お坊さん歴20年以上の未熟僧と申します。
- 数珠が切れちゃった!なんだか縁起が悪いなぁ。
- 数珠が切れたことにはどんな意味があるの?
- 数珠が切れてしまう原因は何だろう?
- 切れた数珠は、その後どうすればいいの?
数珠を使っていると、急にブチッ!と切れてしまうことがありますよね。
いきなり数珠が切れたら、多くの人は『縁起が悪いこと』だと感じます。
しかし、じつは数珠が切れたのは『縁起の良いこと』なんです。
なぜなら、数珠が切れたことには、
- 自分自身がレベルアップした
- 仏様が悪縁を断ち切ってくれた
という意味があるからです。
この記事では、
- 数珠が切れたことの意味
- 数珠が切れてしまう原因
- 数珠が切れた後の対処法
について書いています。
最後まで読むと、数珠が切れることへの不安がなくなりますので、ぜひチェックしてみてください。
数珠が切れたことの意味

多くの人は数珠が切れたことを『縁起が悪いこと』だと思っています。
しかし、数珠が切れたことには、
- 自分自身がレベルアップした
- 仏様が悪縁を断ち切ってくれた
という意味があります。
ですから、数珠が切れたのは『縁起の良いこと』であり、むしろ喜ぶべきことなんです。
数珠が切れると【縁起が悪い】と感じてしまう理由
数珠が切れてしまうと、なぜ【縁起が悪い】と感じてしまうのでしょう?
それは、
わらじの鼻緒が切れると縁起が悪い
という言い伝えがあるからです。
昔は『わらじの鼻緒が切れるのは身近な人に不幸がおきる予兆』と考えられており、とても【縁起の悪いこと】とされていました。
では、なぜ【わらじの鼻緒が切れると縁起が悪い】のでしょうか?
昔は、ご遺体が納められた棺を参列者が墓地まで運んだのですが、このときに棺を運ぶ人たちには『新品のわらじ』が渡され、それを履いて棺を運んでいました。
そして、無事にご遺体の埋葬が終わると、棺を運んだ人たちは履いていた新品のわらじの鼻緒を切ってその場に脱ぎ捨て、自分のわらじに履き替えてから帰宅しました。
このような習慣があったことから、わらじの鼻緒が切れると《お葬式》を連想するようになり『縁起が悪い』と言われるようになりました。
そして、『お葬式で使うもの』という共通点があるせいか、いつの間にか【わらじの鼻緒】と【数珠のヒモ】が同じように考えられ、そのまま『数珠が切れると縁起が悪い』となってしまったんです。
しかし、どう見ても【わらじの鼻緒】と【数珠のヒモ】はまったくの別物。
ですから、わらじと数珠は無関係であり、数珠が切れても『縁起が悪い』なんてことはありません。
数珠が切れたことの意味
縁起の良し悪しに関係なく、何かが『切れる』ということ自体が悪いことのように思えますよね?
しかし、『切れる』というのは悪いことばかりではありません。
例えば、もしもあなたに《不運なこと》ばかり起きていたら、
と思いませんか?
あるいは、どうしても苦手な人に対しては、
と思うのでは?
このように、『切れる』ことは悪いことばかりではないんですよね。
つまり、数珠が切れるのも、
- より良い方へ向かうために、今の状況と決別する
- 『悪縁』が切れる
ということであれば、それは【良いこと】を意味します。
あなたの修行が一段落した
僕たちお坊さんが使用している数珠には、珠の数が108個あります。
この『108』という数は、私たち人間が持っている【欲望】の数と同じです。
仏教には、
108個の欲望を消し去ることができれば『悟り』の境地に到達する
という教えがあり、この108個の欲望を消し去るためにいろんな修行をしなきゃいけません。
じつは、お坊さんが常に【108個の珠がある数珠】を持っているのは「私は悟りを得るために修行するぞ!」という心構えの表れなんです。
そして、数珠を持って修行を続けていると、いずれは数珠が切れてしまいます。
しかし、数珠が切れるのは『修行が中断してしまう』ということではなく、修行が一定のレベルまで到達したことを意味するものです。
あなたの数珠が切れたのもコレと同じことなので、もしも数珠が切れたら、それはあなたの修行が一段落したという証拠、おめでとうございます!
