お坊さん歴20年以上の未熟僧(みじゅくそう)と申します。
- お寺(お坊さん)にお葬式を依頼したいけど、具体的にどうすればいいの?
- どこのお寺(お坊さん)とも付き合いがない場合はどうするの?
- 今のうちからお葬式のことをちゃんと考えておきたい。
お葬式をする時には『お坊さん』に来てもらうのが一般的です。
しかし、いざという時に多くの人は『どうやってお坊さんにお葬式を依頼すればいいか』が分かりません。
お坊さんにお葬式を依頼するためには打ち合わせが必要です。
その他にも葬儀社との打ち合わせがありますから、喪主は数日間で多くのことを決めなくてはいけません。
だから、慌てて準備や手配をすると、思わぬミス(不備)があったりします。
そうならないために、最近では事前にいろいろと確認をしておきたいという人が増えています。
人が亡くなることを想定して準備をするのは【不謹慎】だと言う意見もありますが、事前にちゃんと確認し考えておくことは大事です。
喪主のすべきことは本当にたくさんありますが、この記事では、【お坊さんにお葬式を依頼する時の手順】について詳しく紹介しています。
最後まで読んでいただければ、とりあえず【お坊さんへの依頼】に関することはほとんど分かりますので、いざという時に慌てることはなくなりますよ。
まずは、どのお坊さんにお葬式を依頼するかを決める

仏式のお葬式の場合、式を執り行うのはお坊さんですから、まずは【お葬式を依頼するお坊さん】を決めなくてはいけません。
あなたが依頼するお坊さんは、
- 菩提寺のお坊さん
- 葬儀社から紹介されたお坊さん
- 霊園から紹介されたお坊さん
- 自宅から最寄り寺院のお坊さん
- 知り合いのお坊さん
のいずれかに該当するでしょう。
菩提寺のお坊さん
あなたの家のお墓が【お寺の墓地内】にある場合は、あなたにとってそのお寺は『菩提寺(ぼだいじ)』になります。
菩提寺とは要するに、
- あなたの家の『お葬式』や『法事』などを行うべきお寺
のことですね。
ですから、いざという時にあなたがお葬式を依頼すべきは、
『菩提寺のお坊さん』
です。
菩提寺にはあなたの家のお墓があるのですから、お墓参りをした時などに前もって「お葬式のことについて先にいろいろと教えていただきたいのですが・・・」と事前に相談をしておきましょう。
葬儀社から紹介されたお坊さん
お墓をまだ持っていないというあなたは、いざという時は葬儀社からお坊さんを紹介してもらうといいですよ。
葬儀社には必ず『提携しているお寺』があるんです。
もちろん、いろんな宗派のお寺と提携していますから、あなたのご希望の宗派を伝えておけば手配をしてくれますよ。
しかも、葬儀社と提携しているお寺は基本的に【ハズレのお寺】がないんです。
なにしろ【お客様に紹介するお寺】ですからね、ちょっとでも変なことをするお寺なんてすぐに提携解除です。
お坊さんの私が言うのも変ですが、『葬儀社から紹介されたお寺が一番安心できる』と思いますよ。
なので、菩提寺がない場合は、
葬儀社から紹介されたお寺のお坊さんに依頼する
ことを一番最初に検討することをおすすめします。
霊園から紹介されたお坊さん
お寺ではなく『霊園』にお墓があるという場合もあるでしょう。
葬儀社と同じように、霊園にも『提携しているお寺』があるんです。
霊園の場合はどちらかというと、【法事をしてもらうため】にお寺と提携しているのですが、もちろんお葬式の依頼をすることも可能です。
ただ、【葬儀社から紹介されるお寺】に比べると【霊園から紹介されるお寺】の方が信用度は少しだけ落ちます。
お葬式は扱う金額が大きいからでしょうか、霊園よりも葬儀社の方が【お寺に対する審査基準】が圧倒的に厳しいのです。
ただ、葬儀社から紹介されたお寺は審査基準が厳しい分だけ【お布施】が高めです。
だから、「別にお寺なんかどこでもいい」というのであれば、
霊園から紹介されたお寺のお坊さんにお葬式を依頼する
とよいでしょう。
自宅から最寄りの寺院のお坊さん
菩提寺もなく、お墓もない、そして「本当にどこのお寺でも構わない」という人は、
自宅から最寄の寺院のお坊さんに依頼する
というのもアリですね。
本当に何のこだわりもないのなら、自宅から一番近いお寺に依頼しちゃえばいいんです。
しかも、もしもお葬式の後も法事をしようと思っているのなら、お寺が近いに越したことはありません。
一度、そのお寺へ行って相談をしてみるのもいいと思います。
ただ、今までまったくお付き合いがないお寺ですから、そこがどんなお寺でどんなお坊さんがいるのか分かりません。
そして、そのお寺が【檀家以外の人からの依頼】を受けてくれるかどうかも分かりません。
まぁ、私だったら依頼を受けますけどね。
だって、理由はどうであれせっかく自分のお寺に来てくれたんです、それは【仏様が結んでくれたご縁】だと思ってお受けしますよ。
知り合いのお坊さん
あなたの知り合いにお坊さんはいませんか?
