火葬後は、親族みんなで故人の遺骨を骨壺に納めます。
その際、遺骨に色が付いているのを見て「えっ、これは何の色なの?」と不思議に思ったことはありませんか?
じつは、火葬時の条件によっては遺骨に着色することがよくあるのです。
この記事では、お坊さんの僕が以下について解説しています。
- 遺骨に色がつく理由
- 「生花の色が遺骨につく」というのは本当か
遺骨の着色に関する疑問や不安が解消され、遺骨についてより深い知識が得られますので最後まで読んでみてください。
筆者:未熟僧(みじゅくそう)
お坊さん歴25年超の経験をもとに、仏事(お葬式・お墓など)の疑問解消、人間関係の悩み対策、僧侶の裏事情について発信しています。
火葬後の遺骨に色がつく原因
火葬場で収骨をするときに、遺骨に色がついていることがあります。
これは、火葬をしたときに『遺骨の成分』と『副葬品や医療器具の成分』が化学反応を起こすことが原因です。
決して『不吉な現象』や『異常な現象』ではありませんのでご安心ください。
火葬をするときには、火葬炉内の温度が【800℃~1200℃】と非常に高温の状態となります。
じつは、火葬時にダイオキシンなどの有害物質が発生しにくいように、火葬の温度が【800℃以上】と決められているのです。
これくらいの高温で火葬をすると、体に含まれるタンパク質や脂質などの有機物は燃焼します。
そして、ハイドロキシアパタイトやミネラル類の無機物、体内医療器具の成分などは残るので、それらが超高温にさらされることで化学反応を起こすのです。
また、棺桶には副葬品を入れますので、それらが化学反応することで色がつくことも多いです。
特に、棺桶の中に金属があると遺骨に色が付きやすくなります。
例えば、
- 故人の服にある飾り金具
- ホック
- ファスナー
- インプラントの金属部分
- 故人の体内にある医療用のプレートやボルト
- ペースメーカー
- 棺桶の取っ手や蝶番(ちょうつがい)
などは遺骨の成分と反応を起こして、ピンク、緑、薄い黄色などがついてしまうのです。
ちなみに、遺骨の一部が黒色や灰色になっていることもあります。
これは火葬時に火の当たりにくい部分で不完全燃焼が起き、その部分だけ炭化して黒くなるのです。
黒色や灰色がついていると何となく『不吉』なことのように思えますが、単なる化学反応なので心配する必要は一切ありません。
遺骨に『花の色』がつくって本当?
遺骨に色がついているのを見て「これは遺骨に『花の色』がついたもの」と言われることがよくあります。
しかし、僕はそれに対して否定的な考えです。
なぜなら、花と遺骨が触れるタイミングがないからです。
遺骨に『花の色』がつくとすれば、それはお葬式の最後に【棺桶に入れた生花】が原因ということになります。
たしかに、棺桶の中には故人が埋もれてしまうくらい多くの生花を入れますので、生花の色が遺骨にうつると考えるのは自然なことです。
でも、火葬をすると、まずは棺桶と一緒に生花や他の副葬品が燃えて、その後ようやく遺体が燃え始めます。
そして、さらに火葬が進んで遺骨だけが残る頃には、生花はとっくに燃えて無くなっているんですよね。
ですから、生花の色が遺骨につくというのは、物理的に無理があるのです。
それに、棺桶には白色の花だけ入れたのに、遺骨にピンク色や薄い黄色がついている、ということが普通にあります。
おそらく、「花の色がついた」と説明すれば、遺族としては不安が無くなり、なおかつ「綺麗な物の色がついた」と前向きに捉えられたのでしょう。
しかし、火葬時の現実からして、花の色が遺骨につくというのは物理的な根拠に欠けると思います。
やはり、遺骨に色がつくのは、遺骨と金属の成分が化学反応を起こしたと考えるのが妥当でしょう。
遺骨についてよくある質問
長年お坊さんをしていると、『遺骨の色』以外にもいろんな質問をされます。
せっかくなので、ここで遺骨に関するよくある質問について回答しておきます。
火葬場での収骨は、なぜ箸を使うの?
亡くなった人は、あの世に着くまでに『三途の川(さんずのかわ)』を渡る、とされています。
そこで、故人が無事にあの世へ行けるように、三途の川の【橋渡し=箸渡し】をしてあげるという語呂合わせで、箸を使って遺骨を骨壺へ納めるのです。
しかし、これはあくまで日本の風習なので、箸を使わなくても問題はありません。
とはいえ、火葬後の遺骨は高温になっていることが多く、熱くて素手で触ることができないでしょう。
そのようなときは、軍手などを使って遺骨を触ればヤケドの心配はありません。
ただし、手で収骨する場合は、必ず前もって葬儀社に確認をしておいてください。
遺骨がもろくなっているのは火葬のし過ぎでは?
火葬後の遺骨は水分が抜けているため、軽く、そして少しもろくなっています。
遺骨がきれいに残るかどうかは、故人の年齢や生前の生活環境によって変わります。
例えば、故人の年齢が若ければ、遺骨が丈夫なのできれいな形で残りやすいです。
一方で、高齢の場合は遺骨が弱く、どうしても形が崩れやすくなります。
また、亡くなるまでの長期間の入院生活により、十分な運動ができなかった場合にも骨が弱くなっていることが多いです。
火葬場の職員さんは、火葬炉内の状況を確認しながら『火力の調整』や『バーナーの角度の調整』をし、できるだけ遺骨の形を崩さないように努力しています。
特に、日本では第二頸椎を『喉仏(のどぼとけ)』として大切にしますので、できるだけ形を崩さないように注意しています。
また、遺骨の形を残すだけでなく、火葬炉に余計な負担をかけないようにしているので、『火葬をし過ぎる』ということはありません。
ですから、遺骨がもろくなっていても、それは個人差の問題であり、火葬方法の問題ではないのです。
燃え残った金属類はどう処分するの?
火葬をすると、遺骨の他にも金属が残っており、それらは基本的に遺骨と一緒に遺族へ返却されます。
しかし、遺骨を引き取らないケースもあり、そのような場合は火葬場側で遺骨とともに金属を引き取ります。
そして、金属は専門業者に回収を依頼し、貴金属については売却をするのです。
貴金属の売却益は、公営の火葬場であれば自治体の運営費に充当されます。
まとめ
火葬後の遺骨には色がついていることがあります。
その原因のほとんどは、遺骨の成分と残った金属の成分による化学反応であり、決して不吉なことではありません。
また、火葬後の遺骨の状態は、故人の年齢や生活環境によって変わります。
遺骨は、故人が懸命に生きてこられた証となるものです。
故人の歴史そのものである遺骨を大事に扱い、丁寧に供養しましょう。
※最近では、お墓ではなく自宅で遺骨を供養する人が増えています。
