お坊さん歴20年以上の未熟僧と申します。
- 故人の強い希望だったから海洋散骨をしてあげたい。
- お墓なんていらないから海洋散骨でいいよ。
- 自分のときは海洋散骨にしたいから調べておきたい。
- 海洋散骨って法的に問題ないの?
ここ数年で希望者が急増している『海洋散骨』。
大切な人の遺骨を【土の中】ではなく、多くの生命を生み出した【海の中】に返したいと考える人が『海洋散骨』を選んでいます。
しかし、『海洋散骨』にはたくさんのメリットがある一方で、十分に注意すべきデメリットもあります。
まだ新しい葬送形式ということもありますので、安易に選んでしまうのではなく、家族や親戚との話し合いが必要です。
それには、まず『海洋散骨』がどのようなものかをしっかりと理解しておかなければいけません。
この記事では、
- 海洋散骨とは何か
- 海洋散骨は法的にどう扱われているのか
- 海洋散骨のメリットとデメリット
- 海洋散骨をする場合の流れや費用
について解説しています。
最後まで読んでいただければ、『海洋散骨』に関する一通りの情報が得られ、安心して散骨することができますので、ぜひチェックをしてみてください。
\小型クルーザーで家族だけの海洋散骨/
海洋散骨とは
人が亡くなると、一般的には故人の遺骨を《お墓》や《納骨堂》などに納骨します。
しかし、近年ではお墓や納骨堂に納めるのではなく、遺骨を【海】にまいてしまう、
『海洋散骨』
という新しい葬送形態かあります。
遺骨を海にまくといっても、どこかの砂浜や岸壁からまくのではありません。
ちゃんと沖合まで専用の船を出して、許可を得た場所で慎ましやかに遺骨をまくのです。
また、遺骨は骨壷から出してそのまま海にまくのではなく、事前にしっかりと【粉骨】をしておいて、もし人が見てもそれが遺骨だと分からないようにしてから海に返します。
海というのは多くの生命を誕生させています。
海洋散骨は、そんな【生命の母】である海に故人を帰してあげるわけです。
とはいえ、海洋散骨はまだ新しい葬送形態ですから、人によっては理解されないこともあり、親戚などから反感を買ってしまうことも多いです。
ですから、海洋散骨をするにあたっては、まずは家族でよく話し合い、親戚にもちゃんと説明ができるようにする必要があります。
しかし、ほとんどの【生き物】は自然から生まれて自然に帰ります。
わざわざお墓を作って遺骨を納めるなんて、そんなことをするのは人間くらいのものでしょう。
なので、そういう意味では海洋散骨のように遺骨を自然に帰すのが本来の葬り方なのかもしれませんね。
法律で海洋散骨は認められているの?
ここ数年で『海洋散骨』を希望する人は急増しています。
でも、『海洋散骨』では遺骨を砕いて海にまくのですから、それが違法なのではないかと不安になりますよね?
いくら故人の希望だったとしても、それが違法であれば諦めるしかありません。
はたして『海洋散骨』は法的に認められているのでしょうか?
海洋散骨は違法ではない
海洋散骨を希望する人のほとんどは、
と不安になります。
一般的に、遺骨というのは『お墓や納骨堂に納めるもの』と考えられていますが、『海洋散骨』ではそれを海にまくわけですから、いろいろと不安になって当たり前です。
では、先に結論を言いますと、
海洋散骨は違法ではない
ので安心してください、今のところはね。
まず『散骨』そのものについては違法ではありません。
ただし、『散骨』が法律で認められているというわけではなく、『散骨』に関する詳細な法律がまだないということです。
遺骨の扱いについては【刑法第190条(死体損壊罪等)】で決められており、
死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、3年以下の懲役に処する。
《※参照:刑法第190条》
となっています。
要するに遺骨というのは、
- 勝手に壊すのはダメ
- 勝手に捨てる(放置)するのはダメ
- 勝手に自分あるいは第三者のものにする(占有する)のはダメ
ということなんですよね。
【刑法第190条(死体損壊罪等)】では、社会通念上問題があるような損壊・遺棄・領得はダメだよと言っているのです。
ですから、社会的な習慣とか宗教観から外れておらず、節度をもって常識的な範囲で行うなら大丈夫なのです。
では次に、遺骨を海にまくことについてですが、これも違法ではありません。
遺骨の埋葬については【墓地、埋葬等に関する法律】(※略して【墓埋法】)という法律があるんですよね。
そして、【墓埋法】の第4条1項では、
埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない。
《参照:墓地、埋葬等に関する法律 第4条1項》
