お坊さん歴20年以上の未熟僧と申します。
- 木魚って何なの?
- なぜお坊さんは木魚を叩くの?
- 自分の家でも木魚を使いたい。
お葬式や法事では、お坊さんがお経に合わせてリズミカルに木魚(もくぎょ)を叩きます。
そんな姿を見て、
と思ったことはありませんか?
多くの人は【お坊さん=木魚を叩いてお経を読む】というイメージを持っていますが、木魚そのものの意味までは知らないことがほとんどです。
じつは、木魚というのは、
『仏様のため』というより『私たちの修行のため』に叩くもの
なんです。
この記事を読むと、
- 木魚を叩くことの意味
- 木魚の由来
- 木魚の叩き方
が分かります。
他の人があまり知らない【木魚】について分かりやすく説明しましたので、ぜひ最後まで読んでみてください。
木魚は梵音具の一つ

仏具にはいろんな『鳴り物』があるんです。
例えば、
- 除夜の鐘でゴ~ン!と鳴る『梵鐘(ぼんしょう)』
- チ~ン♪と鳴る『お鈴』
- グヮ~ン!と鳴る『銅鑼(どら)』
- ドン!ドン!と鳴る『太鼓(たいこ)』
- お堂の入口でカン!カン!と鳴る『鰐口(わにぐち)』
などです。
これらの『鳴り物』の仏具を、
梵音具(ぼんおんぐ)
といいます。
【梵】という字には、『穢れがなく澄みきった清らかなもの』という意味があります。
なので、梵音具を使って音を出すと、
『清らかな音』によって、音が届くところは全て清められる
と考えられているんです。
木魚もこの梵音具の1つです。
つまり、木魚を叩くことによって【その場を清めている】わけですね。
お坊さんが木魚を叩く意味

多くの人は、お坊さんといえば【木魚を叩きながらお経を読む】というイメージを持っています。
そして、実際に多くのお寺では法要をする時に木魚を使用しています。
木魚を叩くことにはいくつかの意味がありますので、順番に説明していきます。
魚のように『寝る間を惜しんで修行します』という意味
木魚は、字のとおり【木を《魚》の形】に彫っている梵音具です。
でも、木魚って丸い形をしていますし、パッと見はあまり魚っぽくないですよね?
しかし、近くでよ~く見るとウロコなどもちゃんと彫刻がされているんですよ。
丸い形なのは、叩いたときにより音を響かせるためです。
じゃあ、なぜ【魚】なのか?
他の動物ではダメなのでしょうか?
魚は『まばたき』をしない生き物です。
ですから、まるで【全然寝ていない】ように見えるんですよね。
つまり、木魚を叩くことによって、
「私も魚を見習って、寝る間を惜しんで修行します!」という意思表示をしている
わけなんです。
だから、じつは、木魚というのは【自分の修行のため】に叩くものであって、【亡くなった人のため】ではないんですよね。
お経のリズムをとる
あなたは実際にお坊さんが木魚を叩いているところを見たことがありますか?
お坊さんは木魚を、同じリズムで叩きます。
これは、
お経のリズムを一定に保つため
なんです。
というのも、複数のお坊さんで法要を行う場合、何かリズムの目安になるものがないと少しずつお経がズレてしまうんですよね。
お坊さんだって人間ですから、リズム感の良い人とそうでない人がいますのでね。
キッチリとお経を合わせるために、木魚のリズムに乗せてお経を読むのです。
なので、もしもリズム感の良いお坊さん達が集まっていれば、べつに木魚なんか使わなくても大丈夫なんです。
しかし、一般的に【お坊さん=木魚を叩く】というイメージが強いので、本当なら必要なくても、パフォーマンスとして使用している場合も多いのです。
眠気を覚ます
ここで1つ、お坊さんとして白状します。
お経を読んでいると、体調によってはものすごく眠くなる時があるんですよ、ごめんなさいね。
しかも、経験豊富なお坊さんであればあるほど眠気に襲われます。
熟練のお坊さんは、お経を読む時には経本なんて見ていません、お経はすべて暗記していますから。
すべて暗記しているので、それこそ【目をつむって】でもお唱えできてしまうんです。
しかし、目をつむってお唱えすると・・・眠くなってしまうんですよね。
そんな時に、お経を読むこと以外の動作があれば、ある程度は、
眠気を覚ます
ことができます。
そこで最適なのが【木魚】なんですね。
まさに、魚を見習って【眠らない】ようにするために木魚を叩くわけです。
ただですね、経験豊富なお坊さんは木魚を叩いていても眠くなっちゃうんです。
木魚を叩くことまで無意識の一連の動きとなり、結局は眠気に襲われてしまうんですよね。
すみません、仏の道を歩む者としてまだまだ未熟ですね。
木魚を叩かない宗派もある
先日、ある信者さんのお葬式で木魚を使用せずにお勤めをしたところ、親族の方から、
との質問を受けました。
これは、先ほども言ったように、多くの人が【お坊さん=木魚を叩いてお経を読む】というイメージを持っているから出る疑問です。
じつは、木魚はお坊さん全員が必ず使用するというものではないのです。
というか、木魚を叩かない宗派もあるのです。
でも、木魚を寄贈してくださる信者さんがおられるんですよね。
木魚だってかなり高価な仏具です、それをせっかく寄贈してくださったのに「いや、ウチの宗派じゃ木魚は使わんのですわ。」なんて言えませんよ。
ですから、本来なら必要ないものでも、法事のときは使うこともあります。
木魚は『魚板(ぎょばん)』をもとに作られた

