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仏事全般

『手元供養は良くない』は大きな誤解。手元供養のメリットとデメリット。

「手元供養は良くない?」というテキストの背景にある骨壺

お坊さん歴20年以上の未熟僧みじゅくそうと申します。

こんな人に向けて書いています
  • 遺骨はお墓に納骨せず、家に置いておきたい。
  • まだお墓がないから納骨できない。
  • 手元供養って良くないことなの?
  • 手元供養のメリットとデメリットを知りたい。

大切な家族の遺骨をすぐにお墓へ納骨してしまうのは何だか抵抗がありませんか?

とはいえ、遺骨を自宅にずっと置いておくのも「このままで大丈夫なのかな?」と不安になりますよね。

遺骨を自宅に置いて供養することを手元供養てもとくようといいますが、一部の人は「手元供養は良くない。」と言います。

でも安心してください、遺骨は自宅に置いたままでも問題ないですよ、もちろん『法的』にもです。

近年では手元供養をする人が急増しており、今後もしばらくは増え続けることでしょう。

ただし、手元供養にはメリットだけではなくデメリットもありますのでご注意ください。

未熟僧
未熟僧
手元供養は良い部分だけに注目してしまうと後悔します。

この記事を最後まで読めば、手元供養に関する知識がほぼ身に付きますので、ぜひチェックしてみてください。

手元供養とは

近年では『お墓』を持たずに、

  • 遺骨を自宅に置いて供養する。
  • 遺骨の一部を分骨し、それを自宅に置いて供養する。

という人が増えています。

これらは、いわゆる『手元供養』と呼ばれる供養方法です。

手元供養は昔からありましたが、ほとんどの人は『お墓』を建てて納骨をしていたので、あまり普及はしていませんでした。

しかし、少子高齢化が進むにつれて、お墓を継承する人が減少し続けています。

未熟僧
未熟僧
そこへさらに【仏教離れ】が追い打ちをかけている状況です。

そのため、お墓の必要性を疑問視する人が増え、それに引っ張られるようにして『お墓は建てなくていい』と考える人も増えています。

また、お墓に納骨することが何となく『故人を土の中に閉じ込めてしまう』ような気分になり、それでお墓を建てない人が結構いるんですよね。

とはいえ、お墓を建てないからには遺骨を他の場所で保管する必要があり、結果として『自宅』で保管する人が増え、それで手元供養が広く認知されるようになりました。

手元供養は良くないの?

手元供養をしたいと思っても「遺骨を自宅に置いたままは良くないのかな?」と心配になる人はたくさんいます。

遺骨を自宅に置くことによって、

  • 自宅に置いたままだと故人は成仏できないのかな?
  • 分骨をしたら、故人があの世で5体満足でいられないのでは?
  • 法律上の問題はないの?

といったようなことが心配になるわけですね。

安心してください、手元供養は仏教的にも法的にも全然問題はありませんから。

あなたが手元供養を望むのであれば、どうぞ遠慮なく故人の遺骨をあなたのそばに置いてあげてください。

自宅に遺骨を置いたままだと故人は成仏できない?

ときどき「お墓に納骨しないと故人が成仏できない。」と言う人がいます。

しかし、それは誤解であり、自宅に遺骨を置いたままでも故人は成仏できますので安心してください。

成仏できるかどうかは、故人の《あの世における仏道修行》の成果次第であり、お墓はまったく関係がありません。

未熟僧
未熟僧
遺骨がどこにあっても成仏はできますよ。

お墓に納骨することは、言ってみれば、故人の死を受け入れるために『踏ん切り』をつけさせることが目的です。

目の前に故人の遺骨があると、家族はなかなか悲しみから抜け出せません。

それを、故人の魂が仏の世界に渡るとされる49日忌までに納骨をすることで、半強制的に『踏ん切り』をつけさせたんですよね。

それに、お墓の役割には【遺骨を納める場所】ということ以外に、もう一つ【あの世とこの世を繋ぐもの】という役割があり、こちらの方がずっと重要な役割です。

遺骨はお墓に納めるのが一般的ではありますが、遺骨をどうするかはあなたが自由に決めてかまいません。

お墓について詳しく知りたい方は、別記事の『お墓の意味や役割とは何?お墓参りでお墓はパワースポットに育つ?』で解説していますので読んでみてください。

分骨をしたら故人が五体満足でいられない?