と遺骨の埋葬場所について決められています。
要するに、遺骨は墓地以外の場所に納骨してはいけません、ということです。
墓地というのは、お墓や納骨堂を設けるために自治体から許可を受けた区域のことをいいます。
【墓埋法】で規制の対象となっているのは、あくまで《埋葬》と《焼骨の埋蔵》であって、《散骨》についてはその対象ではないんです。
つまり、『遺骨を埋める』場合は許可された区域でないとダメ、でも『遺骨をまく』場合は決まりがない、ということです。
この【墓埋法】が制定されたときには、まさか遺骨を海にまくなんて思わなかったんでしょうね。
かといって、それに対応すべく【墓埋法】の内容が改定されたわけでもありません。
ですから、現時点では『遺骨をまく』ことに関して、今のところ国は何も変えるつもりはみたいですね。
ということで、『遺骨をまく』ことに関する決まりはないですし、それに対する罰則も当然ありません。
ただし、いくら決まりがないとはいえ、社会的な習慣とか宗教観から外れず、節度をもって常識的な範囲で行うというのが前提であることには変わりません。
また、埋葬や散骨といったような【故人を弔う方法】については、それぞれの地域によって違います。
ですから、散骨についてもそれぞれの自治体によって条例に違いがあります。
以前は散骨ができた地域でも現在はどうなっているか分かりませんので、散骨をするときには必ず自治体に確認をしましょう。
トラブル回避!海洋散骨のマナー
海洋散骨をすることは法的に問題ありません。
しかし、法的に問題がないからといって何でもアリというわけではないです。
遺骨を海にまくのですから、最低限のマナーを守らなければいけません。
海洋散骨をする上で、必ず守るべき2つのマナーを紹介します。
遺骨はしっかりと粉砕する
まず1つ目の最低限のマナー。
それは、
遺骨はしっかりと粉砕する
ということです。
いくら広大な海にまくからといって、骨壺から出した遺骨をそのままの状態でまいてはいけません。
遺骨はちゃんと細かく粉砕してから海にまきましょう。
とはいえ、粉骨したときの大きさなどが法律で決まっているわけではありません。
決まりがあるわけではないですが、遺骨だと分からないくらいには細かく砕かないとダメです。
これは、周辺に住んでいる人たちや周囲への環境に対する最低限のマナーです。
0.2㎜以下って、けっこう細かくしないといけませんよ。
あなたは自分の家族の遺骨を《0.2㎜以下》まで細かく粉砕できますか?
きっと、気が引けてしまって、そこまで細かく粉砕できないのではないかと思います。
しかも、《0.2㎜以下》なんて素人にはできない作業ですから、専門の業者へ依頼するしかありません。
日本の場合はそこまで細かくしなくてもいいのですが、遺骨を海にまくには他人や環境への配慮が必要だということは知っておいた方がいいです。
海洋散骨を勝手に自分でやらない
続いて、2つ目の最低限のマナー。
それは、
海洋散骨を勝手に自分でやらない
ということです。
『海洋散骨』というのは文字どおり、海に遺骨をまくことです。
海というのは、誰でも、いつでも、どこからでも、入ろうと思えば自由に入れます。
しかし、だからといって【最寄りの海】とか【思い出の海】で勝手に遺骨をまいちゃいけません。
まず、海洋散骨をする場所にはマナーがあって、
- 陸から【1,852m】以上離れた海洋上
- 漁場ではない場所
- 人目につかない場所
- 航路ではない場所
ということになっています。
となると、どこかの砂浜や海岸などで勝手に自分で散骨をするのはNGです。
船に乗るといっても、ちゃんと【海洋散骨をするための船】を出す必要があって、
- フェリー
- 遊覧船
- 交通船
- 漁船
での散骨は不可となっています。
このように、海洋散骨においては場所にもマナーがありますので、自分の好きなように散骨するというわけにはいかないのです。
ですから、海洋散骨をする場合は勝手に自分で散骨をせず、ちゃんと専門の人に依頼するようにしましょう。
海洋散骨のメリット
近年では、新しい葬送形態として海洋散骨が多くの人気を集めています。
人気を集めるということは、それなりのメリットがあるのです。
ここからは海洋散骨のメリットについて書いていきます。
故人の希望に沿うことができる
海洋散骨が人気を集めているのは、
自分の遺骨を自然に帰してほしい
と考える人が多いからです。
海洋散骨であれば、そのような希望を叶えることができます。
つまり、海洋散骨はある程度なら、
故人の希望に沿うことができる
というメリットがあります。
生き物というのは、自然から生まれて、やがてその命を終えたら自然に帰るものです。
