- 仏壇を勝手に動かしちゃダメなの?
- 仏壇を動かす時の供養にはどんな意味があるの?
- 仏壇を移動する際の注意点を知りたい。
- どんな場所に仏壇を置けばいいんだろう?
仏壇を移動したくても、何もしないで勝手に動かしていいものかどうか迷いますよね?
仏壇なんてあまり動かすものではないですからね。
仏壇を動かすタイミングといえば、
- 引越し
- 家の増改築
- 大規模な部屋の模様替え
- (大掃除)
くらいでしょうか。
じつは、
仏壇を動かす時には、原則として『供養』をする
のです。
とはいえ、あくまでも『原則として』なので、供養をする必要がある場合と必要でない場合があるのです。
また、仏壇を動かすときには、供養だけではなく移動方法や設置場所などにも注意すべきことがあります。
この記事を読めば、
- 仏壇を動かすにあたり、どんな場合に『供養』が必要になるのか
- 仏壇を動かす時に執り行う『供養』の内容
- 仏壇を動かす時に注意すること
- 仏壇を置くのに適した場所
がわかります。
仏壇は、家を守ってくれるご本尊様や大切な人の位牌が祀られている大事なものです。
仏壇の移動についてちゃんと知っていただいてから動かしてもらいたいと思います。
仏壇を動かす時には供養が必要なのか

仏壇はいつも同じ場所に置かれていて、動かすことなんてほとんどありませんよね?
だから、いざ動かそうと思ってもどのようにすればいいのか迷ってしまう人がほとんどです。
仏壇を動かす時には原則として『供養』をしますが、供養が必要になる場合と、必要ではない場合があるんですよ。
では、『どのような場合に供養が必要になるのか』について解説していきます。
ご本尊(ほんぞん)様を動かす場合には供養が必要
仏壇を移動する前に知っておいてほしいことがあります。
それは、
『仏壇を動かすこと』=『ご本尊様を動かすこと』
ということです。
まず、仏壇が【仏壇としての役目】を果たすためには、仏壇の中に『ご本尊様』が安置されていなければいけません。
その理由は、『仏壇の意味と役割とは?仏壇の準備からお参り方法まで丁寧に解説』の記事に書いていますので読んでみてください。
ですから、仏壇を動かすということは、
『ご本尊様を動かすこと』
というふうに考えなきゃダメなんです。
仏事の基本的な考え方として、
【魂入れ】をした仏像を動かす時には必ず供養をする
というものがあります。
【魂入れ】というのは、仏像に仏様のチカラが宿るようにする供養のことで、【開眼(かいげん)供養】あるいは【お性根入れ】と言ったりもします。
ですから、仏壇を移動するときに供養が必要となるのは『ご本尊様がおられる仏壇』を移動する場合です。
だから、もしも【中にご本尊様がいない仏壇】であれば、それはただの【大きな木箱】ですから供養なんてしなくてもいいです。
誰にも文句は言われませんから、いくらでも動かしちゃってOK。
ちなみに、仏壇のご本尊様などの仏像を移動させることを【遷座(せんざ)】といいます。
ぼく達お坊さんは、お堂の改築や新築工事などで仏像を移動させる時には、必ず『遷座式』という儀式を執り行ってから動かしているんです。
なので、これと同じことを仏壇の移動の時にもしなくちゃいけないわけです。
となると、
という疑問が出てきますよね?
本当であれば「はい、そうですよ。」と言いたいのですが、さすがにそこまで厳密に考えなくてもいいです。
少し動かすだけなら供養はしなくてもOKですよ。
仏壇を【屋外】へ出して動かす場合は供養をする
仏壇を動かす際に供養をする必要があるかどうかのもう一つの判断基準があります。
それは、
仏壇を【屋外】へ出すかどうか
ということです。
そして、仏壇を、
【屋外】へ出す場合は供養が必要
です。
仏壇のご本尊様は、その家全体を守ってくださる存在です。
仏壇を屋外へ出すということは、ご本尊様をその家から出すことになりますので、ご本尊様には一時的に【家全体を守る】という役目を停止してもらうわけです。
そして、次の場所で仏壇の設置が終わったら、またその役目を再開してもらうのです。
ですから、仏壇を【屋外】へ出すならちゃんと供養をして、ご本尊様へ「少し動かしますよ。ご迷惑をおかけします。」とお伝えしなきゃいけないんです。
移動の前に仏壇の『閉眼供養』をする
仏壇を【屋外】へ出す場合に供養をするとはいえ、何をすべきなのかイマイチわかりませんよね?
