多くの人は、お葬式でのお坊さんの仕事は『お経を読むこと』だと思っています。

しかし、それは『半分だけ正解』で、じつは、お経を読むこと以外にもっと重要なことをしています。

お坊さんは、お葬式の中で故人に『引導(いんどう)』を渡しており、これがお葬式で1番重要なんですよね。

『引導』というのは、故人が仏の世界へ旅立つにあたり、知っておくべき情報を伝え、持っておくべき物をお授けすることです。

お坊さんは、お葬式の中で故人に引導を渡し『仏弟子』となってもらうことで、故人があの世で多くの仏様に守られ、絶対的な安らぎを得られる(=悟りをひらく)ようにしています。

ですから、お坊さんにとってお葬式は故人に『仏弟子』となってもらうための儀式という認識なんです。

また、お坊さんは引導を渡すときに故人に対して『授戒(じゅかい)』をします。

あの世にはたくさんの決まり事があり、それらを総称して『戒律』といいますが、その戒律を故人に授けるので【授戒】というんですよね。

授戒によって戒律を授かった故人は、その後の名前が『戒名(かいみょう)』に変わります。

戒名とは【戒律を授かり、それを守る者の名前】という意味ですから、お葬式で戒名を授かった人は、戒律を守り続けていきます。

いろんな単語が出てきて分かりにくいかもしれませんので、大まかな流れでいうとこんなカンジです。

  1. お葬式開始※故人はまだ俗世の人のまま
  2. 故人に『引導(授戒を含む)』を渡す※故人は【戒律】を授かる
  3. 故人を仏の道へ引き入れる※故人は仏弟子となり、名前が【戒名】に変わる
  4. お葬式終了
  5. 故人はたくさんの仏様のもとで戒律を守り続ける

お葬式を行うのは、たくさんの仏様が故人を守り導いてくれるようにするためで、それには、故人に引導を渡して仏弟子になってもらう必要があります。

ですから、お坊さんはお葬式をすることで、たくさんの仏様と故人の【橋渡し役】をしているんです。

葬儀と告別式の違い

あなたは、実際に『葬儀』に参列したことがありますか?

参列したことがある場合、そのときのことを思い出してみてほしいのですが、お坊さんがお経を30分以上お唱えしていましたか?

この質問に「はい」と答えたあなたは少し『葬儀』に対する誤解があるかもしれません。

『葬儀』と同じような意味で『告別式』という言葉がよく使われますが、この2つの言葉は意味が違います。

多くの人が『葬儀』だと思っているのは、そのほとんどが『告別式』の部分です。

さきほど説明をしたような、故人に引導を渡す儀式のことを『葬儀』といい、その所要時間はだいたい数分~10分程度です。※宗派によってはもう少し時間が必要かもしれません。

つまり、儀式をしている時間以外はすべて『告別式』の部分なんですよね。

本来であれば『葬儀』と『告別式』は別物なのですが、一般的には両方を合わせて【お葬式】と呼んでいます。

実際に、司会者も開式のときには「故◯◯様の葬儀ならびに告別式を開式いたします。」という言い方をしていますよ。

ですから、お坊さんがお経をお唱えして、参列者のみなさんが故人に向かいお焼香をしている時間の大部分は『告別式』。

告別式はその名のとおり、故人とあなたが対面できる最後の機会であり、別れを告げる式典です。

故人に対する感謝や想いを両手に込めて、心から故人の冥福を祈りましょう。

その間に僕たちお坊さんは葬儀を行い、故人を絶対的な安らぎの地である【仏様の世界】へお導きいたします。

お葬式をする?しない?

最近増えてきましたが、家族が亡くなってもお葬式をせず、はじめから火葬場へ行く『直葬(ちょくそう)』というものがあります。

直葬は、

  • お葬式をすることの必要性を感じない
  • 生前からの故人の強い希望
  • 経済的な事情

などの理由で選ばれています。

大事な前提ですが、お葬式は【必ずしなければならないもの】というわけではありません。

お葬式を【する】か【しない】かは遺族の自由ですお葬式はあくまで『宗教行為』なので、そこに意味を感じなかったり、そもそも信仰心が無いのであれば全くやる必要はないですよ。

ですから、もしもあなたが『直葬』という選択をしても、誰にも非難される筋合いなどありません。

しかし、ちょっとでも『何もしないというのは気が引ける』と思ったのなら、規模は小さくてかまわないので、お葬式をする方向で考えてみてください。

僕はお坊さんをしているので、できればお葬式をしてもらいたいんですよね。

お葬式は、故人に対して【今後の進むべき道】を伝えるものですが、お葬式が無いとそれができません。

だから、僕は「お葬式をしなければ故人が迷ってしまうんじゃないかな?」と心配になるんです。

最近では、『家族葬』や『一日葬』といった、従来のやり方ではなくもっと簡略化したお葬式の形態があります。

経済的な事情でお葬式ができないというのであれば、葬儀社やお寺に相談して、しっかりと交渉すればもっと費用を抑えることも可能です。

ですから、ごく近いご家族だけでもかまいません、小さな規模でかまいませんので、お葬式をしてから故人を送り出してあげませんか?

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まとめ

お葬式は、故人に仏弟子となってもらい、たくさんの仏様たちに守ってもらえるようにするための、非常に重要な儀式です。

ちゃんとお葬式を行うからこそ、故人は安心してあの世へ旅立つことができます。

また、お葬式は故人にとって本当に最後の晴舞台で、故人に直接触れたり、顔を見ながら話しかけられるのもお葬式が最後です。

お葬式を執り行うことは、体力的、精神的、そして経済的にも本当に大変ですが、それだけ大変な思いをするだけの価値はあります。

それに、もしも後になってから【お葬式をしなかったこと】を悔やんでも、もう故人の姿はそこにはありません。

できることなら、喪主やご家族だけでなく、故人と付き合いのあった人たちのためにも、最後のお別れの場を設けていただきたいと思います。

お葬式を執り行い、故人に「今まで本当にありがとうございました。そして、お疲れ様でした。」と感謝をし、みんなで心を込めて送り出してあげると、きっと故人も喜ぶことでしょう。

ですから、故人はもちろん、あなたや故人と縁のあった人たちのためにも、できるだけお葬式をしてあげてほしいなと思います。

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