お坊さん歴20年以上の未熟僧と申します。
- お墓の真ん中にある【くぼみ】は何?
- くぼみには湯呑みやコップを置くものなの?
- お酒やジュースを供えても大丈夫かな?
お墓の真ん中には、楕円(だえん)形で少しくぼんでいる部分があります。
いかにも大事そうな部分ですが、それが何なのかよく分からないですよね?
お墓の真ん中にある【くぼみ】の部分は『水鉢(みずばち)』といい、その名のとおり《お水を注ぎ入れるための場所》です。
お墓参りでは、線香や花などと一緒に《水》を供えますが、水はこの『水鉢』の中に注いでください。
この記事では、
- 水鉢の意味
- 水鉢への水の供え方
- 水鉢に水以外のものを供えてもいいのか
について詳しく解説しています。
お墓の真ん中のくぼみは【キレイな水】を注ぐための場所

ほとんどのお墓には、楕円(だえん)形で少しだけくぼんだ場所があります。
お墓の真ん中にある楕円形のくぼみの部分を『水鉢(みずばち)』といいますが、ここにはキレイな水を注いでください。
水鉢にキレイな水を注ぐことには、
- 仏様の喉を潤してもらう
- 仏様の教えを映し出す鏡の役割をする
- この世のすべての生物に施し(布施)をする
といった意味があるんです。
仏様は未熟な私たちをいつも正しい方向へと導き、必要なときには手助けもしてくださいます。
そんな仏様たちのために、 感謝の気持ちを込めて水鉢に水を供え、仏様たちの喉を潤してもらうわけです。
また、波がたたない水面は『鏡』のようになりますので、水鉢に水を注ぐことによって『仏様の教えを映し出す鏡』を作るという意味もあります。
そして、水というのは私たち人間を含め『生物にとって欠かせないもの』であり、まさに水は『命の源』です。
水をお墓へ供えることは、すべての生き物に『命の源』を施すという意味があり、【施す】という行為は《仏道修行》にあたります。
つまり、水を水鉢に注ぐことで、お墓参りをしている私たちが【施し(=布施)】という仏道修行をしていることになります。
ほとんどの人は、いつも何気なく水を供えているかもしれませんが、『ご先祖様へのご挨拶』ということ以外にも『仏道修行』をしているという意識で水を供えることが大事です。
また、今回に記事のテーマである『水』もそうなんですが、お墓参りのときには『5つのお供え』をするのが基本となっています。
5つのお供えについての詳細は『お墓参りの時にお供えする『5つの供物=五供(ごく)』の意味。』を読んでみてください。
水鉢には湯飲みやコップを置いた方がいいの?

あなたは、どこかの家のお墓の水鉢に【湯呑み】や【コップ】などが置かれているのを見たことがありませんか?
それは、水鉢へ水を直接注ぐのではなく、ちゃんと器に水を入れてから供えているもので、特に『故人が生前に使っていた湯呑み』を置く人が多いです。
そして、それを見た人の中には「なるほどね、ああやって水をお供えしたらいいのか!」と思った人もいるはず。
しかし、本当はそんなことをする必要はなく、むしろ水鉢に湯呑みやコップなどを置かない方がいいくらいですよ。
なぜなら、
- 器に入れて供える意味がないから
- 無駄に【器が割れてしまうリスク】を負うだけだから
です。
器に入れて供える意味がない
水を【湯呑み】や【コップ】といった器に入れるのは、きっと、
- 「ちゃんと器に入れて供えるのが仏様に対する礼儀だろう。」
- 「器があった方が仏様も水を飲みやすいだろう。」
という理由なんだと思います。
これは、本当に仏様のことを大切に考えて、敬っているからこそ出てくる発想です。
しかし、それでも水を器に入れる必要はありませんし、それをする意味がありません。
なぜなら、水鉢というのは水を入れるための【鉢】だからです。
【鉢】は言い方を変えれば【容器】ですから、水鉢そのものが『水を入れるための容器』の役目をしています。
ですから、お墓には最初からちゃんと容器(=水鉢)があるので、さらにそこへ他の器(湯呑みやコップ)を入れなくてもいいということです。
したがって、水を【湯飲み】や【コップ】に入れなくても仏様に対して失礼にはなりませんし、水が飲みづらいなんてこともありません。
【器が割れてしまうリスク】を無駄に負うだけ
僕は今まで、割れた湯呑みやコップがお墓の前に転がっているのを何度も見てきました。
じつは、水鉢に器を置くことは【器が割れてしまうリスク】を無駄に負うだけなんです。
墓地のほとんどは屋外にありますので、猫やカラスなどがいつでも墓地内に入ることができ、それらの動物たちが湯呑みやコップを割ってしまうことがあります。
ただ割れてしまうだけなら仕方ないのですが、割れた器のせいでケガをしてしまうリスクがあるのです。
お墓参りには大人だけではなく《小さなお子様》も来ますから、そのような小さなお子様が割れた器の破片を触ってケガをしてしまったら大変ですし、万が一その破片を口の中に入れちゃったら・・・。
どうしても何かの器に入れて供えたいというのなら『ペットボトル』であれば、比較的安全でいいでしょう。
水鉢にはお酒やジュースではなく【キレイな水】を供える