数珠に宿る仏様のチカラが『悪縁』を断ち切った
数珠というのは、使い続けていると数珠に仏様のチカラが宿り、持ち主を守るとされています。
ですから、数珠が切れてしまうと《数珠に宿った仏様のチカラが消えた》かのように思うかもしれませんが、じつはそうではありません。
数珠が突然切れたのは、数珠に宿った仏様があなたの『悪縁』を断ち切ったからです。
要するに、数珠があなたを悪縁から守ってくれたということです。
悪縁というのは、息を潜めてあなたに近づいてきますので、
- 「最近なんだかツイてないな。」
- 「あまり会いたくない人と一緒になることが多い気がする。」
- 「自分の周りで不幸が続いているなぁ。」
というのなら注意してください。
もしかすると、悪縁があなたのすぐ近くまで迫っているかもしれません。
ちょっと脅かしてしまいましたが、じつは悪縁が近寄ってくることなんて誰にでもあることで、そのほとんどは【大したことないもの】です。
しかし、たまに【タチの悪いもの】 が近寄ってくることもあり、そんなときは数珠に宿った仏様が追い払ってくれます。
ただ、【タチの悪いもの】を追い払うには大きなエネルギーが必要となるので、その反動で数珠が切れてしまうことがあるんです。
このように、数珠を持つということは自分自身の修行だけでなく仏様に守ってもらうことにもなるので、もしも数珠が切れたら、悪縁から守ってくれた仏様に感謝をしなくちゃいけません。
※数珠を持つことの意味をもう少し詳しく知りたいという人は『数珠とは何か?数珠を持つ意味と使い方(持ち方)を説明します。』の記事を読んでみてください。
数珠が切れてしまう原因

ここからは、数珠が切れる原因を物理的に解説していきます。
数珠が切れてしまう原因はだいたい決まっており、ほとんどの場合は、
- 珠を繋いでいるヒモの【ゆるみ】や【ほつれ】
- 珠の【穴の角の部分】の摩擦
- 雑な保管方法
- 不良品だった
というケースです。
珠を繋いでいるヒモの【ゆるみ】や【ほつれ】
数珠には珠を繋いでいるヒモがあります。
このヒモの【ゆるみ】や【ほつれ】が原因で、数珠が切れてしまうことが多いです。
数珠を長期間使用しているとヒモが徐々にゆるみますが、それをそのまま使っているとヒモに余計な負荷がかかり続け、やがて切れてしまいます。
また、ヒモの一部がほつれると、そこからどんどんほつれが広がるので、そのうちヒモが切れます。
じつは、数珠のヒモが切れるときには、
- 珠と珠の間隔が広がる(珠1個分くらい)
- ヒモの一部だけが細くなる
という【予兆】があるので、数珠を使うときは《切れる予兆》がないかを必ず確認しておきましょう。
もしも予兆が出ていたら、他の数珠を使うか、いっそのこと新規購入するのもアリです。
数珠を修理するという選択肢もありますが、修理には【1ヵ月~2ヵ月】くらい必要なので、数珠を使うタイミングには注意をしてください。
珠の【穴の角の部分】とヒモの摩擦
数珠の珠にはヒモを通すための穴があります。
数珠を使えば、珠の【穴の角の部分】とヒモが接触してこすれます。
