お坊さん歴20年以上の未熟僧と申します。
- 初めて数珠を買うなら、どんな数珠を選べばいいの?
- 他の人の数珠を借りちゃダメ?
日本のお葬式のほとんどは【仏式】で執り行われるため、参列者は数珠を持って行きます。
ですから、あなたが自分専用の『数珠』を持っていないなら、すぐにでも買った方がいいのすが、どんな数珠を買えばいいのか分からないですよね?
初めて数珠を買うのなら、略式念珠(りゃくしきねんじゅ)を選んでください。
略式念珠を1つ持っていれば、すべての【仏式の法要や行事】で使うことができるので非常に便利です。
また、数珠は『より丁寧な故人の供養』をするためにも必ず1つは持っておいた方がいいです。
この記事を読むと、
- 略式念珠を買うべき理由
- なぜ数珠を買った方がいいのか
が分かります。
あなたがどのような数珠を選ぶべきかが分かりますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
数珠にはどんな意味があるのか

まずは、『数珠』にどんな意味があるのかを簡単に説明します。
数珠には、
- お経を読む回数をカウントする道具
- 数珠を使う人の身体を清める
という2つの意味があります。
お坊さんはお経を繰り返しお唱えする時に、回数を間違わないように『1回お唱えしたら指で珠を1つズラす』という作業をしています。
だから、【回数を数える珠】という意味で『数珠』という名前になっています。
また、仏様のお名前をお唱えする【念仏】のときに使われる数珠なので『念珠(ねんじゅ)』という呼び方もしています。
でも、べつに数珠はお坊さん専用の仏具ではありません。
繰り返しお経をお唱えする時は、誰でも数珠を使っていいのです、というか、本来はそのための仏具です。
もう1つ、数珠を使う大事な意味が『使う人の身体を清める』ということです。
数珠というのは108個の珠で作られています。
細かく言うと他にも珠はあるのですが、重要な意味があるのは、主になっている108個の珠です。
数珠を使っていると、1つ1つの珠に【仏様のチカラ】が宿り、それによって私たちの欲望が少しずつ消えていくと言われています。
私たちの欲望は【108】あるので、これらをすべて消していくために数珠の珠を108個にしているのです。
つまり、お葬式や法事で数珠を持つのは、仏様のチカラが宿った数珠で自分自身の身体を清めて、それから故人や故人の位牌と向き合うためなんです。
数珠の説明をし始めると非常に長くなってしまうので、ここではザックリと説明をしました。
もっと詳しく数珠のこと知りたい人は、『数珠とは何か?数珠を持つ意味と使い方(持ち方)を説明します。』の記事で解説していますので読んでみてください。
数珠には【本式(本連)念珠】と【略式念珠】という2つの種類がある

僕たちお坊さんが使っている数珠の珠は108個あります。
でも、あなたがよく見る数珠って、珠の数がもっと少ないような気がしませんか?
じつは、数珠には、
- 本式(本連)念珠
- 略式念珠
の2種類があるんです。
本式(本連)念珠とは
数珠の基本は、【珠の数が108個】であることです。
そして、僕たちお坊さんもこれを使っています。
要するに、正式な数珠には珠が108個あるんですよね。
この正式な数珠のことを、本式(本連)念珠といいます。
もしかすると、あなたは「故人を丁寧に供養するためにも本式念珠を使いたい」と思うかもしれませんが、それはチョット待ってください。
じつは、本式念珠は宗派によって形状が違います。
ですから、あなたが「数珠はちゃんと本式念珠を使いたい」というのであれば、あなたが信仰している宗派の本式念珠を買わなくてはいけません。
しかし、もしもあなたが他の宗派で執り行われるお葬式に参列する場合、あなたが買った本式念珠は使わない方がいいです。
細かいことを言うようですが、宗派が違う数珠を使うのは好ましくないからです。
そうはいっても、「あっ!あの人は他の宗派の数珠を使ってる!」なんて気が付く人はほぼいませんが。
もちろん、あなたが参列するお葬式があなたの信仰する宗派と同じであれば本式念珠を使ってください。
あるいは、あなたの家の法事の時や、親戚であれば同じ宗派の可能性が高いので、親戚のお葬式の時などにも使えますね。
ただ、本式念珠は【正式】な数珠だが、ある程度は使用の制限があるということを知っておいてください。
略式念珠とは
数珠にはもう1つ、珠の数が108個ではないモノがあります。
そして、お坊さん達が法要でそのような数珠を使うことはありません。
なぜなら、珠の数が108個ではない数珠は【略式】のモノだからです。
この【略式】の数珠のことを、略式念珠といいます。
略式念珠の珠の数が正式な【108個】ではないのなら、いったい何個なのでしょう?