もしもいるなら、そのお坊さんの人柄や考え方はもう分かっていますよね?
あなたに菩提寺がなければ、せっかくですから、
知り合いのお坊さんに依頼する
というのもいいんじゃないでしょうか?
あなただって安心して任せられますし、お坊さんの方も正直なところ知り合いの方が気持ちも入ります。
選択肢の一つとして【知り合いのお坊さんに依頼する】というのも考えてみましょう。
お寺(お坊さん)にお葬式を依頼する時の手順

依頼をするお坊さんが決まったら、お寺へ出向くか電話で『お葬式の打ち合わせ』をしなくてはいけません。
お葬式をスムーズに進めるために、お坊さんへ伝えておくことや確認しておくことがありますので、それらをしっかりと打ち合わせしましょう。
葬儀社を決めておく
お葬式をするには、依頼するお坊さんだけではなく、同じように【依頼をする葬儀社】が決まっていないといけません。
あなたは現在、どこかの葬儀社の互助会などに入会していますか?
あるいは、「いざという時はここへお願いをしよう」というような葬儀社がすでに決まっていますか?
まだそのような葬儀社がないという場合は、いざという時に依頼をする【葬儀社】をあらかじめ決めておくことをおすすめします。
お葬式をするとなれば、喪主はたくさんのことを一度に決めなくてはいけないので、ついつい葬儀社から言われるがままに進めてしまいがちです。
それで、結果的に【予算を大きく上回る金額】を支払うハメになるんです。
何でもそうですが、その場で焦って決めてしまうような【場当たり的な決め方】では必ずカモにされてしまいます。
ですから、事前に複数社から見積もりなどをしっかり取り、まずはちゃんと『お葬式費用の相場』を知っておきましょう。
その中から「ここなら良さそうだな」と思う葬儀社を選び出し、見積書や資料などを保管しておいてください。
何事も『備えあれば憂いなし』ということですね。
葬儀社と打ち合わせをし、仮の日程を決める
お坊さんと打ち合わせをする前に、先に葬儀社との打ち合わせをします。
葬儀社との打ち合わせでは、まず『お葬式の日程』を決めます。
ただ、お葬式の日程は、あなたの希望通りに決まるとは限りません。
お葬式の日程を決めるには『火葬場』の空き状況を確認しなくてはいけないからです。
火葬場の空き状況は葬儀社の人が確認してくれますので、あなたの希望の日程を伝え、それに合わせて確認をしてもらいましょう。
もしも、あなたの希望する日に火葬場がいっぱいであれば、他の日に延期しなくてはいけないこともありますのでご了承ください。
火葬場の空き状況を確認してもらったら、とりあえずあなたが希望する日程で【仮の日程】を決めてください。
お寺の都合を聞いて、【正式な日程】と【葬式の形式】を決める
【仮の日程】が決まったら、お寺へ連絡してください。
そして、お坊さんに【仮の日程】でお葬式をしてもらえるかを確認しましょう。
また、このタイミングであなたが希望する【お葬式の形式】を伝えておきましょう。
夜遅くには電話をしない
まず最初にお伝えしますが、お寺へお葬式の依頼をする時は、急いで夜中に連絡する必要なんてありませんよ。
昔は、身内に不幸があれば真夜中であってもすぐにお寺へ連絡をしていましたが、今はそんなことはしません。
お寺としても、夜中に連絡を受けても、喪主家族との打ち合わせや諸々の準備は、結局のところ翌日にならないと何もできないんですよね。
もしも夜中にお亡くなりになったとしても、お寺への連絡は翌日になってからで大丈夫ですから、しばらくは故人のそばにいてあげてください。
希望する日程で依頼を受けてもらえるかを確認する
お葬式の【仮の日程】が決まったら、お寺へ連絡をしてください。
そして、あなたが希望する【仮の日程】でお葬式をしてもらえるかお寺の都合を確認しましょう。
お寺との都合が合えば、【仮の日程】をそのまま【正式な日程】として確定してください。
それを葬儀社へすぐに伝えて火葬場の予約をしてもらってください。
もしもお寺との都合が合わなければ、もう一度あなたとお寺で【仮の日程】を決めて、葬儀社の人にその日程で火葬場の空き状況を確認してもらってください。
日程を決める時のコツは、【仮の日程】として「◯◯日か、あるいは▲▲日」みたいにいくつか候補を作っておくことです。
そうすることで、あなたとお寺のお互いの都合を合わせやすくなります。
どのような形式のお葬式にしたいかを事前に伝える
日程を決める連絡をしたタイミングでもう一つお寺へ伝えることがあります。
それは、『どのような形式のお葬式にしたいか』ということです。