だから、『自分の遺骨は、どこかへ安置しておくのではなく、他の生き物と同じように自然に帰してほしい。』と願うわけですね。
他にも僕が聞いたことがある理由としては、
というのがありました。
なるほど、たしかにお墓や納骨堂の中だと狭くて暗いですから、『閉所恐怖症』の人にとって広くて明るい海に散骨してほしいんですね。
今までは、『遺骨はどこかに納めるもの』という考え方でしたが、近年ではそれが徐々に変わり始め、自分の遺骨をどうするのかを自由に選択できるようになってきました。
今後は、故人の希望を尊重して海洋散骨を選ぶ人がさらに増えていくことでしょう。
お墓を建てる必要がなく、費用を大幅に削減できる
海洋散骨のメリットとして、
費用を大幅に削減できる
というのがあります。
正直なところ、残された家族にとって『出費を抑えられる』というのは大きなメリットとなります。
お墓を建てる必要がない
一般的に、はじめて家族が亡くなると『お墓を建てる』ことがほとんどです。
この『お墓を建てる』には大きなお金が必要なんです。
今まで僕が見てきた限りでは、一般的なお墓を建てるまでの費用が、ザックリ言うと、
- 墓地(土地)の使用料が、30万円~150万円くらい
- 墓石の代金が、100万円~200万円くらい
なんですよね。
ですから、上記の2つを合計すると、お墓を建てるためにだいたい【200万円~250万円】くらいは必要なんですよね。
しかし、海洋散骨をすれば、
お墓を建てる必要がない
のです。
後述する海洋散骨の費用を支払ってしまえば、後はもう何も払うものはありません。
このように、お墓を建てる必要がないというのは、残された家族にとっては《数百万円の節約》というかなり大きなメリットがあるのです。
維持費が不要
海洋散骨にすればお墓が必要ありません。
となれば、当然ながらお墓を管理していくための『維持費』も必要ありません。
お墓を持っている人の多くは、お墓の維持費でけっこうな負担がかかっているんです。
お墓を持っていると、
- お寺や霊園に支払う管理料
- 清掃など、自分で墓地の管理をする費用
- 行事などのお布施や寄進
などがあり、結果的に意外と多くの『維持費』が必要になります。
しかも、維持費というのは、お墓がある限りずっと発生するものですから、継続的に負担をし続けなくてはいけません。
一方で、海洋散骨をしてお墓を持たなければ、最初の散骨費用だけは必要ですが、その後は何の維持費もありません。
ですから、長期的に見ても《海洋散骨をする場合》と《お墓に納骨する場合》とでは、出費という点で非常に大きな差が出ます。
したがって、海洋散骨は費用面において非常に優れた葬送形態であるといえます。
お墓参りをする必要がない
海洋散骨にしてお墓を持たないことで、初期費用や維持費以外にも金銭的なメリットがあります。
お墓を持たないということは、必然的に、
お墓参りをする必要がない
わけです。
つまり、海洋散骨をすることで、お墓参りに関する負担が一切かからないのがメリットとなります。
お墓参りをするときには、
- お線香
- お花
- お供物
- 交通費
などが必要です。
なので、これが毎回となれば地味に費用がかさんで、経済的な負担があるのです。
また、お墓参りをするのは費用面だけではなく、お墓までの移動や墓地の掃除など、体力的な部分でも負担があります。
さらに言えば、お墓を持っていると、本当は面倒だったとしても『お墓参りをしなくちゃいけない』という心理状態になり、それが人によっては大きな心理的な負担となるのです。
お墓参りがなくなることで、
- 経済的な負担
- 体力的な負担
- 心理的な負担
もなくなるのですから、これは無視できない大きなメリットですよね。
お墓の後継者問題が無くなる
お墓を持たないということは、当然ながらお墓を継ぐ人もいません。
ですから、海洋散骨をしてお墓を持たなければ、近年多くの家で課題となっている、
お墓の後継者問題
が無くなるのです。
日本では昔から【お墓は代々にわたって受け継がれていくもの】と考えが根強く残っています。
だから、多くの人は「ご先祖様から受け継いだものだから、自分もちゃんと後代に残さなきゃ。」と頑張ってお墓を維持してきました。
ところが、昨今の少子高齢化や宗教離れにともない【お墓を継ぐ人】がいなくなってきています。
それで、多くの家ではお墓の後継者問題で頭を悩ませているのです。
しかし、お墓があるから後継者問題が出るわけで、散骨して遺骨が残っていなければお墓が必要なく、同時にお墓の後継者問題もなくなります。
つまり、海洋散骨は、現代の日本人が抱えるお墓の問題を根本的に無くしてくれるものなのです。
【参考記事】:お墓なんて継ぎたくない!お墓を継承せずにすむ方法とは?