もしもご先祖様の中にお酒やジュースが好きだった人がいたら、お墓にも供えてあげたいですよね?
でも、水鉢にはお酒やジュースを供えないで『キレイな水』を供えるようにしてください。
べつに『絶対にお酒やジュースを供えちゃダメ』というわけではないですが、あまりおすすめはできません。
じつは、仏様へ供える水はできる限り【キレイな水】にするという決まりがあります。
僕が寺にこもって修行をしていたときは、水が最も澄むといわれている【午前2時頃】に井戸まで仏様用の水を取りに行ってました。
それくらい仏様へ供える水は【キレイで澄んだ水】ということを徹底していました。
仏様にはできるだけ【キレイな水】を飲んでいただきたいですし、キレイな水は【仏様の澄み切った清らかな教え】を象徴するものでもあるので、お酒やジュースではない方がいいですよ。
昔は水道がなく、家で使っている水(井戸水など)をお墓参りのときに供えていたので、お墓参りには【自宅から持ってきたキレイな水】というのが理想的です。
ちなみに、僕がいる寺では仏様用の水としてウォーターサーバー『クリクラ』の水を使用しています。
いろいろ調べてみたら『クリクラ』の水が非常に安全でキレイな水であると分かり、それ以来ずっと仏様用としても使っています。
【関連記事】:ウォーターサーバーの【クリクラ】を使った感想。メリット&デメリットを詳しく紹介
水鉢は汚れやすいのでキレイに掃除しよう

お墓参りをするときは水鉢へ水を注ぎますが、お墓参りが終わっても水鉢から水を抜くことはしません。
また、ほとんどのお墓は屋外にありますから、水鉢には雨水が溜まり、それで汚れも溜まってしまい、長時間溜まっていると頑固な汚れが付着します。
水鉢は重要な部分であると同時に汚れやすい部分でもあるのでキレイに掃除をするように心がけてください。
水鉢は、底の部分が磨かれておらずザラザラしている場合もありますので、水鉢を掃除するときには【歯ブラシ】を使うといいですよ。
歯ブラシだったら水鉢のザラザラな部分や隅の部分でも汚れをちゃんとかき出すことができ、しかも【たわし】のように強いチカラが加わらないので、墓石が傷みにくいです。
また、歯ブラシは墓石の他の部分を掃除するときにも便利なので、お墓掃除専用に1つ買っておくと便利ですよ。
まとめ:水鉢には何も置かずに、キレイな水をそのまま注ぎ入れてください
お墓の中央にあるくぼみのことを『水鉢(みずばち)』といい、その名のとおり【お水を注ぎ入れて供える場所】です。
よく湯呑みやコップに水を入れてから水鉢へ供える人がいますが、そんなことをする必要はありません。
水鉢には、【自宅から持ってきたキレイな水】をそのまま注ぎ入れるだけでかまいません。
水鉢に湯呑みやコップを置くと、ときどき猫やカラスが引っかけてしまい、地面に落ちて割れてしまうことがあります。
お墓参りには小さなお子様も来ていますので、そのお子様が割れた湯呑みなどの破片を触ったり、万が一にも口の中へ入れたら大変です。
湯呑みやコップが【故人の使っていた物】であるのなら、それはぜひ仏壇へ水を供えるときに使いましょう。
わざわざ必要のない危険なリスクを冒してまで水鉢に湯呑みやコップを置くことはありません。
また、お酒やジュースを供えるのもあまりおすすめできません。やはり仏様へ供えるのは【キレイな水】であることが理想的です。
というわけで、やむを得ない理由がないかぎり、水鉢には【あなたの家から持ってきたキレイな水だけ】を供えるようにしてください。
※お墓参りの持ち物はコチラの記事で確認してみてください。