じつは、略式念珠の珠の数は統一されていないのです。
でも、よく見かけるのは、
- 27珠
- 22珠
- 18珠
あたりの数珠ですね。
略式念珠は、あくまで【略式】なので、本式念珠のように宗派による違いはありません。
ですから、略式念珠はどの宗派でも使える『オールマイティーな数珠』といえます。
また、数珠によって【珠の数】が違っていても、デザイン上の理由で数が違うというだけで、数珠の意味や効果が変わるなんてこともありません。
ついでに言うと、本式念珠と略式念珠では、当然ながら【本式念珠の方が高価】です。
本式念珠の方が、珠の数が多かったり、作りがより複雑になるのですから仕方ありませんよね。
数珠には一応、【男性用】と【女性用】がある
数珠というのは仏教を信仰する人みんなが持つ仏具です。
ということで、数珠は一応【男性用】と【女性用】に分けられています。
といっても、色やデザインが少しだけ『男性ウケ』あるいは『女性ウケ』するように作られているだけです。
あと、数珠の珠の大きさが、男性用の方が大きく、女性用の方が少し小さい、という違いはありますが、これもほんわずかな違いでしかありません。
男女で珠の数や基本的な構造に違いはなく、もちろん数珠の意味や効果も変わりません。
ですから、べつに男性用とか女性用なんて気にせずあなたの好みの数珠を買ってかまいません。
初めて数珠を買うなら【略式念珠】を選ぼう!

数珠には【本式念珠】と【略式念珠】があり、それぞれの違いもお分かりいただけたと思います。
じゃあ、あなたが数珠を買うならどちらの方がいいか。
もちろん、どちらを選ぶかはあなたの自由ですよ。
あなたの自由ではあるのですが、僕としては略式念珠をおすすめします。
なぜなら、略式念珠の方が、
- 宗派を問わず使うことができる
- 価格が安い
- 取り扱いがカンタン
だからです。
先ほども言いましたように、略式念珠に宗派の違いはないので、いろんな宗派の法要に対応できます。
つまり、略式念珠を1つ持っているだけでいいんですよね。
そして、略式念珠というのは、本式念珠に比べると珠の数も少ないですし、構造も単純なので、その分だけ価格が安いです。
とはいえ、略式念珠の価格にはピンからキリまであります。
また、本式念珠を使う時には、
- どの指に数珠をかけるのか
- どうやって数珠を擦(す)るのか
- 房を垂らすのは手のひらの外側なのか内側なのか
など、宗派によって数珠の取扱い方にいろいろと決まりがあるんですよ。
でも、略式念珠はそれがありません。
略式念珠の取り扱い方は、左手(または左腕)にかけて房を下へ垂らす、これだけです。
だから、略式念珠の方がダンゼン取扱いがカンタンなのです。
このように、本式念珠と略式念珠を比較すると、基本的にはいろいろとメリットの多い【略式念珠】の方を選ぶべきなんですよね。
もし、それでも【本式念珠】がいいというなら、とりあえずは【略式念珠】を先に買って、使い慣れたら【本式念珠】に買い替える、というカンジがいいと思います。
数珠は借りずにちゃんと自分で買う

ここで、もしかすると「数珠なんてあまり使わないし、家族とか他の人のを借りたらダメなの?」と思った人もいるかもしれません。
たしかに、お葬式や法事はそんなに頻繁にあるものではないですし、そのときだけ借りればよさそうですよね。
でも、お坊さんとして言わせていただくと、数珠は借りずに自分専用のものを買うべきだと思いますよ。
数珠の貸し借りはダメ!