海さえあれば、そこがお墓の代わりになる
海洋散骨をすれば、お墓は必要ありません。
でも、お墓がないと『手を合わせる対象』がないので、お墓の存在に慣れ親しんだ私たちとしては何となく違和感があるかもしれません。
そんなときは、どこかの海へ行って、そこで故人を想いながら手を合わせてください。
遺骨を海へまいたということは、
海さえあれば、そこがお墓の代わりになる
と考えることができます。
地球上の海は繋がっていますから、海全体が故人にとってのお墓なんです。
どこかへ旅行をしたときなどに海があったら、海の近くで立ち止まり、そこで海に向かって手を合わせましょう。
きっと、波音が《故人の声》のように聞こえてくることでしょう。
海洋散骨のデメリット
海洋散骨には多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットもあります。
デメリットの部分もちゃんと理解した上で、海洋散骨にするかどうかを慎重に決めてください。
海にまいてしまうと遺骨は二度と戻らない
海洋散骨の最大のデメリットは、
海にまいてしまうと遺骨は二度と戻らない
ということです。
家族が亡くなったばかりの頃は、故人の希望を叶えてあげたいという気持ちが特に強くなります。
それで、故人の希望通り海洋散骨をするときに遺骨を全部まいてしまうのです。
でも、少し気持ちが落ち着いてきた頃に、「少しだけでも遺骨を残しておけばよかったかな・・・。」と後悔するんですよね。
遺骨を自然に帰すということは、それ以後は二度と戻ってこないと覚悟をすることです。
もしも【後悔しない】という自信がないなら、遺骨を全部まくのではなく、一部だけを取り分けておき、残りの遺骨をまくようにしましょう。
取り分けた遺骨は、自宅で手元供養をしてもいいでしょうし、お墓や納骨堂に納めるのでもいいでしょう。
海洋散骨においては『一時的な感情』だけで決めないように十分に注意してくださいね。
天候によっては散骨の日程が変わってしまう
海洋散骨について調べてみると、どのサイトや雑誌でも【キレイで穏やかな青い海】の画像が出てきます。
しかし、海はいつでも【キレイで穏やかな青い海】ではありません。
天候によっては海が荒れてしまい、船を出すことができない場合もあります。
私たちには自然をコントロールすることなんかできません。
ですから、散骨する日を決めたところで、
天候によっては散骨の日程が変わってしまう
というデメリットがあります。
陸の上だったら多少の悪天候でも強行できますが、海の場合はそうもいきません。
特に台風の発生しやすい時期なんかは要注意ですから、海洋散骨をするときには候補の日をいくつか決めておくことが大事です。
委託散骨の場合、どのように散骨されたか分からない
海洋散骨というのは、家族が同行せずに、散骨を専門業者に全面的に任せることもできます。
その方が、散骨にかかる費用もかなり抑えられます。
しかし、全面的に任せた場合は家族が現場にいないので、
どのように散骨されたか分からない
というデメリットがあります。
もちろん、業者は遺骨を丁寧に扱って、そして適正な方法で散骨をしてくれます。
それに、散骨時の写真をもらえたりしますので安心ですよ。
とはいえ、「それでも、やっぱり何だか心配だ。」という人もいることでしょう。
どうしても心配な人は、大事な家族の遺骨をまくわけですから、費用は増えてもちゃんと同行をしてください。
散骨には同行できない、でも心配だという人は、海洋散骨そのものを考え直すべきですね。
親戚からクレームがくる
海洋散骨はまだ新しい葬送形態です。
しかも、遺骨を海にまくという今までにない形態なので、それに対して理解を示さない人も多いのです。
特に、それが故人の親戚関係にあるような人であれば、きっと何らかの文句を言ってくることでしょう。
ですから、海洋散骨をすると、
親戚からクレームがくる
というデメリットがあります。
海洋散骨をしたことで親戚間でモメるのはけっこうあるようですから、その点は十分に注意が必要ですよ。
遺骨を海にまくことが故人の強い希望であったことをしっかりと伝え、どのような経緯で海洋散骨に至ったのかを説明できるようにしておきましょう。
海洋散骨にお坊さんは同行しない
遺骨をお墓や納骨堂へ納めるときには、お坊さんに供養をしてもらいます。
これによって、故人はちゃんと供養され、家族も安心することができます。
しかし、これが海洋散骨となれば話が変わります。
お墓や納骨堂への納骨とは違って、
海洋散骨にお坊さんは同行しない
というケースがほとんどです。
一部の業者では、提携しているお坊さんが船に同行して供養をするサービスもありますが、多くの業者はそこまでしません。
ほとんどの場合は、お花と一緒に故人の遺骨をただ海にまくだけで、そこで供養はされないのです。
もしかすると、お坊さんによっては依頼すれば海洋散骨に同行してくれるかもしれませんが、そんなお坊さんはごくごく稀です。
もしも、あなたと付き合いのあるお坊さんが海洋散骨に同行してくれる場合、礼儀として供養料は多め(相場の1.5倍くらいの金額)で納めてあげてくださいね。
海洋散骨は誰に依頼すればいいの?
