- 『ただの写真』なの!?遺影に対するお坊さんの本音と視点
- 仏教的な決まりはなし。現代の住宅事情に合わせた飾り方の目安と注意点
「遺影をどうやって飾ればいいのか分からない」と悩む人はとても多いです。
じつは、遺影には、飾る場所、飾り方に決まりがありません。
遺影というのは『ただの写真』であり、仏教的に重要な意味はないのです。
ですから、どこに飾ってもかまいませんし、飾らなくても供養には何の影響もありません。
とはいえ、大切な家族の遺影はちゃんと飾ってあげたいですよね。
この記事では、お坊さんの僕が【遺影の取り扱い方】について詳しく解説しています。
未熟僧現代の暮らしに合わせた解説をしていますので最後まで読んでみてください。
この記事を書いている僕『未熟僧(みじゅくそう)』は、お坊さん歴25年以上。仏事の疑問を解消するいろんな情報を発信しています。
仏壇の中に遺影を飾ってもいいの?
「仏壇の中に遺影を飾ってもいいんですよね?」という質問は本当によく受けます。
結論から言いますと、仏壇の中に遺影を飾ってかまいません。
たまに「仏壇の中に遺影と位牌があったら、故人の魂がどちらに宿ればいいのか迷ってしまう。」と言う人もいますが、遺影に故人の魂は宿らないので心配無用。
故人の魂は、魂入れをした位牌に宿ります。
それに、本来なら、仏壇の中には遺影を飾らなくていいんですよね。
じつは、仏壇は『お寺の本堂』と同じ役割をしているのです。
お寺の本堂には、その宗派にとって重要なお坊さんの絵や歴代住職の写真は飾ってありますが、それ以外の個人的な写真などはありません。
そもそも、本堂というのは多くの人が仏道修行をするための道場なので、そこへ個人的な物は置かないんですよね。
ですから、本来であれば 『お寺の本堂の縮小版』 である仏壇にも遺影を飾らないのです。
とはいえ、「できれば仏壇の中に遺影を飾りたいなぁ…。」という気持ちになりますよね。
大切な人の遺影ですし、スペース的なことも考えると、仏壇の中に飾っておきたいことでしょう。
仏壇の中に遺影を飾る場合は、仏壇の一番下の段で、なおかつ中央を外した場所に置くのがよいと思います。
仏壇では、上の段ほど上位となっており、ご本尊様は最上段、お供え物は中段、その他は一番下の段に配置します。
そして、遺影は『ただの写真』であり仏具ではないので、仏壇の中に遺影を飾るなら一番下の段になります。
また、仏壇の中に遺影を飾るときには、中央を外すようにしてください。
仏壇内では『中央が上位』となるので、遺影を飾るなら中央ではなく左右のどちらかに外すのが適切です。
仏壇内の仏具の置き場所については別記事の『仏壇の購入時に揃えるもの20選。それぞれの仏具の意味と置く場所も紹介』で詳しく紹介していますので読んでみてください。
遺影の飾り方
基本的に仏壇の中には遺影を飾らなくてかまいません。
すると「仏壇の中でなければ、どこに飾ればいいの?」という疑問が出てきますよね。
遺影を飾る場所に決まりはありませんが、ある程度の目安はあるので参考にしてみてください。
四十九日忌までは後飾り壇に飾る
お葬式が終わると、四十九日忌を迎えるまでの間は『後飾り壇』という簡易的な祭壇を自宅に設けます。
お葬式で使用した遺影は、遺骨や仏具などと一緒に『後飾り壇』に飾るのが一般的です。
多くの後飾り壇は2~3段になっており、遺影は最上段の位牌の横に飾ることが多いです。
とはいえ、遺影の置き場所については特にこだわる必要がなく、仏具などの飾り付けのジャマにならない場所へ飾れば問題ありません。
四十九日忌を過ぎたら後飾り壇を片付けますので、その際に遺影を他の場所に移動させましょう。
四十九日を過ぎたらリボンは外す
お葬式で使った遺影には、写真の角にリボンが付けられます。
写真のリボンは、四十九日を過ぎたら外してください。
遺影に付いているリボンは『遺影リボン』と呼ばれ、お葬式で使う【喪章】と同じ意味です。
喪章は、故人を偲び『喪に服す気持ち』を表すものであり、遺影にもリボンを付けることで故人を偲ぶ意味があるのです。



仏教では喪に服すのは49日間なので、遺影リボンも四十九日のタイミングで外してください。
いつまでもリボンを付けていると、故人は「そろそろ外しちゃえば?」と苦笑いしているかもしれません。
遺影リボンは飾りではないので、四十九日忌の法要を機に外し、写真をスッキリさせてあげてくださいね。
仏壇の近くに飾る
遺影は、仏壇の近くに飾るといいですよ。
遺影はあくまで『ただの写真』ではありますが、そうはいっても亡くなった人の写真は仏様から近い場所に飾りたいですよね。
となると、やはり仏壇の近くが最適で、例えば、
- 仏壇の脇にある棚へ飾る
- 仏壇の手前にテーブルなどを置いて、そこに飾る
- 仏壇付近の長押(なげし)の上に飾る
というのがよいかと思います。
ちなみに、遺影は『仏間』に飾ることが多いです。