形式というのは、
- お通夜とお葬式を両方をする
- お通夜はせず『一日葬』にする
- 身内だけで『家族葬』にする
といったことです。
形式が違うからといってお葬式のやり方を変えることはありませんが、お坊さんとしては喪主がどんな供養を希望しているのかを知っておきたいんです。
それに、お坊さんの方としても一応は心の準備をしておきたいんですよ。
しかも、じつはそれで『その人が仏事に対してどのように考えているのか』が何となくわかるんですよね。
お寺へ出向き、お葬式の打ち合わせをする
お葬式の日程や形式について連絡をしたら、その後にお寺へ出向いて詳細な打ち合わせをします。
電話で詳細な打ち合わせをすることも可能ですが、お坊さんとの打ち合わせはできる限りお寺へ出向くようにしましょう。
お寺へ出向いて、
- 戒名について話し合う
- お坊さんの送迎が必要かを聞く
- 何人のお坊さんで来るのかを聞く
- 火葬場まで来るのかを確認する
- お布施の確認をする
といった詳細な打ち合わせをしましょう。
戒名について話し合う
お坊さんとの詳細な打ち合わせのメインとなるのは『戒名』に関する話です。
戒名というのは【仏弟子としての名前】であり、仏道に入った人が今後ずっと名乗っていく名前です。
だから、私の場合は戒名について話をする時間が長くなりますね。
お坊さんは、打ち合わせの時にその人の【人柄】や【趣味】や【仕事】などを聞いた上で、なるべくその人を連想しやすいように戒名をつけるんです。
ですから、より良い戒名をつけるには、その人に関することをできるだけ詳細に伝えてあげることが大事です。
ちなみに、戒名には決まった構成があります。
戒名のつけ方を知っていれば、お坊さんへ何を伝えておけばよいかが分かりますよ。
【関連記事】:戒名は自分でつけてもいいの?戒名のつけ方を詳しく説明します。
お坊さんの送迎が必要かどうかを聞いておく
お葬式があると、多くのお坊さんは自分で車を運転して式場に行きます。
しかし、昔は喪主やその家族が【式場までお坊さんを送迎する】ということも多かったんです。
だから、念のため【お坊さんの送迎】が必要かどうかを聞いておきましょう。
まぁ、ほとんどのお坊さんは「自分で運転して行きますから大丈夫ですよ」と言うはず。
送迎というのは、運転者もお坊さんもお互いに気を使うので、正直なところ、お坊さん自身も自分で運転した方が気楽なんですよね。
ただ、高齢のお坊さんの場合は送迎が必要なケースがあります。
お坊さんを見て「う〜ん、もしかすると送迎が必要かな?」と思ったら、念のため送迎を申し出てあげてください。
何人のお坊さんで来るのか聞いておく
お葬式に来るお坊さんは1人だけとは限りません。
お寺に複数のお坊さんがいたら、もしかすると2名とか3名で来るかもしれません。
地域によっては、お葬式の時に【近くのお寺のお坊さんも来て複数人でお経をあげる】というところもあります。
となるとですね、お坊さんが複数いる場合は、式中にお坊さんが座る席の数も増やさなくてはいけないんですよ。
それに、お坊さんに食事の席についてもらおうと思っていたなら、お坊さんの人数分だけの料理を手配しなきゃいけません。
基本的に料理は急に数を増やすということができません。
だから【お坊さんが何人来るのか】ということは必ず聞いておきましょう。
火葬場まで来るのかを確認する
お葬式が終わったら、その後は火葬場へ行きます。
しかし、お坊さんによっては火葬場までは行かないという人もいます。
ですから、事前に【お坊さんが火葬場まで来るのか】を確認しておきましょう。
火葬場では、収骨までの間に喪主が『精進落とし(食事)』や『おしのぎ(軽食)』を振る舞います。
ですから、『精進落とし』や『おしのぎ』の料理の数を決めるにあたり、お坊さんの分も含めて先に人数を確認しなきゃいけないのです。
少し聞きづらいかもしれませんけど、「火葬場には来ていただけるのでしょうか?」と確認をしておきましょう。
お布施の確認をする
多くの人にとって1番気になるのが『お葬式のお布施はいくら納めればいいのか』ということです。
お布施に関しては、ストレートに「お布施はどのくらい納めればいいでしょうか?」と聞いてしまいましょう。
お坊さんによっては、「◯◯万円くらいを納めてもらえますか?」としっかり目安を言う人もいます。
一方で「お布施なんだから『気持ち』で納めてください」というお坊さんもいるんです。
お布施の目安を言うお坊さんと言わないお坊さん、あなたならどちらのお坊さんがいいですか?