海洋散骨は自分で勝手にやってはいけません。
ちゃんと専門知識のある業者に依頼した方が、しっかりと丁寧な散骨ができますし、結果的に費用の面でも安く抑えられます。
ですから、海洋散骨は、
- 散骨業者
- 散骨サービスのある葬儀社
のどちらかに依頼しましょう。
散骨業者に依頼する
海洋散骨をするなら、専門の知識や技術を持っている、
散骨業者
に依頼しましょう。
海洋散骨には、個別(貸切)散骨、合同散骨、委託散骨などの散骨プランがあり、それぞれに対していろんなオプションも用意されています。
もちろん散骨プランやオプションは業者によって違いますので注意をしてください。
いくつかのプランやオプションの中から、故人やあなたが希望するものを選び、心を込めて散骨してあげましょう。
ちなみに、散骨業者はあらかじめ複数社から資料や見積もりを取っておくといいですよ。
最近では、お葬式やお墓のことなど【自分自身や家族の死後】を想定して生前相談をしておくのが当たり前です。
何でも『備えあれば憂いなし』ですから、今からよく調べて比較検討しておくことをおすすめします。
\小型クルーザーで家族だけの海洋散骨/
散骨サービスのある葬儀社に依頼する
海洋散骨は散骨業者以外にも、
散骨サービスのある葬儀社
に依頼することもできます。
そのような葬儀社も当然ながら海洋散骨についての専門の知識や技術がありますので安心です。
とはいえ、散骨サービスのある葬儀社というのは散骨業者と提携をしているので、結局のところ散骨業者に依頼するのとほとんど変わりません。
あなたが今どこかの葬儀社の会員などになっていたら、海洋散骨サービスがあるか一度確認をしてみてください。
海洋散骨の費用はどのくらい?
海洋散骨は、お墓や納骨堂を使用することに比べれば圧倒的に費用を抑えられます。
では、海洋散骨の費用はどのくらいかというと、
5万円~50万円
くらいです。
これほど金額の差が出ているのは、先ほども言いましたように海洋散骨にはいろんなプランがあるからです。
大まかな目安でいうと、
- 『委託散骨』⇒5万円~10万円
- 『合同散骨』⇒10万円~20万円
- 『個別(貸切)散骨』⇒20万円~30万円
- 『ヘリ・セスナ機チャーター散骨』⇒40万円~50万円
といったようにプランによって費用が全然違います。
散骨を業者へ全面的に任せてしまう『委託散骨』の場合は、費用がかなり抑えられるので【5万円~10万円】といったところでしょう。
何組か合同で散骨を行う『合同散骨』の場合は、数組のために船を出すことになり、また散骨時の献花の料金もかかるので、だいたい【10万円~20万円】くらいです。
『個別(貸切)散骨』の場合は、一家族のために専用の船を出し、散骨時の献花の料金もかかるので、だいたい【20万円~30万円】くらいでしょう。
さらに、海洋散骨は船だけではなくセスナ機やヘリをチャーターして行う場合もありますが、それだと高額になり【40万円~50万円】くらいは必要です。
ただし、散骨業者によってはもっと安くすむケースもありますし、逆にもっと高額になってしまうケースだってありますので、あくまで参考程度というカンジです。
選ぶプランによって費用が全然違いますが、故人の希望そして家族の希望に合わせて、どのような海洋散骨にするかを決めましょう。
ちなみに、先ほども言いましたが、一般的なお墓を建てるまでの費用は、
- 墓地(土地)の使用料が、30万円~150万円くらい
- 墓石の代金が、100万円~200万円くらい
なので、この2つを合わせると大体【200万円~250万円】くらいは必要なんですよね。
一方で、海洋散骨にすれば、新しくお墓を建てる場合の《4分の1》あるいは《5分の1》くらいの金額で抑えられるんです。
このように、海洋散骨は費用面で圧倒的なメリットがあるので多くの人から注目を集めているわけですね。
海洋散骨をする前にすること
海洋散骨をするには、散骨業者や葬儀社に依頼しなくてはいけません。
ここからは、海洋散骨をする前の流れについて一通り紹介していきます。
まずは家族でよく話し合う
海洋散骨をするまでの手順としては、まずはどのように海洋散骨をするかを家族でよく話し合うことから始まります。
最初に、根本的なところですが【本当に海洋散骨をするのかどうか】を話し合いましょう。
あなたは海洋散骨をするつもりでも家族は知らない、なんてことがないようにしてくださいね。
散骨というのは本人だけではなく家族全員が納得しなくてはいけません。