手元供養では、遺骨の一部を分けて『分骨』をするケースもあります。

ときどき、「分骨をしたら、故人があの世で五体満足でいられないからダメだ。」と言う人もいますが、分骨をしても故人は五体満足で元気にお過ごしですから安心してください。

分骨というのはずっと昔からあるものなんです。

じつは、今から約2500年前、仏教を広めた【お釈迦様】が亡くなったときに、弟子たちがお釈迦様の遺骨を分けて持ち帰ったんですよね。

未熟僧
未熟僧
そのときにも《お釈迦様があの世で五体満足でいられない》なんて言っていませんよ。

また、関西地方では火葬をした後にすべての遺骨を収骨するのではなく、部分的に収骨をする『部分収骨』が多いです。

そうすると、関西地方の方々の多くが《あの世で五体満足でいられない》ということになります。

さらに、地方によっては、信仰している宗派の本山に遺骨の一部を納骨する『本山納骨』という習慣があるので、その地方の方々も《あの世で五体満足でいられない》ということになります。

そもそも、私たちの肉体は【この世だけのもの】であり、あの世には持って行けないんですから、分骨をしたところで、あの世での影響は一切ありません。

【関連記事】:分骨は良くない?分骨の手順と、その後の供養の方法について紹介!

手元供養は『法律』の面で問題ないの?

供養に関しては手元供養が問題なくても、法的に問題があるかどうか気になりますよね。

ご安心ください、手元供養は法的にも問題ないですから。

多くの人は、

  • 遺骨を自宅に置いておくこと
  • 粉骨など『遺骨の加工』をすること

が違法なのではないかと心配しますが、いずれも法的な問題はありません。

遺骨を自宅に置いておくことは違法?

お墓のことや遺骨に関わることなどは『墓地、埋葬等に関する法律』という法律に定められています。

そして、この法律では手元供養でも問題ないことが記載されているんです。

遺骨の安置場所については、

埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行ってはならない。

引用『墓地、埋葬等に関する法律』第4条

と定められています。

これはつまり、遺体を埋葬したり遺骨を埋蔵するのは《墓地として公的に認められた場所》でしか行えないという意味です。

しかし、遺骨を自宅に置いておくことは『埋葬』にも『焼骨の埋蔵』にも該当しないのです。

埋葬も埋蔵も基本的には【土中に埋める】ということを意味しますから、土中に埋めずに保管することは『埋葬又は焼骨の埋蔵』のどちらにも該当しません。

したがって、遺骨を土中に埋めなければ保管の場所は問わないと解釈できるわけです。

未熟僧
未熟僧
だから、自宅でも遺骨を置いておけるんです。

粉骨など『遺骨の加工』をすることは違法?

遺骨を粉骨するなど『遺骨の加工』が違法なのではないかと心配する人もいます。

大丈夫です、遺骨を加工することについても法的に問題はありません。

手元供養では、分骨した遺骨を小さな骨壺やケースなどに収納したり、遺骨を加工してペンダントにする人もいます。

その際は遺骨を砕いて【粉骨】にするわけですが、これに対して違法性を心配する人が多いんですよね。

近年では遺骨を海へまく【海洋散骨】という葬送形態があり、海洋散骨のときにも粉骨が必要です。

そして、散骨(粉骨)に対する厚生労働省の見解は『焼骨は、その形状を視認できないよう粉状に砕くこと。』となっています。

つまり、国は遺骨を砕く(加工する)ことを認めているんですよね。

未熟僧
未熟僧
ちなみに、欧米諸国では遺骨を【2ミリ以下】まで砕くのが基本です。

このように、遺骨の加工についても法的に問題は何もないので、どうぞご安心ください。

手元供養のメリットとデメリット

手元供養にはお墓へ納骨するのとは違ったメリットやデメリットがあります。

多くの人はメリットだけに目が行ってしまいがちですが、ちゃんとデメリットも知っておかないと思わぬトラブルを招いてしまうかもしれません。

手元供養は、必ずメリットとデメリットの両方をよく精査してから判断をしてください。

手元供養のメリット

手元供養が増えているということは、それなりに大きなメリットがあるからです。

では、どのようなメリットがあるのでしょうか?