この『珠の穴とヒモの接触による摩擦』がほつれの原因なのですが、こればかりは仕方のないことです。
しかし、たまに【穴の角の部分】の加工が雑な数珠があります。
角の部分の加工がちゃんと滑らかに研磨されていないと簡単にヒモが切れてしまうので、数珠の寿命をこの角の部分の加工が決めていると言ってもいいです。
もしも、あなたの使っている数珠のヒモが頻繁に切れてしまうようなら、一度この部分を確認してみてください。
穴の角を触ってみて明らかなザラつきがあれば、すぐに修理または新しい数珠を購入しましょう。
保管方法が悪い
数珠が切れてしまう原因として『保管方法』も大きく影響します。
せっかく高品質な数珠を買っても、
- 数珠をずっとどこかに引っ掛けておく
- 日光の当たる場所へ置きっぱなしにする
- 房が折れたまま、絡まったままにする
などのように『保管方法』が悪いと破損しやすくなります。
数珠をずっとどこかに引っ掛けておく
数珠をフックなどへずっと引っ掛けている人がいますが、これはヤメましょう。
数珠をずっと引っ掛けていると、数珠のヒモの同じ場所だけに負荷がかかり続け、その部分だけ変に折り目がついて、さらに劣化が進んでしまいます。
数珠を保管するときは、何かに引っ掛けるのではなく、箱や数珠袋に入れて『寝かせる』というのが基本です。
日光の当たる場所へ置きっぱなしにする
数珠は《置き場所》にも注意が必要です。
数珠を【日光の当たる場所】へ置きっぱなしにするのはNGです。
数珠を日光の当たる場所へ置きっぱなしにすると、房が一気に色焼けしちゃいます。
また、珠を通しているヒモも色焼けしますし、珠なども一緒に劣化が進んでしまうんですよね。
日光に当たり過ぎると数珠全体の劣化が進んでしまうので、数珠はできるだけ日光に当てないように箱や数珠袋の中に入れておいてください。
房が折れたまま、絡まったままにする
数珠を箱や数珠袋に入れるときにも注意点があります。
数珠の房が【折れたまま】あるいは【絡まったまま】の状態で箱や袋の中へ入れてはダメです。
房が折れたり絡まったままの状態で入れると、房の形が崩れて変なクセがついてしまい、その部分だけ劣化しやすくなってしまいます。
ですから、数珠を箱や袋の中へ入れるときは、必ず房の形を真っすぐに整えるようにしましょう。
不良品だった
どんなの商品でも、ときには製造過程で『不良品』が出てしまうことがあり、それは数珠も同じです。
ですから、購入した数珠が切れてしまったのは、それがたまたま『不良品』だったということもあります。
しかし、そのような『不良品』を回避する方法があります。
それは、価格が【3千円~1万5千円】くらいの、ある程度【高品質な数珠】を買うことです。
価格が3千円以上の数珠であれば、専門の職人によりしっかりと作り込まれており、また、【珠】【ヒモ】【房】に使用されている素材の品質も高いので『不良品』となる可能性はかなり低くなります。
※数珠を購入するときにはこちらの記事を参考にしてみてください。
数珠が切れた後の対処方法

数珠のヒモが切れてしまったらどうすればいいのでしょう?