家族全員が納得してからでないと、いざ散骨する時にトラブルが起きることもあるのです。
次に、遺骨を全部まいてしまうのか、それとも一部だけ残しておくのかを決めておきましょう。
遺骨の一部だけ残すのであれば、以後その遺骨をどのようにするのか、そして誰が守っていくのかも決める必要があります。
ちなみに、少量の遺骨であれば、お墓や納骨堂に納めるのではなく、自宅に遺骨を保管する『手元供養(てもとくよう)』にする人も多いですよ。
事前相談
散骨業者や葬儀社では、海洋散骨について事前相談ができます。
業者によって、費用はもちろん散骨の内容も違いますので、どのような内容で相場の金額がいくらなのかを知るために、事前に複数社で相談をすることが望ましいです。
事前相談では、
- 委託、合同、個別、どの散骨プランにするのか
- 遺骨は【全部まく】のか【一部だけ残す】のか
- 必要な書類は何なのか
など、主要なところを確認した上で詳しい説明を受けてください。
複数社に事前相談をするのはけっこう大変ですし、面倒くさくなって1社だけしか説明をきかない人もいますが、できれば3社くらいは頑張って相談をしてみてください。
海に散骨したらもうやり直しはできませんので、散骨業者選びは時間がかかっても慎重に行うべきですよ。
どうしても事前相談に行く時間がない場合は、複数社に資料請求をして比較検討くらいはしておきましょう。
また、希望に合った業者があれば、先に『生前申込の手順』を確認しておくのもいいですね。
海洋散骨を望む人の多くは、『自分の死後のことで家族に迷惑をかけたくない』と強く思っています。
だとしたら、あなたが先に生前申込を済ませておいて、いざという時に家族の手を煩わせることがないようにしてあげましょう。
本申し込み
海洋散骨をする業者が決まったら、本申し込みをしましょう。
本申し込みをする時には、提出する書類がいくつかあり、多くの場合、
- 業者所定の申込書(海洋散骨依頼書)
- 同意書
- 火葬許可証あるいは改葬許可証
- 施主の身分証明書のコピー
などの書類が必要です。
このとき、火葬の後どこにも納骨をしていない場合は『火葬許可証』を提出し、一度どこかに納骨していた遺骨の場合は『改葬許可証』を提出するので、この点は注意をしてください。
『火葬許可証』は火葬をする際に役所から発行されて、遺骨とともに喪主に渡されているはずです。
『改葬許可証』は、現在納骨されている墓地の管理者から《納骨証明書(または分骨証明書)》を発行してもらい、それを現在納骨されている墓地がある市町村の役所へ提出して手続きをすれば発行されます。
そして、申込書に記入する内容は、どこの業者もだいたい同じで、
- 散骨の希望日時
- 遺骨の状態の確認
- 遺骨をどのようにして業者へ預けるのか
- 合同や個別の場合、乗船人数は何人なのか
- 合同や個別の場合、献花をするのかどうか
- 施主に骨壺の返却をするのかどうか
- 散骨時の写真撮影をするのかどうか
- 散骨証明書は出してもらうのか
- 費用の支払い方法
についてです。
この中で、少し分かりにくいのが『遺骨の状態の確認』という部分ですよね。
『遺骨の状態の確認』というのは、散骨する予定の遺骨が、
- 火葬後どこにも納骨されていない状態
- 一度お墓に納骨され、それを取り出した状態
- すでに粉骨されている状態
これらの内でどれに該当しているのか?ということです。
遺骨がどこにも納骨されていないままであれば、業者に預けて粉骨してもらう必要があります。
長年お墓に納骨されていた場合、骨壺の中の遺骨が汚れていることがあるので、簡単な洗浄などをしてから粉骨した方がいいですね。
すでに粉骨がされている状態であれば業者へ支払う粉骨費用が不要です。
業者によっては他にも申し込み時に必要なものがあるかもしれませんので、ちゃんと確認をするようにしてください。
\全国の海域に対応!散骨のプロの業者/
遺骨の、持ち込み・引き取り・郵送
先にも解説しましたが、海洋散骨をするためには、遺骨を細かく粉砕しなくてはいけません。
骨壷から出した遺骨をそのまま海へまくのは重大なマナー違反ですし、どんな海洋散骨業者でもそれは認めてくれません。
とはいえ、自分自身で家族の遺骨を細かく粉砕するのは無理だという人がほとんです。
ですから、遺骨は散骨業者に事前に預けて、業者の方で粉砕作業をしてもらいます。
では、遺骨をどのように業者へ預けるのか?