まず、仏壇を動かす前に供養をしなくちゃいけません。
仏壇を動かす前に、お坊さんに依頼をして、
仏壇の『閉眼供養(へいげんくよう)』
をしてもらいましょう。
閉眼供養というのは、
ご本尊様にお願いして、仏様としてのチカラを抜かせてもらう
ことを目的とした供養のことなんです。
閉眼供養は、他にも【魂抜き】とか【お性根抜き】と呼んだりもします。
仏壇を動かす時って、部屋中で物音をたてたり、そこらじゅうがホコリまみれになっていたり、運ぶ時には仏壇を揺らしたりしますよね。
そんな状況だと、ご本尊様に対して失礼です。
だから、仏壇を動かす間、ご本尊様には【一時的にお休みいただく】ということなんですよ。
それで、仏壇を運び出す前の段階で、ご本尊様へ「これから仏壇を動かします。少しの間お休みをなさってください。」とお伝えするために仏壇閉眼供養をするわけです。
移動後は『開眼供養』をする
仏壇閉眼供養を終えて、仏壇が次の場所まで運ばれて、無事に設置されました。
じゃあ、次は何をするのか。
今度は、
仏壇開眼供養(ぶつだんかいげんくよう)
というものを行います。
この供養もお坊さんに依頼をしてください。
仏壇開眼供養というのは、
ご本尊様に、仏様としてのチカラを入れさせてもらう
ことを目的とした供養のことです。
先ほどとは逆で、お休みをしていただいているご本尊様に、再び家全体を守ってもらえるようにお願いをするわけです。
ちなみに、この仏壇開眼供養は、仏壇を初めて購入した時にも必要な供養となります。
この仏壇開眼供養をしないと仏壇の役目を果たしませんので、必ず行うようにしてください。
可能であれば、同じ日に閉眼供養と開眼供養をする
仏壇を動かすタイミングというのは『引越し』のときが多いです。
もしも近距離の引越しなら、できるだけ閉眼供養と開眼供養を同じ日に行うことをおすすめします。
同じ日に行うことで、その一日だけお坊さんに来てもらえばいいので、あなたもお坊さんもラクです。
それに、一日だけなら閉眼供養と開眼供養を合わせたお布施が割安になる可能性があるんですよね。
しかし、日を別にしてしまうと、お坊さんに2回来てもらうことになりますから、しっかりと2回分のお布施を納めなきゃいけません。
ですから、近距離の引越しで仏壇を動かすなら、一日で済ませることを考えた方が賢明ですよ。
逆に、遠方へ引越す場合は、日を別にして、
- 閉眼供養は、現在お付き合いのあるお坊さんに依頼する
- 開眼供養は、引越し先で他のお坊さんに依頼する
というのが現実的かと思います。
飛行機や新幹線を使うくらい遠方へ引越す場合、多くのお坊さんは開眼供養のためだけに現地までは行かないでしょう。
ですから、遠方の引越しの場合は、引越し先で別のお坊さんに開眼供養をしてもらうケースがほとんどなのです。
もちろん、現在お付き合いしているお坊さんが「責任を持って、引越し先まで伺います。」と言った場合は依頼してください。
ただ、その場合は、お布施の他に【お車代】として交通費を渡してあげてくださいね。
仏壇を移動するときにお坊さんへ納める『お布施』の相場は?
仏壇の移動のために供養をする場合、お坊さんへ『お布施』を納めなくてはいけません。
では、その『お布施』は一体いくら納めればいいのでしょう?
原則として、お坊さんへ納める『お布施』に関しては何の決まりもありませんから、あなたの《気持ち=自由》で大丈夫です。
とはいえ、何らかの基準というか【相場】みたいなものを知っておきたいですよね?
仏壇の移動のときに納めるお布施は、
1万円~5万円
くらいですね。
仏壇の移動では【閉眼供養】と【開眼供養】の2つの供養をしますし、屋外への移動もありますから、いくら金額が自由とはいえ《1万円》より少ないのは失礼にあたります。
相場では『1万円~5万円』ですけど、僕としては最低でも《3万円》は納めるのが礼儀だと思いますよ。
【家の中】や【同じ部屋の中】で移動する場合は供養の必要はなし
仏壇の移動は、屋外に出ることなく【家の中】とか【同じ部屋の中】ということだってありますよね。
そうすると、
と心配になる人もいるでしょう。
さきほども言いましたが、【屋外】に出さない場合は供養をしてもらう必要はありません。
ものすごく厳密に言うと、本当であれば仏像を少しでも動かすなら供養をした方がいいのです。
とはいえ、仏壇の中を掃除する時や、仏壇を数センチ動かす時など、その度にいちいち供養をしていたら、言い方は悪いですが『面倒くさい』ですよね?