僕がお葬式や法事をしていてよく見かける光景があります。
それは、法要中に家族で数珠の貸し借りをするという光景です。
お焼香をする時になると、家族で順番に数珠を渡してお焼香をしているのです。
一見すると1つの数珠を家族で大事に使っているように思えるのですが、これはダメです。
たとえ家族とはいえ【数珠の貸し借り】はよくないですよ。
数珠には仏様が宿りますが、それは心を込めて大事に数珠を使ってきたからこそなのです。
要するに、数珠に宿った仏様のチカラは【数珠の持ち主】のために発揮されるのです。
数珠を借りることは、本来の持ち主のために使われる仏様のチカラを横取りするようなものです。
数珠は1人に1つずつ購入して、それぞれが大事に使ってゆっくりと数珠を育てていくようにしましょう。
それに、社会人になればお葬式や法事に参列する機会はけっこうあります。
そのたびに、いちいち誰かに数珠を借りるわけにはいかないでしょ?
僕はいつも言っていますが、社会人になったら『喪服』と『数珠』はちゃんと自分用のものを購入してください。
また、一部では「数珠を自分で買ってはいけない。」と言う人もいます。
でも、それは《単なる迷信》や《その地域のルール》なので、あなたは気にしなくて大丈夫ですよ。
詳しくは別記事の『【お坊さんが解説】数珠を自分で買ってはいけないと言われる理由とその真偽について』でも書いていますが、数珠というのは自分で買うべきものなんです。
ですから、自分が使う数珠は、ちゃんと自分で選んで、自分でお金を出して購入してくださいね。
数珠はどこで、どのタイミングで買うの?
あなたがこの記事を読んでいるいうことは、
- 「もしもの時のために、数珠を買っておかなきゃ・・・。」
と思っているんですよね?
だったら、今すぐにでも数珠を買いましょう。
多くの人は【数珠を買う】なんていうことは後回しにしてしまいます。
それに数珠を買うと、なんだか『不幸に向けて準備している』みたいで縁起が悪いという感覚になるみたいなんですよね。
しかし、お葬式の知らせはいつも急にやって来ます。
しかも、お葬式は基本的に、亡くなってから3~4日以内に執り行われます。
それで結局、「やばい、数珠を買いに行くヒマがないぞ。」なんて慌ててしまうんです。
ですから、数珠は前もって買うようにしましょう。
数珠は、全国の仏具店でいろんな種類のものがたくさん販売されています。
ぜひ時間を作って家族全員の数珠を買いに行ってください。
また、最近は仏具店だけでなくインターネットでも手ごろな価格で高品質な数珠が買えますから探してみてください。
【関連記事】:数珠はどこで買うべき?売ってる場所と数珠の選び方をお坊さんの僕が徹底解説!
腕輪念珠は法要の時には使えません
最近では、手首に『ブレスレット型の数珠』をつけている人を多く見かけるようになりました。
この『ブレスレット型の数珠』のことを、【腕輪念珠(うでわねんじゅ)】といいます。
しかし、お葬式や法事のときに、略式念珠の代わりに腕輪念珠を使うことはできません。
腕輪念珠は、あくまでも【アクセサリー】なんです。
ただし、腕輪念珠を付けて、さらに略式念珠を持つというのならOKです。
腕輪念珠を単体で、本式念珠や略式念珠のようには使えませんよ、ということです。
まとめ:初めて数珠を買うなら【略式念珠】を選びましょう
日本のお葬式のほとんどは【仏式】なので、お坊さんだけでなく参列者も『数珠』を使います。
数珠を使うのは、自分を清めてから、故人に手を合わせるためであり、それが故人に対する礼儀になります。
ですから、もしもまだ『自分用の数珠』を持っていないのなら、これを機会に買いましょう。
そして、あなたが選ぶべき数珠は略式念珠です。
略式念珠であれば、いろんな宗派に対応していますし、値段も安くて、なおかつ取り扱いもカンタンです。
買う数珠の値段は【3千円〜1万5千円くらい】であれば品質的にも問題ありません、数珠は他の人のを借りずに必ず自分専用の数珠を持つようにしてください。
ちゃんとあなた専用の数珠を使い、しっかりと身を清めて故人を偲び丁寧に供養をしてあげてください。