仏間というのは、その名のとおり仏壇を置くための部屋です。
仏間に仏壇を置けば、遺影も仏間に飾ることになります。
したがって、遺影を飾る場所として多いのは仏間ということになります。
いつも家族が集まる場所に飾る
近年は仏間のない家が多く、さらに仏壇の近くに遺影を飾る場所がないという人もいます。
そのような人は『いつも家族が集まる場所』に遺影を飾るといいですよ。
遺影というのは、いつまでも故人のことを忘れず、ずっと故人を近くに感じるために飾ります。
ですから、遺影は家族みんなの目に入る場所に飾るのが理想的です。
本来なら、毎日手を合わせる仏壇の近くに遺影を飾るのですが、もしも仏壇の近くがダメなら他の場所に飾るしかありません。
他の場所で、さらにいつもみんなの目に入る場所となれば、リビングなどに飾るのもよいと思います。
家の雰囲気に合わせて遺影を飾る
最近では、家の雰囲気に合わせて遺影を飾る人が増えています。
一般的に、遺影といえば『黒縁の大きな写真』というイメージがありますよね。
でも、近年の住宅は洋室がメインとなっているので、あのような重いイメージのある大きな写真は不釣り合いです。



きれいな洋室に古臭い遺影なんて飾りたくないですよね。
そのため、いろんな色やデザインの【フォトフレーム】に故人の写真を入れて飾る人もいますよ。
フォトフレームであれば、きれいな洋室に家族写真と並んで自然に遺影を飾ることができます。
フォトフレームの種類はたくさんありますから、インテリアに合わせて選んでみてください。
遺影の大きさは【L判サイズ】がベスト
遺影といえば、『四つ切サイズ』と呼ばれる【254mm×305mm】の大きさが一般的です。
でも、四つ切サイズは大きすぎてジャマだと思うんですよね。
昔の家のように広い仏間があれば、長押(なげし)に四つ切サイズの遺影を飾るのもよいでしょう。
しかし、今のマンションやコンパクトな家だと、四つ切サイズは威圧感が強すぎます。
ですから、僕は【L判サイズ(89mm×127mm)】くらいの小さな遺影がベストだと思います。



L判なら仏壇の中にも収まりますし、他の場所に飾ってもジャマになりません。
それに、法事のときに持ち運びや、掃除をするときにもサッと移動できるのでラクです。
もちろん、遺影のサイズは故人の供養に何も影響はありませんのでご安心ください。
デジタルフォトフレームで飾る
近年ではいろんなものがデジタル化しています。
デジタル化は遺影にも及んでおり、最近では『デジタルフォトフレーム』で故人の写真を飾る人もいます。
デジタルフォトフレームとは、スマホやデジカメで撮影した写真画像を小型液晶ディスプレイに表示させる『デジタル用の写真立て』のことです。
デジタルフォトフレームなら、複数の画像を順番に流しながら表示できるので、1つの画面でたくさんの【故人との思い出】を見ることができます。
あなたのスマホやデジカメには故人の写真画像がたくさんあると思いますが、それらを現像することはほとんどないですよね。
だったら、スマホのアルバムに埋もれている故人の写真をデジタルフォトフレームに入れて、ちゃんと日常的に見えるようにしてはどうでしょう?
ちなみに、デジタルフォトフレームについて、お坊さんの僕から1つ切実なお願いがあります。
家にお坊さんを招いて法事をするときは、あらかじめ一番良い写真を『固定表示』させてください。
じつは以前、読経の途中で『故人のユーモアが溢れすぎている姿』がスライド表示され、それがあまりにも面白く、笑いをこらえるのが大変でした。
ですから、法事のときだけは『ユーモア要素のない写真』を固定表示しておいてください。
複数人分の遺影がある場合は、向かって【右】を上座にして飾る
複数人分の遺影がある場合、遺影を置く順番が一応はあります。
複数人分の遺影を飾る場合は、向かって【右】を上座にしてください。
仏事では、
- 私たちから見て『右』が上座
- 私たちから見て『左』が下座
と考えます。
上座や下座があるということは、大変失礼ながら仏様に優先順位をつけているのです。
仏様の優先順位のつけ方は、生前の地位や性別に関係なく【先に亡くなった人から順番に上位になる】と覚えてください。
夫婦の場合、もしも妻が先に亡くなったら、妻が上位(右)です。
親子の場合、悲しいことに子どもが先に亡くなれば、たとえそれが赤ちゃんでも、子どもの方が上位です。
遺影は、右から左へ【先に亡くなった人の順】で飾るようにしてみてください。
とはいえ、これは遺影を飾るときの単なる基準というだけなので、家族のみんなで納得のいくように飾ってかまいません。
遺影を飾る『向き』に決まりはない
遺影を飾るときに『向き』を気にする人はとても多いです。
しかし、遺影の『向き』に決まりはないので気にしなくて大丈夫。