私は、お坊さんはお布施の目安を言うべきだと思っています。
あなただってお坊さんから「お布施は『気持ち』でいいんですよ」と言われたら、それはそれで迷ってしまいませんか?
きっと、「お葬式のお布施の相場は・・・」って調べますよね?
喪主はとにかく忙しいんですよ、いちいちお布施の相場を調べてる時間などないのです。
なので、私はハッキリと金額の目安を伝えるんです。
とはいえ、その目安の金額があなたの想定以上に高いことだってあるはず。
そんな時は、お坊さんに『値引き交渉』をしてみてはいかかでしょう?
意外とすんなり応じてくれるかもしれませんよ。
お布施を安くしてもらうための方法は、『お布施を安くしたいなら値引き交渉すべし!値切る方法と注意点を伝授』の記事を読んでみてください。
また、お布施を渡すタイミングを聞いておく方がいいです。
私の場合は、お通夜かお葬式の始まる前にお坊さん用の控室で受け取ることが多いですね。
しかし、他のお坊さんがどう言うかは分かりません。
もしかすると、お坊さんの方から「◯◯の時にお願いできますか?」と指定されるかもしれませんから、念のためお布施を渡すタイミングを確認しておいた方がいいと思います。
【関連記事】:お布施はいつ渡す?お葬式や法事でお布施を渡すタイミングと渡し方。
まとめ:お坊さんにお葬式を依頼する時に必要なことを事前に確認しておきまよう。
お坊さんにお葬式の依頼をする際は、当たり前ですがお坊さんと打ち合わせをしなくてはいけません。
まず、お坊さんに依頼をする前に、葬儀社と相談してお葬式の【仮の日程】を決めます。
次に、お葬式を依頼するお坊さん(お寺)へ連絡して『正式な日程』を決めましょう。
依頼をするお坊さんは、
- 菩提寺のお坊さん
- 葬儀社から紹介されたお坊さん
- 霊園から紹介されたお坊さん
- 自宅から最寄り寺院のお坊さん
- 知り合いのお坊さん
のいずれかになるかと思います。
正式な日程が決定したら、お寺へ出向いて詳しい打ち合わせをします。
紹介されたお坊さんの場合は、電話で打ち合わせをしても大丈夫です。
お坊さんと打ち合わせをする内容は、
- 戒名について
- お坊さんの送迎が必要かどうか
- 当日はお坊さんが何人来るのか
- お坊さんは火葬場まで来るのか
- お布施の金額
です。
お葬式は、前日までの準備はもちろん、お葬式の当日も非常にバタバタします。
特に喪主は数日間で決めなきゃいけないことがたくさんありますので、人によっては頭がパンクしてしまいます。
そうならないためにも、今のうちから【どうやってお坊さんにお葬式を依頼するのか】を確認しておくことをおすすめします。
家族が亡くなることを想定して事前に準備をするのは本当に心苦しいですよね。
しかし、何も準備をしていなかったせいで、いざという時に慌ててしまう人は多いんです。
ツラいことだとは思いますが、しっかりとお葬式を執り行えるように、今からちゃんと確認と準備をしておきましょう。