魚の形をしている仏具は他にもあります。
これは禅宗系のお寺で使われています。
その名も、
魚板(ぎょばん)
です。
じつは、木魚というのは、この魚板をもとに作られたのです。
魚板というのは、字のとおりで【魚の形をした木の板】のことです。
木魚とは違って、本物の魚のような形をしており、そして魚の口は《珠》をくわえています。
魚がくわえている珠は『私たちの欲望=煩悩』を意味しており、この珠(=煩悩)を吐き出そうとしている姿を表します。
魚って水底の砂を口から吸いこんで、余計なものは吐き出しますもんね。
つまり、魚板を叩いて煩悩を取り除くということなんです。
もちろん、この魚板も先ほど紹介した『梵音具』の1つです。
ただ、魚板は法要の最中に使われるものではないんですよ。
魚板というのは、
お坊さん達に【集合する時間】であることを知らせる
ために使われるのです。
ですから、お坊さん達の日常生活でも使用されています。
魚板は食堂の入り口に吊られていることが多いので、実際のところ『食事の時間を知らせるため』に使われているんですよね。
木魚の叩き方

あなたは木魚を『お坊さんが叩くもの』と思っていませんか?
もしそう思っているなら、それは間違いですよ。
木魚というものは、お坊さんだけではなく、
誰が叩いてもいいもの
なんですよ。
だから、お寺だけではなく普通の家庭でも使っていいんですよ。
一般の家庭でも木魚を使っていい
あなたの家に仏壇はありますか?
もしもあるなら、これを機会に木魚の購入を考えてみてはいかがでしょうか?
仏壇というものは【お寺の本堂の縮小版】の役割をしているのです。
詳しくは『仏壇の意味と役割とは?仏壇の準備からお参り方法まで丁寧に解説』の記事を読んでみてください。
つまり、お寺にあるような仏具は、仏壇がある一般の家庭にあってもいいんですよ。
そして、何度も言いますが、木魚は【私たちが修行をするため】に叩くものです。
仏壇に向かって手を合わせることも立派な【仏道修行】になるので、木魚はお坊さんだけではなく、みんなが使える仏具なんです。
だから、木魚が一般の家庭にあることは何も不自然ではありません。
とはいえ、木魚はあまり大きすぎるとジャマになります。
かといって、小さすぎても良い音が出ないんですよね。
家庭用サイズとしての木魚は、しっかりした作りであれば【5寸〜6寸】くらいの大きさのモノが音の面でも最適ですね。
木魚の叩き方
木魚を購入したとしても、【どのようにして叩けばいいか】が分からないですよね?
せっかくここまで読んでくれたあなたには、木魚の取扱い方を詳しく説明させていただきます。
最初に、木魚は専用の座布団に乗せてください。
座布団に乗せないと、床や木魚本体を傷つけますし、良い音も出ません。
次に、『バイ』という棒を木魚に打ちつけて音を出しましょう。
『バイ』には【持ち手】の部分と【木魚に当てる】部分がありますので、間違えないようにしてくださいね。
触ると柔らかくて白い部分が【木魚に当てる】部分になります。
そうしたら、後はもうお経に合わせてリズムよく叩くだけですよ。
具体的には、
経本に書いてある漢字1文字に対して1回叩く
というのが基本です。
バイは【弾ませる】ように叩くと良い音が出ますよ。
バイを木魚に当てたら、そのまま当て続けるのではなく、反動を利用して少しだけ手首を戻すんです。
そして、大事なコツですが、叩く時には『手首のスナップ』をちゃんと使ってください。
腕全体を使ってしまうと、すぐに腕が疲れてしまい、1つのお経を読み切る前に腕がパンパンになっちゃいますよ。
最初は難しいかもしれませんけど、10回もやれば慣れちゃいますから安心してください♪
まとめ:木魚は修行をするために使う仏具。
お坊さんのお経に合わせてリズミカルに叩かれる【木魚】。
木魚はお葬式や法事など『故人の供養』をする時にも使用されます。
しかし、木魚というのは本来、
『故人の供養』というよりも『私たちの修行のため』
に使用するものです。
魚はいつでも目を開いているので、まるで全然眠っていないかのように見えます。
だから、それを見習って、
- 「自分も眠る間を惜しんで修行するぞ!」
という気持ちを示すために木魚を叩くのです。
なので、【私たち】のために木魚は叩くものなんですよね。
お坊さんは日頃から【自分自身の修行のため】に木魚を叩いてお勤めをしています。
それをずっと見てきた信者さんが、いつの間にか【お坊さんはいつでも木魚を必ず叩く】と誤解してしまったんですね。
だから、お葬式や法事でお坊さんが木魚を叩かないと違和感を感じてしまうんです。
お坊さんもそれを考慮して、本来なら必要のない木魚を叩いてお経を読んでいるのです。
だから、もしも『故人の供養』をする法要の時にお坊さんが木魚を叩いていなかったとしても、宗派によってはそれが正しく、決してお坊さんがサボっているわけじゃない、ということを知っておいてくださいね。
そして、木魚はお坊さん専用の仏具ではありません。
修行者であれば誰でも使っていいんです。
ですから、よかったらあなたも仏壇の前でお経を読む時には『故人やご先祖様を敬う修行者』として木魚を使ってくださいね。
故人やご先祖様も、そんなあなたを見て喜んでくれるはずですよ♪