選択肢は、
- 仏具店か専門業者へ修理に出す
- 切れた数珠は処分し、新しい数珠を買う
の2つです。
仏具店か専門業者へ修理に出す
数珠のヒモが切れてしまった、あるいは、穴の角が明らかにザラついている場合は、仏具店か専門業者へ修理に出すということが選択肢の1つになります。
ずっと使ってきたものなら愛着があるでしょうし、誰かにもらった数珠であれば思い入れだってありますよね。
これからもずっと同じ数珠を使い続けたい場合は『修理』をしてもらいましょう。
数珠の修理にかかる費用は、
3千円~7千円(税込)
といったところです。
また、先ほども言いましたが、修理にかかる期間は【1ヵ月~2ヵ月】くらいです。
ここで、修理をするときに1つ気をつけることがあります。
数珠が切れた原因が【普通の経年劣化】によるものであれば、その数珠を購入したお店で修理に出してください。
しかし、穴の角の加工が明らかに手抜きだった場合、もう二度とそのお店と関わってはいけません。
粗悪品を売っているお店は、新作はやたらと売ろうとしますが、既にある商品の改善をしようとしません。
そのお店からどんな新作が出たところで、その商品だってどうせ粗悪品ですから、以後は他の信頼できるお店へ修理を依頼してください。
ちなみに、切れたヒモを自分で修理するという選択もありますが、仕上がりはプロがやるのとは全然違ってしまいます。
せっかくの数珠をダメにしてしまう可能性の方が圧倒的に高いので、自分で修理するのはヤメましょう。
切れた数珠は処分し、新しい数珠を買う
切れてしまった数珠がかなり古くなっているなら、いっそのこと新しい数珠を購入するのもアリです。
数珠は1つのものを大切に使い続けることが理想的ですが、やっぱり新しいモノを欲しくなるのが人間の心理。
しかも、修理をするお金があれば新しく高品質な数珠が1つ買えますので、気分を変えて新しい数珠を買ってみるのもいいと思います。
とはいえ、数珠を買うにしても「どこで数珠を買えばいいのか分からない。」という人もいるでしょう。
数珠を買う場所については、別記事の『数珠はどこで買うべき?売ってる場所と数珠の選び方をお坊さんの僕が徹底解説!』を参考にしてみてください。
新しい数珠を買ったら、次に「切れた数珠はどうやって処分すればいいの?」という疑問が出るかと思いますが、数珠は『お寺』にお願いして処分してもらうのがいいですよ。
お寺なら、ちゃんと数珠を供養した上で処分してくれるので安心です。
もちろん自分で処分することも可能ですが、お坊さんとしてはあまり賛成できません。
数珠の処分方法については『【お坊さんの僕が詳しく解説!】数珠を処分する5つの方法(捨て方)』の記事で詳しく解説しているので読んでみてください。
腕輪念珠が切れても何も気にしなくていい

数珠と同じようなものに『腕輪念珠』があります。
あるいは『パワーストーンブレスレット』ともいいますかね。
腕輪念珠が切れた場合、何も気にする必要はありませんし、べつに縁起が悪くも良くもないですよ。
なぜなら、そもそも腕輪念珠は【数珠】の役割をしていないからです。
数珠をずっと使っていると1つ1つの珠に仏様のチカラが宿りますが、それは数珠の持ち主が仏様に感謝の気持ちを伝えたり、故人の冥福を祈った結果です。
だから、腕輪念珠をただ手首につけてるだけじゃ仏様のチカラなんか宿りません。
したがって、腕輪念珠は数珠の役割をしないので、『お葬式』や『法事』でのお焼香のときには使えません。
腕輪念珠は単なる【アクセサリー】なので、切れてしまった後は修理でも買い直しでもあなたの自由にしてかまいません。
まとめ:数珠が切れても縁起は悪くない。切れたら修理するか新しく購入しよう。
数珠を長い間使っていると、珠の穴との摩擦や経年劣化によってヒモが切れてしまいます。
日本人は何かが【切れる】とか【割れる】というと、それがまるで『縁起の悪いこと』のように感じてしまいます。
しかし、数珠が切れることは【縁起の悪いこと】ではありません。
数珠は『修行の心構えを表すもの』であり、『数珠に宿った仏様が、持ち主を守ってくれるもの』です。
それが切れたということは、
- 持ち主の修行が一段落(レベルアップ)した
- 仏様が悪縁から持ち主を守った
ことを意味します。
つまり、数珠が切れてしまうことは縁起の良いポジティブな出来事です。
あなたが大事に使ってきた愛着のある数珠なのであれば、切れたからといって捨てる必要はありません。
長い間使っている数珠には仏様が宿っていますから、できるだけ捨てずに修理をしたり、房やヒモだけを新しいモノに変える、というのでもいいでしょう。
もちろん新しい数珠を買って気分を変えてみてもかまいません。
数珠が切れてしまっても【縁起の悪いこと】ではありませんので、安心して修理または新規購入をしてくださいね。
※数珠を購入するときにはこちらの記事を参考にしてみてください。