なので、それくらいの【ちょっとした移動】であれば供養をしなくてかまいませんよ。
ただし、仏壇を動かす前には線香を供えて、手を合わせて一言お詫びをしてから作業にとりかかってくださいね。
仏壇を移動する時の注意点

ここからは、供養の話だけではなく、実際の移動作業に関する注意点についてもお伝えします。
大きい仏壇の場合、移動は【業者】へ依頼する方が無難
もしかして、あなたの家にある仏壇は【昔ながらの大きな仏壇】でしょうか?
大きな仏壇を移動させたい場合は、できるだけ【業者】に移動を依頼した方がいいですよ。
業者というのは、
- 引越し業者
- 仏具店
のように、【日頃から仏壇の移動作業に慣れている専門の業者】のことです。
もちろん、仏壇は男性が2人いれば運ぶことはできますよ。
でも、仏壇って意外と重いんですよ、しかも【作りがしっかりとした高級品】ほど重い。
そして、まぁまぁの大きさなので持ちづらいんですよね。
もしかすると、私たちのようなシロウトが運ぶと、移動の際に壁や柱にぶつけてしまい、仏壇だけでなくいろんな場所に傷を付けてしまうかもしれませんよ。
その点、専門の業者なら仏壇の取り扱いには慣れています。
ご本尊様を安置する大切な仏壇に傷を付けたくないのなら、多少は費用がかかっても専門の業者へ依頼した方が無難です。
ご本尊様・掛軸(仏画)・位牌は自分で移動させる
大きな仏壇の場合、移動に関しては専門の業者へ依頼をした方がいいですが、
- ご本尊様
- 他の仏像や仏画
- 位牌
これらだけは、必ずあなた自身で持ち運びましょう。
これらは、仏壇よりもずっと大事なものですから、そういうものは他人に任せてはいけません。
あなたが責任をもって移動させてください。
移動する時には、傷などを付けてしまわないように、ちゃんと布に包んで持ち運ぶようにしましょうね。
布に包む時には指紋が付着しないように、なるべく素手では触らないように注意しましょう。
動かす前の状態の写真を撮っておく
あなたは仏壇の中に、何が、どこへ、どのように置いてあるか、というのを全部覚えていますか?
もしも覚えていないのなら、仏壇の【動かす前の状態】を必ず写真に撮っておくようにしましょう。
仏壇を動かすときには、まず先に仏壇の中にある仏具などをすべて出してくださいよ。
もしも仏壇が『コンパクトな仏壇』だとしても、中のものを入れたまま動かしてはいけません。
高確率で中の仏具などが動いたり倒れて破損してしまいますので。
だから、取り出したものを移動した先でスムーズに【動かす前の状態】に戻すために写真を撮っておくのです。
仏壇を置く場所

あなたは仏壇をどこに移動させようと考えていますか?
とりあえず【空いている場所】へ置こうと思っていませんか?
仏壇の中には『家全体を守ってくださっているご本尊様』がいるのですから、できるだけ適切な場所に置いてほしいなと思います。
『仏間』が無ければ、どこに置いても良い
昔の日本の多くの家には『仏間(ぶつま)』という仏壇を置くための部屋がありました。
でも、時代は変わって、現在では新築の家に仏間を設ける人はほとんどいなくなりました。
そのため、どこでも置けるようなコンパクトな仏壇が増えています。
あなたの場合はどうでしょうか?