遺骨を預ける方法は、
- 持ち込み
- 引き取り
- 郵送
の3つです。
散骨を依頼する散骨業者があなたの家から近い場所にあれば、あなたが自分で遺骨を持ち込んでもOKです。
その方が余計な引取出張費も請求されず、しかも確実に届けられるので安心です。
しかし、散骨業者へ持ち込む時間がないこともありすよね。
そのような場合、費用は多少かかると思いますが、散骨業者に頼んで遺骨を引き取りに来てもらいましょう。
また、散骨業者が自宅から遠い場合、遺骨をあなたが持って行くのも散骨業者に引き取りに来てもらうのも、いずれも難しいケースだってあります。
そういったケースであれば、遺骨を郵送するしかありません。
最近では、遺骨を専用の『送骨キット』か、あるいは『ゆうパック』で送ることもできます。
持ち込み、引き取り、郵送、この3つからあなたの都合のよい方法で遺骨を散骨業者へ預けてください。
粉骨作業
粉骨作業は自分でやらずに、ちゃんと散骨業者に依頼をした方がいいですよ。
自分でしてあげたいと思うかもしれませんが、自分の家族の遺骨をしっかりと細かく砕く作業は普通の人では精神的に無理です。
細かく砕くというのはだいたい【2mm~3mm】くらいの大きさまで砕くということです。
あなたなら、自分の家族の遺骨をここまで細かく砕けますか?
きっと、作業的に大変なだけでなく、心理的にも大きな負荷がかかりますよ。
ですから、粉骨作業については業者に任せた方がいいのです。
ちなみに、散骨業者では基本的に機械を使ってパウダー状になるまで遺骨を粉砕します。
人の手で粉砕する業者もあるのですが、ほとんどの業者は機械を使用して、人骨だと分からないように確実に細かく粉砕しています。
細かく粉砕した遺骨は水溶性の骨袋へ入れられ、散骨の当日まで保管されます。
また、業者によっては粉骨をするときに遺骨を洗ってくれるところもあります。
じつは、遺骨というのは保管状態によっては汚れていたりするんですよね。
火葬の後からずっと自宅で保管されていれば、骨壺の中の遺骨が汚れることなく乾燥もしているので大丈夫です。
でも、問題なのはお墓から取り出した遺骨。
僕も何度も見ていますが、お墓から取り出した骨壺の中というのは湿っていますし意外に汚れています。
骨壺の中の遺骨が土で汚れていたり、場合によっては虫の死骸なんかもあるのです。
それをそのまま粉砕するのは故人に対して失礼なので、先に『お骨洗い』をしてから粉骨をしてくれるのです。
ただし、この『お骨洗い』は有料オプションになっていることが多いので注意をしてくださいね。
海洋散骨の当日の流れ
散骨業者に遺骨を預け、しっかりと粉骨をしてもらったら、あとは申し込んでおいた日時に海へ散骨するだけです。
ここからは、海洋散骨の当日の流れについて紹介します。
散骨を業者に委託している場合
散骨業者に散骨を委託している場合は、申し込みのときに指定した日に散骨をしてくれます。
散骨をした後は、海のどのあたりで何時ごろに散骨したかが分かるような『散骨証明書』が発行され、後日に郵送されてきます。
また、散骨時の様子が撮影された写真や画像を送ってもらうこともできます。
同行する場合
海洋散骨に家族が同行する場合は、事前に予約をした日に散骨業者スタッフとともに海へ出て自身で散骨をします。
全体の流れは、
- 出航場所に集合
- 沖に出て散骨式
- 献花・献酒・黙祷
- 散骨した辺りを周回する
- 帰港
- 散骨証明書や記念写真を受け取る
といったものです。
いよいよ故人の遺骨が自然に帰るので、冥福を祈り心を込めて散骨してあげましょう。
①出航場所に集合
まず、散骨の当日になったら、散骨する海域から最寄りの港に集合します。
ここで散骨業者スタッフと待ち合わせをしますので、出航時間に遅れないように注意してください。
また、合同散骨の場合は他の家の人たちもいますから、絶対に遅刻することのないよう時間に余裕をもって家を出てください。
②散骨海域まで移動して散骨式
参加者がみんな揃ったら出航し、散骨海域まで移動します。
散骨海域に到着したら、そこでいよいよ散骨です。
同乗スタッフの指示に従って、遺骨を大海原に帰してあげましょう。
散骨する時には、
- 遺骨をそのまま帰す
- 遺骨を水溶性の骨袋に入れた状態で帰す
- 遺骨を水溶性の特別な入れ物に入れた状態で帰す
という3つの方法があります。
どの方法でも構いませんが、合同散骨の場合は、遺骨をそのまま帰すなら1番風下から行なってくださいね。
風上でやってしまうと、風に舞った遺骨が他の人にかかってしまいますので十分に注意しましょう。
③献花・献酒・黙祷
遺骨を海に帰したら、そこへ献花、献酒をし、最後に故人の冥福を祈って黙祷を捧げます。
黙祷をするときには、もしも仏式で故人のお葬式をしていた場合は、数珠を持参して合掌してあげるとより丁寧ですね。