いつも故人を身近に感じていられる

手元供養をするメリットといえば、いつも故人を身近に感じていられるということです。

お墓に納骨してしまうと、何となく故人はもう『遠い存在』になってしまうことでしょう。

しかし、遺骨が自宅にあれば、いつも故人がそこにいてくれるような気がします。

さらに、位牌に手を合わせるよりも故人の遺骨に手を合わせる方が、自分の思いやメッセージがより直接的に故人に伝わりそうな気がしますよね。

大切な亡き家族とずっと一緒にいたいと考えるのなら手元供養がベストです。

お墓を建てる必要がないので経済的負担が減る

手元供養をするということは、お墓を建てる必要がないということです。

これって、かなり経済的な負担が減りますよね。

お墓を建てるにはそれなりに費用がかかるため、土地と石材の両方で200万円くらいは覚悟しなきゃいけません。

また、お墓を建てるだけではなく、お墓を維持していくことも想像以上に大変なことなんです。

しかし、手元供養にはそれがありませんから、経済的な負担を最小限に抑えることができます。

ただ、僕の個人的な意見としては、お墓はなくても、それに代わるものはあってもいいんじゃないかなと思います。

ただ単に遺骨を何かの台の上に置いてあるだけだと、供養の気持ちを故人に示せないのではないでしょうか。

未熟僧
未熟僧
ただ自宅に置いてあるだけでは、遺骨を【放置】しているのと大差ありません。

それに、お墓のように数百万円もかかるわけじゃないので、ある程度は【遺骨の居場所】を作ってあげませんか?

供養に関する費用が少ない

手元供養であれば、供養に関する費用が少ないことがメリットです。

日本人の多くは【お寺】にお墓があり、遺骨はそのお墓へ納骨します。

納骨以後は、お寺から故人の供養をするように求められますので、なにかと供養に関する費用がかかります。

しかし、お寺にお墓を持たず、遺骨を自宅に安置しておけば、供養を求められることはありません。

お寺ではなく霊園にお墓があれば供養を求められることはありませんが、墓地を維持するための管理料などを支払う必要があります。

一方で、手元供養なら管理料がありませんから、さまざまな費用面において負担が少なくてすみます。

お墓のある場所が自宅から遠い人には最適

手元供養をする理由に、お墓のある場所が自宅から遠いという人もいます。

自宅からお墓までの距離はとても大事で、これはお墓参りをする気になるかどうかの大きな分かれ道になります。

もしお墓が遠くにあるとしても、車で数十分くらいの距離なら何とかなりそうですが、新幹線や飛行機を利用しなくちゃいけないレベルの距離だともうダメです。

本当に必要最低限のことだけをやって、それ以上はお墓参りに行こうなんて思わなくなります。

そして、お墓参りをしなくなると、回忌法要などの【故人の供養】もしなくなるんです。

未熟僧
未熟僧
移動が大変すぎて『故人のために何かをする』という気持ちが徐々に薄れていくんですね。

だったら、故人の遺骨を自宅に置いておく方がずっといい。

自宅からお墓までの距離が遠い場合は、あなたのためにも、そして故人の供養という意味でも、手元供養が最適です。

手元供養のデメリット

手元供養にはメリットだけではなく、当然ながらデメリットもあります。

メリットばかりを見てしまうと、予想外のデメリットに気がつかず後悔することになるかもしれませんので十分に注意してください。

遺骨の保管はカビに要注意!

あなたの家には、梅雨時などに『何となくカビ臭い部屋』はありませんか?