もしも仏間があるのなら、ぜひそこへ置いてください、そのための部屋ですからね。
でも、もしも仏間がない場合は、どこへ置いてもかまいません。
ただ、可能であれば、仏壇の向きを、
ご本尊様が【南】を向くように置く
と良いと思います。
まぁ、これは本当に【可能であれば】という程度です。
そもそも、仏壇を置く向きには特に決まりがありませんので。
ただ、多くのお寺では、本堂のご本尊様が【南】を向くように建てられています。
これは、古来中国の【皇帝は南を向いて座ることを善しとする】という考え方の影響です。
つまり、『身分の高い人は南を向くようにお座りいただく』というわけですね。
これがお寺の場合、一番身分の高いのは『ご本尊様』であり、ご本尊様が南を向いて座るように建てられているんです。
そして、仏壇というものは【お寺の本堂の代わり】をする役割があります。
ですから、お寺の本堂と同じように、仏壇もご本尊様が南を向くように置くことができれば理想的です。
できるだけ家の中全体が見えやすい場所が理想的
仏間もないし、ご本尊様が南を向く場所で、仏壇を置けるスペースなんてないよ、という人だっているはずです。
というか、そういう人の方が多いかもしれませんね。
そのような場合は、できるだけ
ご本尊様が家の中全体を見やすい場所
に置くのがいいですよ。
なぜかというと、何度も言っているように、
ご本尊様に家全体を守っていただいている
からです。
家を守っているご本尊様には常に家の中全体が見えるようにしてあげた方がいいのです。
家の中全体を見てもらうことが無理なのであれば、【家族が集まる場所が見える位置】に置くとよいでしょう。
ご本尊様を見下ろさない・ご本尊様にお尻を向けない場所
家を守ってくださるご本尊様は、当たり前ですが【敬うべき対象】です。
ですから、仏壇の中におられるご本尊様を上から見下ろすことは好ましくありません。
仏壇は基本的に『座って手を合わせる』ものですので、
仏壇の前に座ったときに、自分の目線より上にご本尊様がいる
ような場所に仏壇を置きましょう。
また、目線のことだけではありません。
【敬うべき対象】であるご本尊様には、できるだけお尻を向けないように注意しましょう。
ですから、仏壇を置く場所には、できるだけ、
仏壇の反対側(対面側)に家具などを置かない
ようにしてください。
仏壇の反対側(対面側)に家具があると、その家具を使用するときは仏壇にお尻を向けてしまうことになります。
ですから、逆に言うと【仏壇の反対側(対面側) に何も置かなくてもいい場所】に仏壇を置くことが望ましいとうことですね。
仏壇を置く部屋によっては、仏壇の天板に『空』『天』『雲』のいずれかの文字を記載する
仏壇を置く部屋の上に、
- 他の部屋がある
- 廊下がある
といったケースもありますよね。
それはつまり、仏壇の上を人が移動するような環境ということです。
この場合、
仏壇の天井や天板の部分に『空』『天』『雲』のどれかの文字を記載する
という作法があります。
仏壇を置く部屋の上に他の部屋や廊下があると、ご先祖様の頭の上で人がバタバタと生活することになります。
そこで、仏壇の上に『空』『天』『雲』のどれかの文字を記載することによって、それより上には何も無いものとみなすのです。
これらの文字は、仏壇の天板に直接刻む場合もありますが、多くの場合は『文字を紙に書いて貼る』というのが一般的です。
そして、これをすることによって、ご先祖様に「ここより上には何もありませんよ。」とお伝えしているのです。
もしもあなたがマンションやアパートなどの集合住宅にお住まいで、上にも部屋がある場合は、やはり仏壇の天板に『空』『天』『雲』のどれかの文字を書いた紙を貼るようにしてくださいね。
まとめ:仏壇は屋外へ出す場合のみ供養をすればいい。移動は専門の業者に任せて、家の中全体が見える場所に置くのがベスト。
仏壇なんて普段はあまり動かすものではありません。
ですから、いざ移動が必要となった時にどのようにすればいいのかわからなくなりますよね。
供養に関しては、仏壇を【屋外】へ出して動かす場合だけ、お坊さんに供養をしてもらいましょう。
それ以外の場合は、ご本尊様に「ごめんなさい、少しだけ動かしますよ。」とお詫びをしておいて、それから動かせば大丈夫です。
もしも、あなたの家にある仏壇が大きいものであれば、移動をする時はなるべく『専門の業者』へ依頼した方が安心ですよ。
大きな仏壇でもムチャクチャ重いというわけではないのですが、素人が下手に移動させると、壁や扉にぶつけてしまい、仏壇と家を両方を傷付けてしまいますよ。
動かした仏壇は、仏間がなければ『家の中全体が見える場所』に置くのが理想的です。
あなたの家を守ってくれているのは【ご本尊様】です。
できるだけご本尊様から家の中が見えやすい場所を選ぶように心がけてくださいね。
仏壇のある場所が変わると、あなたの気分も変わることでしょう。
心機一転、新たな気持ちで仏壇に手を合わせて、移動した先でも仏壇のお参りを続けてください。