遺影は単なる写真ですから東西南北どの向きでもかまいません、家族みんなが見やすい向きにして飾ってください。
それでも向きが気になるという人は、できれば『仏壇の対面側には飾らない』ようにしてみてください。
仏壇の対面側に遺影を飾ると、遺影を正面に見たとき、仏壇にお尻を向けてしまうからです。
仏事において『仏様にお尻を向けない』のは基本的な作法なので注意しましょう。
遺影を飾るときのタブー
遺影を飾るときは、何か『タブー』がないか気になりますよね。
べつに遺影を飾るときのタブーというのはないのですが、注意点のようなものは1つあります。
それは、遺影を仏壇の上には置かないということです。
仏壇の天板は平面なので、ついそこへ遺影を置きたくなりますが、天板のすぐ下にはご本尊様がいらっしゃいます。
遺影はあくまで『ただの写真』であり、それをご本尊様の頭上に置くのは好ましくないので、なるべく仏壇の上には遺影を置かないようにしましょう。
遺影だけでなく、仏壇の天板には何も置かないことが望ましいですね。
遺影はいつまで飾るべきか
遺影を飾ったら、次に気になるのが「遺影をいつまで飾ればいいのか」ということです。
遺影を飾る期間については、あなたの自由です。
例えば「◯◯回忌を迎えるまで飾る」みたいに回忌で区切る人もいれば、特に区切りをつけない人もいます。



僕は『写真が少し色あせるまで』を基準にしていますよ。
遺影は年数が経過するとだんだんと色あせてきます。
色が少し白みがかってきたら、他の写真に交換するか、あるいは遺影を飾ること自体をやめるタイミングだと判断します。
遺影の処分方法については、一般ゴミとして処分してかまいませんが、それも心苦しいですよね。
遺影を処分する場合は、写真を封筒などに入れてから、お寺で『お焚き上げ』をしてもらってください。
そのときには必ず1千円~3千円程度の『お焚き上げ料』を納めるようにしましょう。
ちなみに、お寺でお焚き上げをしてもらうなら、できるだけ【菩提寺】に依頼してください。
菩提寺というのは、『あなたの家のお墓があるお寺』のことです。
菩提寺は、『自分のお寺にお墓がある信者』から仏事の依頼があれば、それを受ける義務があります。
それなのに、最近ではこういった小さなお願いに対して、面倒くさそうに対応したり、もっとひどい場合は拒否をするお寺もあるんですよね。
もしも、あなたの依頼を断るような菩提寺であれば、そんなお寺とはできるだけ早く付き合いを解消することをおすすめします。
【関連記事】:このお寺はもう嫌だ!付き合いを解消するべきお坊さんの特徴
遺影は他の顔写真に替えてもいい
多くの人は、お葬式で使った遺影を、その後もずっと飾り続けています。
遺影は他の顔写真に替えてもいいですよ。
お葬式のときは慌ただしくて、少ない時間でたくさんのことを一気に決めなければならず、じっくりと遺影を選ぶ時間がありません。
それで、とりあえず『無難な写真』を遺影にするケースが多いのです。
すると、後になって「この写真、やっぱり何だかしっくりこないなぁ…。」なんてことになるんですよね。
遺影は『生前の故人をよく表す写真』がベストなので、より良い写真が見つかったら交換をしてください。
遺影は『絶対に必要なもの』ではない
これまでは、遺影を飾る場所や方法について書いてきました。
しかし、今さらですが、遺影は『絶対に必要なもの』というわけではないですよ。
遺影を飾るかどうかは家族が自由に決めることです。
しかも、遺影には仏教的な意味が無いので故人の供養にも関連性は一切なく、もしも遺影を飾りたくないなら無理に飾らなくてかまいません。
それに、最近では写真をわざわざ現像することも少ないですよね。
いろんな思い出や人の写真を『画像データ』として残して、思い出したタイミングでたまに見るだけ。
もしも遺影を飾りたくないなら、パソコンやスマホなどに故人の写真を『画像データ』として保存しておくだけでもよいと思います。
それで、ふと故人のことを思い出したときに画像データを見てあげてください。
まとめ
遺影というのは『ただの写真』です。
仏壇の天板に置かないことだけ注意すれば、あとはどのように飾ってもかまいません。
一応の目安としては、遺影は仏具ではないため、仏壇の中でなく『仏壇の近く』か『いつも家族が集まる場所』に飾るとよいでしょう。
そして、昔のように黒縁の額に大きな写真を入れて飾るのではなく、家の雰囲気に合わせて小さな写真(L判サイズ)を明るくカジュアルに飾ってください。
また、遺影というのは写真を取り替えてもかまいませんから、他にもっと良い写真が見つかったら交換してあげましょう。
遺影をどのように取り扱うかはあなたの自由です。
まずは、愛する家族の遺影があなたにとってどういうモノなのかを考えてみて、それから遺影をどこへ飾るのかを決めましょう。
※遺影の他に、仏壇の『ろうそくの火』が心配になりませんか?