もしもそんな部屋があるなら、そこには絶対に遺骨を置かないでください。

なぜなら、遺骨にカビが発生する可能性があるからです。

手元供養の一番のデメリットは、遺骨にカビが発生しないように注意しなくてはいけないことです。

一度でも骨壺のフタを開けた場合はカビに注意しましょう。

あなたもご存じのように、カビが発生するためには、

  • 温度
  • 湿度

が揃うことが条件ですよね。

あなたは、少し怖いけどちょっとだけ骨壺の中を覗いてみたり、場合によっては遺骨に触れてみたりしませんでしたか?

空気中には見えない菌がたくさんあります、骨壺のフタを開けた瞬間に部屋の中の菌が骨壺に入ります。

未熟僧
未熟僧
その時点でカビを発生させる準備は整ってしまいました。

そして、遺骨に直接触っていると、カビの発生確率はさらに上昇。

後は、温度と湿度がちょうどいい数値に達したところでカビが発生します。

というわけで、手元供養をするなら、遺骨を置く場所はできるだけ高温多湿を避けることが重要です。

できれば、

  • 二階以上の部屋
  • 風通しのよい部屋
  • 南向きの部屋

がイイですよ。

せっかく自宅に遺骨を置くのですから、遺骨にカビを発生させてしまわないように十分注意をしてください。

あなたとあなたの家族以外の人にとっては少し怖い

自宅に故人の遺骨があると、何となく故人を身近に感じられて安心しますよね。

しかし、そのように思うのは【あなた】と【あなたの家族】だけであることは理解しておいてくださいね。

それ以外の人からしてみれば、訪問先の部屋に遺骨が置いてあるのを見ると、怖くて気味が悪いのです。

未熟僧
未熟僧
もしかすると親戚でもそのように思うかもしれませんよ。

ですから、自宅にお客さんが来ることがわかっているのなら、遺骨は見えないようにしておくのがマナーです。

もちろん、そのお客さんが故人に手を合わせに来るのなら、そんなことをする必要はありません。

最終的には何らかの方法で納骨や散骨をすることになる

最後は、手元供養のデメリットというか、これは仕方のないことになります。

手元供養をしても、最終的には遺骨を何らかの方法で納骨や散骨することになるんですよね。

手元供養でよくあるのは、遺骨を管理している人が亡くなった後に【他の誰も遺骨を管理できない】というケースです。

それで、家にあった遺骨の処分という問題が出てきてしまうんです。

手元供養は、お墓とは違って【代々にわたり自宅で供養する】というわけにはいきませんよね。

未熟僧
未熟僧
やろうと思えばできますが、現実的ではありません。

先ほども紹介した『墓地、埋葬等に関する法律』で定められているように、遺骨は決まった場所以外に納骨をすることができません。

そのため、遺骨を庭に埋葬することはできませんし、勝手に海や川へ流したり、ましてやどこかへ投棄するわけにもいきません。

手元供養をしていても、管理している人が亡くなった後は、自宅にあった遺骨はどこかのお墓に納骨されるか、手続きをしてから海洋散骨されます。

一時的には遺骨が自宅にあっても、いずれは然るべき場所に納めなければいけないことを承知しておいてください。

まとめ:手元供養でも大丈夫!メリットとデメリットを考え、遺骨を正しく保管して供養をしましょう。

大切な家族の遺骨をすぐにお墓へ納めてしまうのは何だか抵抗がありますよね。

また、そもそもお墓に納骨すること自体を考えていないという場合もあるでしょう。

その場合は、自宅に遺骨を置いて『手元供養』をしてください。

遺骨は必ずお墓に納骨しなくてはいけない、というものではありません。

そして、遺骨を自宅に置くことは宗教的にも法的にも問題ありません。

ただし、手元供養にはメリットだけでなくデメリットもあります。

それさえわかっていれば、あとはあなたの自由です。

遺骨を自宅に置いて毎日手を合わせてあげるのだって、十分に良い供養になります。

ですから、手元供養を望むのであれば、安心して故人の遺骨を自宅に置いて、心を込めて供養をしてあげてくださいね。