申し込みのときに写真撮影を依頼しておけば、散骨の様子を撮ってくれて、後で写真をもらうことができます。
④散骨した辺りを周回する
散骨をしたら、すぐに帰港するのではなく、しばらくの間その辺りを周回して遺骨とお別れをします。
海洋散骨をした場合、お墓参りのように『散骨をした現場を再訪する』なんていうことはそう簡単にはできません。
多くの人にとってはそこへ行くのは最初で最後です。
ですから、周回しているときは、自分でその場の写真を撮るなどしてしっかりと記録を残しておきましょう。
⑤帰港
海上でのセレモニーが一通り終わったら、その後は帰港します。
名残惜しみつつ、散骨した海の景色をしっかりと目に焼き付けておきましょう。
出航した港に帰港したら、そのまま現地にて解散をします。
⑥散骨証明書や記念写真を受けとる
散骨をした数日後に、散骨業者から『散骨証明書』が郵送されてきます。
『散骨証明書』というのは、その名のとおり散骨をしたことを証明する文書です。
とはいえ、これは公的なものではなく役所への提出義務もありません。
しかし、『散骨証明書』があることで、その家の後代の人が見て「あぁ、この人は海洋散骨をしたんだな。」ということが分かりますので大切に保管をしておきましょう。
また、申し込みのときに写真撮影を依頼していれば、散骨時の様子を撮った写真やデジタル画像が一緒に送られてきますので、こちらも記念にとっておきましょう。
散骨に同行する際の服装
海洋散骨をするにあたり【当日の服装】で悩む人が多いです。
一般的に遺骨をお墓へ納めるときには供養をしますので、参列者はみんな喪服を着用します。
じゃあ、海洋散骨をするときも同じように喪服を着用をするべきなのでしょうか?
海洋散骨のときには服装に決まりはありませんので、喪服を着用しなくてもいいと思いますよ。
というか、海洋散骨のときには喪服を着用しない方がいいでしょうね。
その理由としては、
- 動きにくい
- 周辺の人に【散骨すること】が分かってしまう
- 海洋散骨は『自由』な葬送形態である
からです。
動きにくい
喪服というのはフォーマルな服装です。
フォーマルな服装って、けっこう動きにくいんですよね。
海洋散骨で使用される船はフェリーのように大きなものではありませんので、波のうねりをモロに受けてしまいます。
そんなときに動きにくい服装をしていると、とっさの行動ができずケガをしてしまうかもしれません。
海洋散骨をするときは、安全面を考えて喪服ではなく【動きやすい服装】にしましょう。
周辺の人に【散骨すること】が分かってしまう
海に遺骨をまくときには、周辺の人たちが不快な思いをしないように十分注意しなくてはいけません。
ですから、できるだけ《今から散骨をしに行く》ということが分かりにくいようにする必要があります。
でも、喪服を着た人が船に乗っていれば、周辺の人に【散骨すること】がすぐに分かってしまいますよね。
海洋散骨のマナーという観点からしても喪服の着用はしない方がいいでしょう。
海洋散骨は『自由』な葬送形態である
喪服を着ることには『故人を偲ぶ』という意味が込められています。
しかし、仏事で喪服を着るのはあくまで【慣習】であり、強制されたり法的な義務があるわけでもないです。
海洋散骨は『自由』な葬送形態であり、だからこそ人気があります。
ですから、服装は自由でいいんです。
もちろん、《喪服を着る自由》というのもあるんですけどね。
とはいえ、合同散骨の場合は、同乗者に喪服を着ている人がいたら「あっ、やっぱり喪服を着た方がよかったのかな?」って心配になる人もいます。
合同散骨をするときには、他の同乗者への配慮というのも必要です。
それに、やはり【動きやすさ】と【周辺の人たちに対するマナー】を考えれば、喪服ではない方がいいでしょうね。
まとめ:海洋散骨は違法ではないが、家族や親戚とよく話し合って決めよう!
『海洋散骨』は、あらゆる生命の母である【海】へ遺骨を帰すこともあり、近年では希望者が急増しています。
また、お墓を持つことで発生する費用を考えて、経済的な負担を少なくするために『海洋散骨』を選ぶ人も多いです。
それに、お墓を持たないことで、お墓の継承者が必要なくなるなど、後の代に迷惑をかけることもなくなります。
『海洋散骨』について法的な問題を心配する人もいますが、現在のところは法的な規制や罰則はありませんので、今後も希望者は増えることでしょう。
しかし、『海洋散骨』はまだ新しい葬送形態であり、遺骨を全部まいてしまうと二度と戻ってきません。
故人の遺志を尊重することは大事なのですが、トラブルを避けるためにも、家族や親戚と十分な話し合いをしてから『海洋散骨』を行うようにしましょう。
\小型クルーザーで家族だけの海洋散骨/